見出し画像

価値の多寡は、サービス提供における構造に起因する。

MEDDICの回でお伝えした通り、
Painがなければ、課題がないわけですからニーズが生まれず、解決策は不要です。ソリューションで刺す為には、Painが必要不可欠ですね。

今回は、Painとその解決策における関係・構造による価値の生まれ方について深堀りします。
ポイントは、Painはどこかに厳然と存在するものではなく、相手がPainを認識した瞬間に課題(ゴールとのGAP)が生まれるということです。
企業の意思決定は個人の主観だけでは成立しませんが、結局は個人(主観)の積み重ねになっており、結局はどのように課題を認識するか、という点にフォーカスされます。
今回は、Salesに限らない話ですが、価値とは何か、価値の源泉についてがテーマです。どのようなPainに対する価値提供の構造が存在するのでしょうか。

1.目的・やり方がわかっているが、安価にやってくれるから頼みたい。
2.目的はわかっているが、やり方がわからず自分では実現できない為、どこかに頼みたい。
3.目的すらわかっておらず、どこに向かっていいか含めて示唆、解決策も提供してくれるところに頼みたい。

それぞれについて内容を確認します。

1.目的・やり方がわかっているが、安価にやってくれるから頼みたい。

これはつまり時間を買うということで、本質的な価値は相手の時間短縮(費用削減)です。
相手の時間価値が高ければ高いほど、費用換算した数字が上がり提供価値も高くなります。
代行と言われるタイプのサービス全般が該当します。アウトソーシング、BPOについても内容によっては該当するでしょう。
自社でやった場合、経験もノウハウもあるのですが、当然ながらそこにリソースを使うことで一定量の時間や費用をかけることになります。
価値はどこに生まれるかというと、自社・自分でやった場合にかかる費用と、他社に依頼して任せた場合の費用との差分が価値です。
他社に任せた場合に、自社・自分でやった場合よりも高額になる場合もありますが、そこで空いた時間によって、支払った費用以上の価値が出せるのであれば、そこで生まれる価値をプラスすることで価値を見積ることができ、
そういったケースも含めてもいいでしょう。

私たちの日常生活で言えば、家事代行や家電関連一般、各種の移動手段等、多くのケースが当てはまります。
サービスや商品を使わなくても実際のところ、時間と費用をかけることで自分できることはたくさんあります。
自分で洗濯機を使わずに洗い物できますし、電車に乗らなくても徒歩で歩いて移動もできます。
しかし、これらのサービスを活用することによって、自分でやるより費用をかけず、また自分の時間を産み出すことができますので、喜んでこれらのサービスに費用を払って、メリットを得ることができます。

2.目的はわかっているが、やり方がわからず自分では実現できない為、どこかに頼みたい。

やりたいことは明確にあるのですが、自分・自社でそのゴールを実現するためのノウハウ・手段を持ち合わせていない(又は手段を準備するのに相当な時間を要する)為、サービスを利用して、ゴールまでのGAPを埋めるというケースです。
業務を効率化したいが、自動化や効率を高めるシステムを自社で開発する技術を持たない為に、ITベンダーに開発を委託するといったケースがあるでしょう。

身近な例では、専門的サービスの利用や商品の購入があげられます。
例えば、自分では作ることのできない専門的な料理を購入して得たり、エネルギー(ガソリン等)を購入したりが挙げられます。
1との違いは、時間を掛ければ必ず得ることができるとは言い切れず、自分で代替手段を持たない場合がある、又は途方もない時間を割く必要があるということです。
専門的なフランス料理を作る技術を得るには相当の時間をかける必要がありますし、時間をかけてもプロの料理人を上回る可能性はあまりないでしょう。
また、自分で石油を掘って精製してガソリンを作るのには、専用設備の準備や、安全リスクを取ってまで進める必要があります。
そもそも自分で実現できない可能性が高いものを、サービス・商品を購入することによって取得する為、1と比較して、相対的に価値は高くなる可能性が高いです。

3.目的すらわかっておらず、どこに向かっていいか含めて示唆、解決策も提供してくれるところに頼みたい。

2と比較して、ややわかりづらいかもしれません。
Painがなければ、解決策も不要という原則に照らせば、3は成立しないように見えます。
実際のところは当然原則に漏れず、ニーズがなければサービスを購入することもないわけですが、自分・自社で課題として認識していないものが、対話や示唆によって顕在化し、Painに気付かせてくれる存在がいたとしたらどうでしょう。
Painに気が付かず、放置することによって課題が拡大し、将来対応するとなった場合は、より費用をかけなければ課題解決できないという状況に至ることを想像すれば、その価値がお分かりいただけるのではないでしょうか。

身近でわかりやすい事例を言えば、健康診断です。
不調が現れ本人も気が付いている場合であれば、課題を自覚できているのですが、全てがわかりやすくサインとして現れるわけではありませんね。
不調の兆しを早期発見し、即座に対策を講じることによって、リーズナブルな対策が可能で、将来における不調をカバーし、元気な時間を最大化できるとするならば、費用、便益双方のメリットがあることになり、価値は最大化されます。
もちろん、課題発見とソリューションは一体とならないケースもあり、
Painの明確化を促した存在が、ソリューションを提供できるとは限りませんし、彼らのソリューションを採用する必然性はないわけですが、普通に考えれば、Painを顕在化させた存在に頼ろうとする態度は通常の流れでしょう。
Painを正確に理解していなければ、解決策を誤るリスクがあり、
Painが大きければ大きいほど、正しく選択できなかったことによるデメリットが大きくなりますし、Painが複雑な要因によって起きている場合は、別のソリューション提供者に当事者は状況を正しく伝える必要があります。

宗教は課題(人間の仕組みに起因する不安)を煽ってニーズを作り出すケースがありますが、まさにこのケースに該当するでしょう。
正誤は別にして、本人がPainを深く信じ込んだ(確からしさレベルが高い)状況であれば、
何とかその解決策を欲することとなり、目の前に解決してくれる存在がいたならば、すがるような態度で依存する構造になります。
この課題を顕在化させる、煽る部分が教団側から積極的になされすぎ、かつ解決に講じる手段の負荷が巨大なものになれば、
いわゆるカルト、悪徳宗教と呼ばれるのではないでしょうか。
また、他社の存在により信仰が強制されたり、マインドコントロールが手段として用いられ、あたかも自らが信仰しているよう仕向けられたものがカルトと言い換えできるかもしれません。この辺りは実際のところ微妙な問題です。

2と比較して、Painが顕在化した瞬間には競合が存在しないですし、
複雑な構造であれば、解決策を提供できる(と相手が信じる)存在は限られるのですが、提供価値はこの中で最も大きなものとなります。
さらに、2の条件である「やり方がわからず自分では実現できない」が含まれる場合は、相手から喜んで、サービスを欲してくる状況となり、もはや提案・交渉活動すら必要なくなるでしょう。
これらの構造を理解し、一連のプロセスを自ら作り出し相手を巻き込んでいける技術を持ち、ハイレベルに実行できるのは、優れたSalesではないでしょうか。
ちなみに、この状況を作り出すためプロセスをデザインするのが、ブランディングであり、Painを持っているが潜在状況にあるマーケットに向けて、messageを発していく活動がマーケティングです。

これらの構造を理解し、ぜひ価値を最大化した上で、多くの対価を得られるように進めていきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?