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#3 組織の1→3の法則

~大きいことがいいこと,とは限らない,社長の器と幸せの関係~

先日,実務補習(中小企業診断士の試験合格組が資格を受けるための最終実習試験)の教官をやったところ,最後に実習先の社長にたずねられました。「私は会社を大きくした方がいいのでしょうか?」この会社は,飲食店を3店経営する年商1億円の会社です。社長は比較的自由に働いて,お客様や従業員との交流を楽しみつつ,充実した生活を送っています。

経営には「1→3の法則」があると言われます。これは,年商レベルで1億,3億,10億,30億,100億と会社の規模を3倍に成長させる際に,経営システムの変更を余儀なくされる,というものです。

飲食店の経営者がひとりの目が届くのは3店舗程度,年商だと1~3億円程度でしょう。この規模だと,経営者のカリスマ性やリーダーシップで会社は回ります。そこから規模を3倍にしようと思うと,右腕が必要となり「権限委譲」をしなければならなくなります。3→10億では組織の機能分化,10→30億ではITシステムによる経営資源の生産性向上,30→100億ではM&Aや海外展開などの成長戦略の複線化,などが必要となるでしょう。

しかしながら,成長のために経営システムを変革しようとすると,かならず一旦経営効率が下がります。それを乗り越えないと次に進めないところに,「1,3の壁」が存在するのです。

ところで,冒頭の社長は某ビール会社から脱サラして2002年独立,私と経歴も似ているし独立した年も同じ。この社長は着実に3店舗経営しているのに対して,私は独立していきなり2年で5店舗経営するという大風呂敷を拡げてさんざんな目にあい…(あ,私の経歴については,社長にはあまり詳しく話していません)。

ですからこの社長の質問に適切に答えるのはなかなか難しい。私がやれなかった人生を歩んでいる社長なので,本当に社長にとっての幸せは何なのかをとことん酒でも飲んで語り明かさないと,私にはきっと答えることはできないでしょう。

#ビジネス #エッセイ #知者は惑わず #私の仕事

正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html