#157 身分不相応な異空間・・・ニューヨーク1人旅  2018年11月15日(木)15日目・・・6

まったく予想なく、突然訪れた『Blue Box Café』。
メニューを決めなければいけないのだが、気が動転しており、さらに武者震いも止まらず、メニューが見られない。いや、本当は英語が分からないのだが、いずれにしても、ここはHidemiさんにお任せするしかない。
ブレックファーストだかアフタヌーンティーだかわからないが、Hidemiさんが注文してくれた。
心臓がバクバクと大きく鼓動を打って、上手く言葉が出てこない。緊張して待っていると、ほどなくして料理が運ばれてきた。
少しずつ数種類食べられるようにと、ブレックファーストとアフタヌーンティーを1つずつオーダーしてくれたようだ。

ナイフとフォークを持つ手が微妙に震えて上手く使えない。
目の前でプロのフォトグラファーのように、こだわりの写真を撮り、当たり前のようにドーンと構えて、さも当たり前のように食べているHidemiさんを見ながら、私も食べた。

美味しかった記憶がない。ただ、不味くはなかった……ような気がする。
スイーツは相変わらず濃い甘さだったような記憶が、かすかにある。
セレブになったような、間違った感覚も味わった……ような気がする。

何をどう食べたのか思い出せないほど舞い上がっていた。
大好物の炊き立て白米を、味付けのりで巻いて食べたときほどの感動があったのかなかったのか、思い出せない。
あまりに嬉しくて、あまりにサプライズで、あまりに突然で、あまりに予期せぬことで、あまりに高級すぎて、田んぼの中の超ド田舎で育った私には、オードリーヘップバーンやホリーは、同じ場所にいてもやっぱり遠い遠いはるかに遠い、一生近づけない存在なのだということは、わかった。

けっして不味くはなかった。美味しいと言葉にした記憶がかすかにあるような、ないような。ただ舌が覚えていないほどの、身分不相応な異空間だった。

お皿はティファニーブルー、チョコレートもコーヒーカップもティファニーブルー。ティファニーブルーと白の世界。

そして青い世界につかりながら食事中に窓の外を見ると、なんと、雪がちらついていた。

わーい、雪だ、雪だ。New Yorke初雪だ! 
雪の降る5番街を、TIFFANY&COの窓から見下ろした。
車のライトや街灯が幻想的でロマンティックだった。

食事が終わりHidemiさんから、チップの計算の仕方から、払い方のレクチャーを受ける。計算がややこしくて面倒くさい。

雪は、食事が終わり、店内を見回っている間にもさらに降り続き、私のテンションも上がった。

さっきから奇跡尽くしだ。TIFFANY&CO&Blue Box Café、そしてNew Yorkで雪を体感できるなんて、なんて嬉しいことだろう。
私は雪が、寒さが大好きだし、New Yorkが大好きだし、そのNew Yorkでまだ11月なのに雪だなんて、まるで私がNew Yorkに歓迎されているようで、嬉しいではないか。心の底からNew Yorkありがとうと思った。

食事が終わり、6階のおトイレへ。さすが世界一の宝石店のおトイレ。ピッカピカだ。言われずにつれてこられたら、そこがおトイレだとわからないほどだ。
そして店内を見て回る。ジュエリーだけではなく、グッズや食器、バッグやポーチ、そしてあちこちにオブジェが飾ってあった。うっかり触れて壊してしまったら大変なので、慎重に慎重に見て回った。

階下に行くほどグッズからジュエリー売り場になり、キラッキラだ。
世界一キラッキラなダイヤがあり、確かに眩しかったが、あまりにキラキラ過ぎて、ピンとこなかった。
まあ、私には一生縁はないな。見るだけで充分だ。


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