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10. まちづくり

10月半ばにスケーターらに注意を促すサインを掲示し、それに対していただいた意見を踏まえ、下旬にはサインを次のように更新した。

秋田市文化創造館は、多様な人が集い、さまざま活動が行われる公共施設です。開館以来、多様な活動が共存するためのルールや運用方法を模索しつづけています。ご利用の際は、次のことにご留意ください。

● 利用者の増加に伴い事故の危険が高まっているため、当面の間、敷地内で許可のない自転車やスケートボード等での走行はお控えください。許可手続きのお問い合わせは、総合案内まで。
● 閉館時間(21時)を過ぎての、屋外における音のでる活動はお控えください。
● 敷地内・館内は禁煙です。

更新するサインの内容についても、市役所と何往復と調整を重ねた。

また、敷地内のスケートボード等による滑走制限のサインを掲示すると同時に、自由に滑れる枠組みも用意しようと「ヨルカツ」という企画をスタートした。

ヨルカツとは、日が暮れ始める16時から閉館前の20時30分の間、事前に予約してもらえれば屋外の一画を無料で自由に使ってもらう場所として提供するという企画である。スケーターに場所を開放するのみならず、スケートボード以外の屋外利用を開拓すること、また屋外の利用を通じて街に目を配り、多様な活動やその担い手である若者を見守る大人を増やせないか、という発想に基づいている。文化創造館では、これまでも特定の場所の利用者を掘り起こすために、音をつかった活動に場所を開放する「音の日」、キッチンを無料で開放する「キッチンモニター」といった企画を実施した経験があり、ヨルカツもその流れを組むものとして位置付けた。

ヨルカツをはじめて数日はスケーターの利用申込があったものの、次第にそれも少なくなり、再び道路で滑るようになっていった。
苦情はつづき、文化創造館の奥にある千秋公園の中には新たに「スケートボード禁止」という看板もたてられ、公園を管轄する市の担当者からは「文化創造館で滑っている子たちに、千秋公園内は禁止だと伝えておいてくれませんか」とのお電話もいただいた。

千秋公園に設置されたスケボー禁止の看板

何とも腰が抜ける思いだった。
(大げさな解釈かもしれないが)中心市街地活性化を謳い、エリアに関わる団体や事業者の連携を目的にした多種多様な会議を幾度も繰り返していながらも、エリアを共にマネジメントする意識が希薄なことへのモヤモヤ。自分の管理エリアから排除することで、問題を解決したようにみせたり、誰かに責任を委ねようとする姿勢に対するモヤモヤが溢れてきた。

秋田市文化創造館に関わるようになって、私自身、それまで街は「(当然)あるもの」や「提供されるもの」という認識をもっていたが、街は「つくられるもの」であり「自らが関わってつくっていくもの」であるという認識に変容してきているように思う。まちづくりに関わる人は時に意識が高いように見られたりもするが、関わり方にはグラデーションがあってよく、本質的には誰しもがまちづくりに関わることを放棄できないのではないかとも考えている。
スケートボードに関わるイシューを、文化創造館やその周りの一部の人だけが考えるのではなく、秋田市のまちづくりの一つとしてより多くの人々と一緒に知恵を出し合うことができないものか。そんなことを一人考えたり、文化創造館の同僚と話し合ったり、秋田市に働きかけたりしながら、雪がちらつきだす初冬を迎えた。

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