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日記「満開の桜にて」

子供の頃に住んでいた団地の、五階のダイニングの窓から見えた一級河川わきのサイクリング道路の桜並木は、もっともっと濃いピンク色だった気がするし、ならば私がここ数日に見ている桜はあの頃の桜とは別の桜なのだろうかと、はたまた、私の目が、私の眼が、私の眼球が、私の見方が、若しくは視力の問題なのだろうか、私が衰えてしまったのだろうか、私が変わってしまったのだろうか、桜の木に登る子供らの奇声とも言えようあの叫び声が、耳たぶとか耳の奥とかもっと根本的に聴覚とかを痛気持ち良いようにくすぐって、あの子らの目に映る桜はどのくらいの濃さのピンク色なのだろうと、それはきっと12色入のクレヨンの中のピンク色みたいな、私がここ数日に見ている桜はきっと100色入のクレヨンの中のピンク色でもないのだと思われ、そもそもピンク色なのかも定かではなく、少しずつ薄れていく記憶と似て少しずつピンク色が薄くなっていって、だから私は少しずつ桜が怖くなっていって、一般的なソメイヨシノは私が見ている或いは見てきた或いは桜と認識している樹名がソメイヨシノであって、寿命が近づく巨木の桜、正しくはソメイヨシノはその黒々とした枝が怖いのかもしれなくて、ピンク色が薄いの濃いのとかはどうでも良くて、兎に角、緑色の12色入りのクレヨンの中にもある確かな緑色の葉がでてくるのが待ち遠しくて、故に私は桜で賑わう人々の心とか感情とかが怖くて、いや怖いのではなく賑わう人々と反対の心とか感情とかを持つ、ただのひねくれ者なのかもしれないから、明日はこっそり雨降りを私が考案した非常に効果の高い雨乞いなどをしてみて、天気予報なんてあてにはしていないのである。

#日記
#桜
#お花見

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