『親愛なる同志たちへ』感想

驚いたことにこのテイラー、映画の面白さが1ミリも伝わらないんですけど…

本作は、1962年6月2日のソ連、ノヴォチェルカッスクという街で起きた、ストライキ集団武力鎮圧事件を、熱心な共産主義党員であるリューダの視点から描いたもの。公式サイトの説明がとても詳しいので、関心を持たれた方はそちらも参照を。

リューダは、共産主義の理念を信じ、「強い女」として働く地方幹部である。生活者として党の方針に批判的な思いを持ちつつも、立場上それを表に出さないよう細心の注意を払っている。同居の娘スヴェッカは学生で、同様に共産主義の理念を信じ、工場での賃下げ反対ストライキに共感し母親と対立、軍隊が鎮圧に来ると聞いても、まさか民衆に銃を向けるはずがないと純粋に信じ恐れない。ところが弾圧は起こり、広場が血の海となり、母親は娘を探して駆けずり回る。

この映画は、<共産主義による労働者の幸福>という高い理想・良きものを実現しようとして、あらゆる場面で少しずつ綻びが生じ、うまくいかなくなった末に、破れかぶれか巧妙にか、最悪の対策=武力による鎮圧と隠蔽が行われるさまを見事に描いている。高い理想・良きものを実現するには、構成員がお粗末だったのか。ストライキは賃下げに反発し暴徒化。地方幹部たちは中央政府の指示待ち。派遣された中央役員は怒鳴るばかり。民衆への発砲を拒否する軍幹部に高圧的に命じる中央政府…。隅々まで行き届いたKGBによる隠蔽策にはゾッとさせられる。

アンドレイ・コンチャロフスキー監督は「12人の怒れる男」ニキータ・ミハルコフ監督とご兄弟だとか。(あの映画も昔観たけど面白かった)

とても面白かったので、おすすめです。

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