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桜の妖精 1

桜の花が咲く頃、僕には蘇ってくる思い出がある。

 
何の夢もなくて、何もしないうちに時間だけが過ぎていく日々。
大学生活も半分が過ぎ、このままで良いのだろうか?
漠然とした不安を抱えて生きていたあの頃。

 
ある日、ぶらぶらと町を歩いていた僕の目に飛び込んできた一枚のポスター。 
旅行会社の壁に貼ってあった、地方のポスターの中の写真が、僕を捉えて離さなかった。
桜と共にその写真に写っていた女性が魅力的で、キラキラと輝いているように見えた。
 
 そう、きっと僕は恋をしたんだ。

大学の春休みを利用して、その町を訪れることを決めていた。
ニュースの開花予想に合わせて、二泊三日の旅行の日程を組んだ。

彼女が誰なのかは知らない。
逢える確証もない。
それでも、彼女が存在したあの場所へ、どうしても行ってみたかったんだ。

(イラスト saku)

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