#78 買えない折り畳み傘・・・ニューヨーク1人旅 2018年11月5日(月)5日目・・・9

Grand Central Terminal から、宿があるAtlantics Avenue - Barclays Center stationに帰り着き、出口だと思って鉄扉を抜けると、またホーム行きのコンコースに出てしまった。
〝違うの!もう電車には乗らないの!外に出たいの!〟と心の中で叫びながら困っていると、察してくれた女性が、中から鉄扉を開けてくれた。
こういうことはよくあるらしく、その女性は、お礼を言う隙もないほどサッサと人混みに消えて行ってしまった。

もう、どの出口から出たらいいのかわからず、人の流れについて行き、なんとか地上に出た。けれど、またまた見覚えのない風景。
いったい、いつになったらサッサと宿に戻れるようになるのやら。
 
Manhattanで降っていた雨は、Brooklynにも繋がっていた。
折り畳み傘を無くしてしまったので、購入しようとTARGETに入った。
広い店内を、傘が売っていそうな売り場に行き、ウロウロと探すが見当たらない。長い傘はあるのに、折り畳み傘はない。
New Yorkerは折り畳み傘を使わないのだろうか。

散々歩き回って探したが見つからないので、店員に聞くしかないのだが、
折り畳み傘の単語がわからない。
ネットで調べると、folding umbrellaと出た。すぐにメモ帳に貼りつける。
そしてここからオレンジ色のジャケットを着た店員探しなのだが、探しても探しても折り畳み傘同様、店員は見つからない。遠くに見えていて走って向かっても、その途中にどこかの商品棚に消えて行ったり、忙しそうにしていたり。

やっと運よくおにいちゃん店員を捕まえることができて、iPhoneのメモ帳にコピペしたfolding umbrellaを見せると、あっちだと言っているように、向こうの方を指差す。けれど、おにいちゃん店員が指差しているコーナーは、さっき散々捜し回った場所だ。別のおにいちゃん店員に聞くと、今度は人差し指を1本を立てた。え?3階?
「UP?」
と聞くと、頷いた。〝ええ~3階はさっき見たらペットフード売り場だったんだけどなぁ……〟疑いながらも言われたとおりに3階へ行き、広いフロアを折り畳み傘を探して散々歩いた。〝こんな所にあるわけないじゃん……〟と思いながら、おねえさん店員にiPhoneのメモ帳を見せる。おねえさん店員はめんどくさそうな顔で、無言で人差し指を下に向けた。〝でしょ?でしょ? 傘売り場はどう考えても2階だよね? あのお兄ちゃん店員嘘ついたな! もしかして私をからかった? おねえさん同様めんどくさかった?〟仕方なく2階へ降りる。

もう1度傘売り場に行くが、折り畳み傘もなければ店員もいない。
もう広い店内を歩き疲れてヨレヨレだ。どうして折り畳み傘1本買うだけなのに、こんなに疲れるほど歩き回らなければならないのか。
でも、今後のことを考えて、絶対に買って帰るんだ。そしてまたウロウロと歩き回って折り畳み傘を探す。けれど探しても探しても見つからなかった。

仕方なく、もういい加減に諦めて帰ろうとエスカレーターに向かった。
その途中、優しそうなおねえさん店員が目の前を横切ろうとしたので、
よし、これで最後と思いつつ〝Where is〟と言いながらiPhoneのメモ帳を見せた。〝ああ〟と理解してくれた表情をした優しいおねえさん店員は、傘売り場へ歩き出した。そして折り畳み傘のコーナーへ着くと一言、
「finish」
チーン。何だ。売り切れじゃないか……。
どうりで探しても探しても無いはずだ。元々品ぞろえが悪いのか、雨で売れたのか、いずれにしても、私がさす折り畳み傘は無かった。〝もういいや。濡れてしまうけれど、走って帰ろう〟疲れもピークだ。
午前中に郵便局で手紙を投函したのが、何日前だったかもわからなくなる。

とても同じ日だとは思えないほど、疲れた。

エスカレーターを下りたところに、ユニクロがあった。そうだ、日本のユニクロには折り畳み傘が売っている。ならばBrooklynのユニクロにも売っているかもしれない。
がっかりするのが嫌で、折り畳み傘があることを疑いながら、とりあえずグルリと店内を1回りしてみたが、見当たらなかった。うん、想定内想定内。大丈夫、もう帰るだけだから。濡れてもすぐシャワー浴びればいいから。

お店を出ようとすると、出入口に立っていた背の高い優しそうなおにいさん店員が、話しかけてきた。「何か手伝えることはないか」と言っているようだった。心の中で、もう無いよと思いながらも、おにいさんが優しそうだったので、往生際悪くiPhoneのメモ帳を見せた。背の高い優しそうなおにいさん店員は、ものすごく残念そうに一言。
「Nothing」
〝いいのいいの、あるとは思っていなかったから。冷やかしに入っただけだから〟
「Thank you」
とお礼を言い、建物の出入口に向かって数歩行ったとき、
「Ms!」
と呼ばれた。振り向くと、あの背の高い優しそうなお兄さん店員だった。
「#$%&‘()&%$#X”&$!!+:;%&’」
と、何か言いながら2階へ上がるエスカレーターを指差し、真上を指した。きっと、2階の傘売り場コーナーに行けばあるよと、教えてくれたのだろう。優しいおにいさん、どうもありがとう。でもね、無いの。finish なの、と心の中で落ち込みながら、明るく笑顔でもう1度
「Thank you」
と返した。

TARGETの店員に散々振り回されて疲れ切っていたところに、ユニクロのおにいさんの優しさが沁みて嬉しかった。折り畳み傘はもう諦めた。明日、宿のオーナー・陽子さんに借りよう。

部屋に戻りシャワーを浴び、昼間買ったハンバーガー用のパンにチキンサラダを挟んで、遅い晩御飯を摂った。
ほとんどの食材を美味しく食べられる私だが、この日の晩御飯は何故か美味しく感じられなかった。

聖地訪問が終わってしまい残念なこと、そこであまりにも素敵なご厚意を受け終わってしまった虚脱感、わかってはいるがこの1人旅に終わりがあることを改めて思ってしまったこと、疲れ切っても折り畳み傘がかえなかったことなど、負の感情に襲われて、少し元気をなくしてしまった。
それなのに満腹になり睡魔に襲われ、ちょっとだけ休憩するつもりでベッドにゴロンと横になった途端、深い眠りについてしまった。
 
★  5日目に行った所  2018年11月5日(月)
・郵便局  ・聖地 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?