#72 初めての投函・・・ニューヨーク1人旅  2018年11月5日(月)5日目・・・3

散々探し回っても郵便局は見つからず、泣きそうになってしまった。
困り果てながら、ふと目の前のビルが、やたらと人の出入りが頻繁なことに気付いた。よく見るとそのビルは、さっきベンダーのおじちゃんが指差したビルの反対側の出入口だった。

きっとあそこだっ!
出入り口の近くに行くと、奥に郵便のマーク。はぁ~辿り着いたぁ~。
やっぱりおじちゃんは正確に教えてくれていたのだった。そしてナビも正しかった。ただ、出入口が奥まっていて、外からは見えなかったのだ。

階段を数段上り中に入ると、広い空間が広がっていた。
空港のように荷物検査と金属探知機があり、厳しいセキュリティ。
〝あらまぁ、手紙1通出すだけなのに、こんなに物々しい検査があるのね〟と思いながら直進すると、前方に宝くじ売り場のような窓口が3つあり、
その前に人が1列に並んでいた。どうやらそこでお金を支払うらしい。

どうやって払うのだろう? 
どうやってお手紙を出すのだろう? 
切手は? 値段は? 

列に並びながら他の人の行動を観察した。
窓口は日本の宝くじ売り場と同じ構造で、1枚のガラスに大きな丸、その中に小さな丸がたくさんあって、中の人と直接やり取りでき、下の数㎝だけが空間になっている。手紙やお金はその数㎝でやり取りをする。
小包の場合は渡せないので、窓口の端にある別の扉を開けてその中に入れ、また扉を閉めて窓口で支払う。
手紙やはがきの人は、壁際に並べてある、大きな鉄の箱に入れるようになっていた。

並びながら、支払いを終えた女性を観察してみた。
縦100cm横70cmほどの大きな緑色の鉄の箱には、上に蓋があり、取っ手を持ち上げて開けて手紙を入れ、バタンと蓋を閉める仕組みだ。〝なんと原始的な!〟と思ったが、日本でも揺れる小さな扉付きのポストに入れるので、前に入れるか下に入れるかの違いだ。

やっと私の番だ。窓口のおばちゃんに〝お願いします〟と言いたかったが言葉がわからないので、心の中で頼んだ。
数㎝の空間から手紙を差し入れると、おばちゃんがこちらに向かって何か話している。まったく理解できない。ただ〝where〟が聞き取れたので
「Japan」
と答えた。そのとき宛先の下に〝Japan〟と書き忘れていることに気付いた。書き足したくてペンを貸してほしかったので
「Japan、Japan」
と言いながら、手でペンを持って書くジェスチャーをしたのだが、ブースのおばちゃんには伝わらなかった。〝マズイ、このままでは日本の師匠にお手紙が届かなくなってしまう〟と焦る。仕方なく数㎝の空間から手紙をたぐりよせて引き戻し、襷掛け鞄の中から手持ちのボールペンを引っ張り出してJapanを加筆し、数㎝の空間から手紙を押し込んだ。

おばちゃんからは、押し込んだ手紙と共に切手を返された。値段がわからなかったので、とりあえず10ドル札を渡し、お釣りをもらう。切手は裏がシールになっているので、自分ではがして封筒に貼る。そして列に並びながら観察した女性を真似て、緑色の鉄の箱の蓋を上に引き上げ、封筒を下に落として完了。
〝ちゃんと師匠に届けてね〟
初めての異国の地での投函。たかが投函だが、何だか大仕事をこなしきった満足感で、感動したことは言うまでもない。

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