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秋田市文化創造館とスケートボード

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2021年3月の開館以来、秋田市文化創造館の敷地を利用するスケーターたち。多くの公共の場所では禁止(排除)されてきたスケートボードに関わる、当事者や関係者、地域住民とのやり取りか…
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#秋田市文化創造館

17. 試行錯誤をつづける

5月下旬に、1人のスケーターの方とお話しする機会を得た。 曰く、秋田市の郊外で現在開催している子どもを対象としたスケートボードの交流会ではなく、スケーターのコミュニティを可視化していくための取組みを文化創造館でやってみたい、とのこと。秋田市内のスケーターの競技人口は全くもって不明で、「ここでやっていた」という情報を聞きつけ、現地に赴いても出会うことがほとんどない。スケーター同士の縦横のつながりが希薄なことが、他の地域で起こっているようなルールやマナーの啓発や継承を阻害している

16. 行ったり、来たり

3月の大カタルバーを終えて以降、これまで起こした波紋への応答かのように、幾つかの出来事が連続した。 一つ目は、街をテーマにした映画上映や対話の場を設けることができないかとの企画のご相談をいただいたこと。この作品(作品名は伏せておく)は、実は昨年スケートボードのことが話題になり始めた頃から、文化創造館で上映ができないかと何人かのスタッフと話していたもので、上映の提案が持ち込まれるに至ったのは素直に嬉しい。 二つ目は、スケボーの歴史やカルチャー、スケーターの考えについて教えを

15. 波紋をおこす

開館2年目を迎えた秋田市文化創造館のイベントの一つとして、大カタルバーを開催した。まだやるの?と言われながらも、懲りずに「スケボーと秋田のまち」をテーマに。 店主としての想いは、自分が語りたいというよりも、皆が一体どう考えているかを聞きたい。その一点につきる。 大カタルバーの当日は、夜も明けきらないうちに出張先・別府からの大移動。移動中、どうやってバーを回そうか考えようかと思ったが、溜まったメールやチャットの確認をしたり、出張報告をしたためたりするうちに秋田に着いてしまった

14. be respectful

国際教養大学での春休み中の研修プログラムに参加していた高校生が、街なかのフィールドワークで文化創造館のサインを目にし、日英で表記されている内容が異なることに着目し、その理由を問合せてくれたことが最近あった。 サインを用意した当時は、明確にその理由を考えていたかと尋ねられれば、記憶すらあやふやなほど一瞬で日英表記の差異を残したまま掲示することの判断を下していたように思い返す。いざ質問されて、改めて理由を考えてみた。   最初のサインをつくった時に、日本語の文章はかなり推敲を重

13. キックアウトか否か

2月下旬になって、雪はほぼ解けた。 そして、スケーターたちが戻ってきた。 敷地内で滑ることはさほど多くなかったものの、敷地に隣接する歩道と車道で、縦横無尽に滑る様が頻繁に見られるようになった。   2月の末には、閉館後や休館日を狙って敷地内を滑走している様子が、建物に残された痕跡から伺え、屋外に向いた監視カメラの記録をみると、見慣れた風貌の何名かが滑っている様子が確認できた。 デッキの一部が大きく欠けていることもあった。雪が解ける前から、デッキが傷つかないようにするための策を

12. 飼いならすこと、炎上すること

11月のスケーターと市を交えた話し合いを経てから雪が降り始め、スケーターの姿はなくなり、私たちは日々の業務や除雪作業に追われ時間が過ぎていった。その間、アーケードのある路上の一角でスケートボードに興じる若者を夜間に見かけることもあり、「どうか音が住宅街まで響いていませんように」と祈りながら、その脇を通り過ぎるというということが何度かあった。 市役所には引き続き苦情が寄せられていたようで、年が明けてすぐに市からの求めで今後について打合せの場を設けることになった。その結果につい

11. 認識の違いをすり合わせようとする

今年は雪が少ない秋田市。11月下旬になってもまだ初雪の便りはなく、文化創造館の敷地をよく利用していた高校生や大学生のスケーターは「ヨルカツ」の利用は早々に離脱し、付近の道路で滑るようになっていった。 敷地内の滑走は許可が必要というサインを掲示し、「ヨルカツ」という簡易的に無料で屋外を使える枠組みを用意して、スケーターには声掛けをつづけるも苦情はやまない。雪が降り始めたとしても、また3月下旬になれば雪は解けてスケーターが増えることは目に見えている。さて、どうするか。   まずは

