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#73 人類は歴史から学べるのか

~No man's knowledge here can go beyond his experience : John Locke~

「愚者は経験に学び賢者は歴史学ぶ」これはプロイセンの鉄血宰相として有名なビスマルクの言葉です。文字通りにとらえれば,愚者は自分の経験した範疇でしか物事を判断できないけれども,賢者は他の事例や過去の史実から類似点を見出し物事の趨勢を予測する,ということでしょうか。ただしビスマルクは,他人の失敗を見て学び自分が失敗しないようにする,という「他山の石」的なことを言いたかっただけ,という説もあります。

一方,冒頭に英文を紹介した「いかなる知識も経験を超えるものではない」は,経験主義者であるジョン・ロックの言葉です。これは,論より証拠,百聞は一見に如かず,実際に自分で経験しないと本当のところは分からない,ということでしょう。誤解を恐れずに簡潔に言うならば,イギリス経験主義はアメリカで「実際に役に立たなければ意味がない」とする,実用主義,実践主義としてのプラグマティズムへと発展することになります。

ところで,歴史は繰り返すとも言うように,人類は痛い目を見て経験しないと学ぶことができないのでしょうか。その時は学んでも思い知っても,喉元過ぎれば…,で何度も同じ過ちを繰り返すものなのでしょうか。一体本当に人類は過去から学ぶことができるのか,そのことを考えると,人間は解脱するまで何度も輪廻から逃れられず生まれ変わるという,というイメージを抱かずにはいられません。

人類は現在,コロナ禍という試練に直面しています。しかし視座を高くしてこの状況を観察すれば,人類は有史以来数多くのパンデミックを経験している事実を認識することができます。さらには,ここ100年でスペイン風邪,香港風邪など,10~40年の周期で世界的なインフルエンザの流行を見てきています。それでは,人類はそこから何を学んできたのでしょうか。

歴史には唯物史観というような何らかの一貫性や意味がある,とする考え方があります。そのような,人類は何らかの目的に向かって進化しているとする,合理主義的,観念論的な考え方は魅力的で,人に生きる意味を与えるものではあります。しかし現実の世界は,無関係なものが何の脈絡もなく発生していて,そこに何らかの意味や法則を見出そうとするのは人間の安易さである,とも言えなくもありません。

出来事はただそこで起きているだけのことであり,世界の法則とか神の摂理とかではない,という事実を直視しなければならないのかもしれません。けれども「自分の選択が現実を作る,すなわち自分の思考が現実化しているのだ」ということを理解すれば,人間はその状況にもっとも相応しい選択をすることができるでしょう。これがまさに「self reliance = 自己信頼」であり,このコロナ禍を生きる知恵なのだと思います。

〔こありん先生チャンネル〕YouTube配信しています@(・●・)@

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正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html