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#87 思い煩うより行動を:センスメイキング理論

God, grant me the serenity to accept the things I cannot change, the courage to change the things I can, and the wisdom to know the difference.

Reinhold Niebuhr, Lutheran theologian (1892–1971)

私たちに求められる知恵

冒頭の引用は「変えられないものを受け入れる平静と,変えることができるものを変える勇気と,その違いを見分ける知恵を与えたまえ」という有名な祈りの言葉です。まさしく私たちは,思い煩わなくてもよいものに振り回されて,どれだけ幸福感を失っているのでしょうか。極端な例で言えば,地球に小惑星が衝突したらどうしようと考えるのは,天が落ちてきたらどうしようと考えるのと同じで,まさに杞憂に他なりません。

それでは,第3次世界大戦が勃発して核兵器が使われたらどうなるだろうと心配するのはどうでしょうか。昨今の政治情勢を鑑みるにあり得ない話とも言えないし,もしかしたら私たちでそれを阻止する行動ができるかもしれません。コロナ禍のようなパンデミックがまた起こったら,あるいは富士山が300年振りに噴火したら,南海トラフ地震が起きたら…,私たちはどこまで考えればよいのでしょうか。

BCP,事業継続計画の観点からも,今できる限りの準備をすることは大切です。いざという時にどのような行動をとればよいかということを周知徹底しておくことは,東日本大震災で釜石の軌跡として有名になった津波てんでんこなどが,好例として思い起こされます。しかしながら,昔から「一瞬先は闇」という言葉があるように,人間が未来を完璧に予測できたことはありません。ですから,リスクに対して一定程度の対策を打ったら,それ以上は思い悩むことを止めにして,日常に戻るしかないのです。

センスメイキング理論とは

最近ビジネスシーンで注目されている考え方に,センスメイキング理論があります。これは,先の見えない状況において,とにかく何らかの意味づけ・解釈を行い,周囲を納得させて(腹落ち感),周囲を巻き込んで行動することで,現実を創造していく,という考え方です。

センスメイキング理論の構造

センスメイキング理論の例としては,アルプスで遭難したハンガリー小隊の雪中行軍のエピソードが有名です。この小隊は絶望の中で山の道筋を示した1枚の地図を見つけ出し,チーム団結してなんとか無事下山しました。しかし後ほど,その地図はアルプスではなくピレネーのもだった,ということが判明しました。このように,論理的には筋が通っていなくてもメンバーの納得感が現実を創造する,ということが起こり得るということが分かってきました。

現代社会はVUCAの時代と言われ,不確実性に満ちています。そのような中,センスメイキング理論は,経営者はどのように意思決定し行動を起こせばよいのか,という問題に指針を与えてくれます。また,現代のビジネス・マネジメント,特にイノベーションの領域における行動原理として,示唆に富んでいます。このように変化の激しい今日のビジネス環境において,経営者は様々な認知や行動戦略を用いて積極的に意味を創造するダイナミックで継続的かつ反復的なプロセスが求められているのです。

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正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html