10. まちづくり

10月半ばにスケーターらに注意を促すサインを掲示し、それに対していただいた意見を踏まえ、下旬にはサインを次のように更新した。 更新するサインの内容についても、市役所と何往復と調整を重ねた。 また、敷地内のスケートボード等による滑走制限のサインを掲示すると同時に、自由に滑れる枠組みも用意しようと「ヨルカツ」という企画をスタートした。 ヨルカツとは、日が暮れ始める16時から閉館前の20時30分の間、事前に予約してもらえれば屋外の一画を無料で自由に使ってもらう場所として提供す

9. 当事者意識の行方

9月の下旬からはスケーターの数が増え始め、明らかに初心者でボードのコントロールがおぼつかない人や敷地から歩道への飛び出し、ゴミの放置なども目立つようになった。比例して、寄せられる抗議も頻度が増していった。 閉館作業を終えて帰宅する頃になっても住宅街に近い道路で滑っていたり、時に文化創造館のカラーコーンを勝手に持ち出して障害物として使うようなケースも見受けられ、声をかけると喧嘩腰で向かってくるので、やむなく警察に通報する事例も1件発生した。夜遅い時間帯になると、文化創造館の南側

8. すべての人に場を開く

秋田市文化創造館が発行するニューズレター「そうする?」に、テキストを書きました。 秋田市文化創造館のほか、秋田県内外の文化施設等に順次配架されるはず。見かけたら、ぜひ手にとってみてください。

7. コミュニケーションの壁

秋田市文化創造館の開館時間中に敷地内を滑っているスケーターの多くは、高校生や専門学校生、大学生といった10代から20代の若者たちだ。 夏休みの間は日中から、学校がはじまってからは夕方になると一人、また一人と集まってきて、ひたすら滑ったり飛んだりを繰り返している。 そんな彼らに、文化創造館に寄せられる抗議の声を伝え、どうするのが良いのかを考えてもらおうと、これまで以上に積極的に声をかけ始めたのが8月の終わり。日に3回も4回も声を掛けるものだから、鬱陶しがられているだろうなと思

6. 何をしないか

敷地内でスケボーの利用を「禁止」をするという選択肢を失った文化創造館。さて、どうしようか。 館長から示されていた指針は、2つ。 迷惑行為があれば、それは解決すること。 また、スケボーやスケーターに対する偏見を助長しないような働きかけを行うこと。   まずは、迷惑行為について、実態を確認するために夜間の見回りを強化してみることにした。 自主パトロールに協力を申し出てくださる奇特な方もおり、数日間、閉館後もしばらく残って様子をみるようにした。しかし、そういう日に限ってなのか、夜

5. 禁止する

8月に入ってから、スケボーの騒音やスケーターのマナーに関して、文化創造館に抗議の声が再び寄せられはじめるようになった。 市役所や町内会長、年長のスケーターに相談しながら、新たな対策を講じもしたが、抗議の声をあげる方が納得するような落とし所は見出せず、ある夜、いよいよ一時的であれ禁止をして、抜本的な策を考える時間を稼ごうと腹を括った。そして、その「決意表明」とも「敗北宣言」とも言えるような連絡を関係各所に入れた。 実務的に「了解」という反応もあれば、スケボーにはこういった抗

4. フェアであるということとは

6月15日(水)に開催した「スケートボードと文化創造館と秋田のまち」をテーマにしたカタルバー。そこからの流れは、今振り返れば怒涛だった。 年長のスケーターが、「スケートボードのイメージを変えたい」と文化創造館の敷地を使ったイベントの計画をはじめ、今後の資金調達のために助成金の申請に取り掛かった。また、6月15日のカタルバーに参加した方が自分も何かやりたいと新たなカタルバーの企画づくりがはじまり、高校生による短編映像制作のテーマとしてスケボーが取り扱えないかとのご相談もいただ