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easy poem「橙」

欲しいものは
手に入らないものばかり
朝焼けを見るには
早起きをする必要がある
夕焼けを見るには
誰かが教えてくれたらいい

JR武蔵野線は東京23区の外側を
扇状にぐるりと回る橙色で
いくつもの私鉄とJRと繋がり
便利な路線だが
どちらかと言えばマイナー路線だ
JR武蔵野線に乗れば
都心でも田舎でもどこにでも
乗り継いで行ける
だから今でも好きだ
子供の頃
祖父母の家に預けられる時は
母が駅の自販機で
つぶいりオレンジジュースを
特別に買ってくれた
なぜ預けられるのか
わからなかった
プルタブはいつも兄が開けてくれた
橙色の電車とオレンジジュースが
不安と孤独に薄い膜を張ってくれる
祖父母の家の風呂場には
お歳暮で届いたらしき
薄い橙色の固形石鹸があり
泡立ちが良くなかった

欲しいものは
手に入らないものばかり
今日もJR武蔵野線は
安定的に数分遅れている
沈む太陽が空を橙色に染めてゆく
手に入らないものと
ひとしきり物語を進めたら
橙色の窓から待つ光へ帰る
それから
白い液体ボディーソープで身体を洗い
橙色の陰部専用液体ソープで陰部を洗う

#詩
#現代詩
#ポエム
#橙色
#武蔵野線






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