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#15 凡事徹底

~祈りの道は平坦だが長い,悟りの道は剣呑だが短い~

「凡事徹底」もう10年ほどお付き合いさせていただいている企業の社長が,よく口にされる言葉です。お客様に最高の品質の商品を提供するために,原材料の調達から製造加工,商品提供にいたるまで細部に徹底的にこだわる,ということです。先代の急逝によりサラリーマンを辞めて家業を継いだ2代目社長は,「経営に奇手妙手はない,当たり前のことを当たり前に淡々黙々とやるだけ」という経営を30年続け,事業規模を10倍にして今年70周年を迎えました。

私が敬愛していた,もうお亡くなりになったコンサルタントの大先輩が,講演の前に必ずこんなことを言っておられました。「このセミナーを聞いて,それだけで売上が上がると思っている方は,どうぞお帰り下さい。経営はそんな甘いものではない」と。

私のところにも,たまに「即効性のある売上拡大施策を教えて欲しい」というような相談が持ちこまれることがあります。こちらもプロなので効果の出やすい販促策をアドバイスしてそれは奏功するものの,顧客にとっての本質的価値は何なのか,その価値向上のために経営者はどのような努力をしているのか,を見直さない限り,効果は一過性のもので終わってしまいます。

ところで人間,愚直に何かに打ち込んでいると,ふっと素晴らしいアイデアが頭に浮かんでくることがあります。私の経験では受験生時代,1日間考えても分からなかった数学の問題の解法を,寝起きにパッと思いついたこともあります。また今でも明け方に,ふとクライアントの経営課題の解決の方向性を思いつくこともあります。

「答えは現場にある」ということは,きっと,もっとも現場に近い個別具体的な仕事を徹底していると,ひらめきやインスピレーションという抽象度の高い鍵にたどり着くこともある,ということなのではないでしょうか。「祈りの道は平坦だが長い,悟りの道は剣呑だが短い」これは宗教の在り方を表現した言葉ですが,経営には平坦だが長い「凡事徹底」の先に悟りがあるのかもしれません。

#ビジネス #エッセイ #知者は惑わず #経営コンサルタント

正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html