#115 Central ParkとStrawberry Fieldsからダコタハウス・・・ニューヨーク1人旅  2018年11月10日(土)10日目・・・4

全身が寒さに凍り付き、バスを降りて、とりあえずStarbucksに緊急避難し、身体の震えが止まるのを待った。
しばらく居たのだが、身体の震えは止まったものの、中々温まらなかった。仕方なく店を出て再び歩き出した。歩いて身体を温めよう。

てくてく歩いていると、1階部分が鏡になっている建物の前を通りがかった。そういえば、New Yorkに来て10日、風景を写真に収めることに夢中になり、自分が写った写真が1枚もない。ちゃんとNew Yorkに来た証に、鏡を借りて自撮りした。

私、ちゃんとNew Yorkに来たんだよ。Manhattanにいるんだよ。
相変わらず夢心地で身体の奥はふわふわしていたが、しっかり現実だった。

Uptownルートのバスには乗ることを諦めて、ぽっかりと時間ができたので、Central Parkへ行くことにした。
しばらく歩くと、ユニバーサルミュージックの前を通りがかった。

16:10。段々と夕方になってきた。
暗くなる前に公園内に入りたいと思いながら、さらに5分程歩くと、Central Parkの脇に出だ。

そしてパーク内に入ると、なだらかな岩山が見えた。

情報誌で散々見てきた岩山だ。

よし、Strawberry Fieldsに行こう。Central Parkといえば、Strawberry Fields、そしてダコタハウスだろう。
夕焼けの空の下、広い公園内を、嘘つきナビを頼りにStrawberry Fieldsを目指して歩き始めた。

もう太陽の光は当たらないが、公園内から見える高層ビルの上の方には、
オレンジ色の太陽の光が当たっているのが見え、美しいオレンジの風景にドキドキした。

私は1日の中で夕暮れ時が1番好きだ。太陽が静かに地平線に落ちていく時間は、ホッと落ち着く。同時に自分の中にある夜行性の血が騒ぎだしてワクワクする。その、ちょうど狭間の時間帯で、大好きなひとときだ。
そんな時間に見るオレンジ色に染まった、ロマンティックなビルの美しさに、足が止まり、しばし眺める。
歩けば歩くほど、今まで間接的にしか見たことがなかった風景が、実際に目の前に現れ、本当にここに自分がいることが実感できて、不思議な感覚を味わった。

Central Parkの長いベンチに座る。たったそれだけのことに、どれほど憧れたことか。何度夢に見たことか。しかも1番お気に入りの時間帯に。さらに1番好きな秋に。

しばらくお気に入りの時間に浸って、その幸せをかみしめていた。

けれど、その間にもどんどん時間は過ぎ、段々と薄暗くなってきたため、Strawberry Fieldsへ急ぐ。
近くまでくると石のプレートがありその上には、白いバラが置いてあった。

そしてついにIMAGINEと記された記念碑に辿り着いた。

あったよあった! 本当にあったよ!! 
Beatlesが来日した時、私は1歳前。Beatles世代ではないが、後に洋楽を聴くようになったときには当然遡るし、小学生の時に習っていたエレクトーンの練習曲として、楽曲も知っていた。
実在するんだなぁと思いながら、記念碑に近づいてみた。
この円の中に、世界の何億の人の、様々な想いが詰まっているような気がした。

ここに来た記録が欲しくなり、New Yorkに来て初めて、人に写真を撮って欲しいと頼んだ。頼んだといっても、きちんとお願いできるわけではないので、見知らぬ女性に〝Excuse me〟と声を掛け、こちらを向いてもらったところで自分のiPhoneを差し出しながら、
「写真、OK?」
と、一言日本語で言うのが精一杯。
でもここはCentral Park。New Yorker以外の人もたくさん訪れる場所だ。
きっと旅行者の気持ちは分かってもらえるはずだと、勝手に予想した。
女性は笑顔でOKしてくれた。
IMAGINEと書かれた円の縁に膝をつけしゃがんだ。

初めての場所、初めての人、しかも海外の日本語の通じない人に写真を頼んだことに、緊張していたのだろうか。あまり人見知りをしない私だが、写真に写った顔は真顔だった。しかも想像以上に老け込んで写った自分にがっかりした。画面が暗いモードになっていたことは理由にはならないか。

「Thank you」
とお礼を言って、もう1度記念碑を眺めた。それ以降、記念碑での記念撮影は、ひっきりなしに人が現れ、途切れることはなかった。
Beatlesに並々ならぬ熱烈な想い入れがあるわけではないが、何故だか去りがたく、中々離れることができなかった。
しばらく他のエリアを少し散策した後、何故か再びIMAGINEに戻った。

もう1度、見知らぬ女性に
「Excuse me」
と声を掛け、こちらを向いてもらったところで自分のiPhoneを差し出しながら、
「写真、OK?」
と一言日本語で頼んだ。またしても快く応じてもらえて、嬉しくなって笑顔になると、女性はシャッターを押しながら
「good smail!」
と言って撮ってくれた。さらに私にiPhoneを手渡しながら再び、
「good smail!」
と同じく笑顔を見せてくれた。そして、
「Thank you」
と言うと、
「You're welcome」
と返してくれた。
こんな小さなやり取りがとてつもなく嬉しく、楽しい。
しかもジョンレノンゆかりの地であるCentral Parkで。
そうこうしているうちに、太陽はすっかり沈み、着々と夜空になりつつある。

次は、ダコタハウスを見に行こう。
Strawberry Fieldsから近い出入口から出ると、目の前にドーンと建っていた。

これが、ダコタハウスかぁ。

1982年12月、入口の玄関で、ファンに銃で撃たれたとニュースで知った。
当時、その記事が載ったスポーツ新聞を、ステージのアンコール前の楽屋で見たアーティストが、その場で掲載新聞を破り捨て、胸の前で十字をきったドキュメントを、ものすごく遠い遠い所の出来事として見ていた。

その玄関は私の想像よりはるかに大きく、りっぱな構えだった。
直接は関係ないが、遠い遠い過去の記憶を、今のManhattan・ダコタハウス前で遡っていた。

辺りは暗くなってきた。せっかくなので、夕暮れの街をお散歩することにしよう。

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