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お母さん、あのね。

五体満足で産んでくれてありがとう。
直接は、なかなか言えない。

同じ方向を向いて座っている時とか、
なにかイベントごとがあった時にしか、言えない。

でも、もっと言えないのは、
きっと、もうすぐ、手帳が届くこと。

それは、「精神通院者」であることを示すもの。

私をタフに育て(ようとし)てくれた母には、
もしかすると、ずっと言えないかもしれない。


私がリワークプログラムに通い始めてから、
約2カ月になる。

リワークプログラムの認知度は、
世間一般的に、そう高くないのではないだろうか。

私もリワークプログラムがどういうものなのか
当初は知らなかった。
復職までのただのステップとして捉えていたし、
今でも面談の度に新たに知ることも多い。

内容に至っては、
自分の通っているところのプログラムしか知らない。

私は産業医に言われるがまま、
そこに通っているだけだ。


初診の日、産業医からの紹介先である病院受付にて、
立板に水の如く発せられた言葉に、
心臓をむんずと掴まれた気がした。

「この用紙が自立支援(精神通院医療)申請用紙です。
これで保険負担1割で診察もリワークも受けられます。
お住まいの市町村の障害福祉課で手続きして下さい。
手帳が発行されるまでに時間がかかりますので、
それまでは控えを提出して下さい。」

障害福祉課?自立支援?手帳?
一体何の話をしているの?

呆気に取られている間にも、言葉は続いた。

「今日手続きしてもらえれば、
今日の分も後から1割負担に出来ます。」

息をしていたかどうか分からない。
それでも、どうにか絞り出した言葉は、
「みなさんこれを申請されるのですか?」だった。

1割と3割の負担では、
生活の困窮度が全く異なることは明らか。
それでも、尚、何かを失う気がした。
お金では買い戻すことの出来ない何かを。


受付の方から怪訝な顔をされた。

でも、その時の私には手続きによって、
何かが変わるのではないか、という不安に比べたら、
質問するという行為は、些末なことだった。


悔しかった、悲しかった、やるせなかった。

引っ越し、夫と猫らと遠く離れ、一人暮らしを選んだ。
主治医と引き剥がされ、新しい主治医からは、
ADHDの薬を勧められた。
(ADHDなのかどうかは、この際どうでもよく、
初診で薬を増やす医者を、私は信用出来なかった。)


その後、追い討ちをかけるように、この説明を受けた。

「市役所と当院だけで取り扱いますので、
会社には情報は渡りません。」とのこと。


違うよ。
気にするべきところは、そこではないと思う。

もう私があなたから聞いて知っているんだよ。
会社なんて関係ないんだよ。



お母さん、あのね。
いろいろあるけど、いろんな世界を見れたよ。
みんな頑張って、自分の症状と闘って、時には逃げて、
良いところも悪いところとも向き合っているよ。

お母さん、あのね。
完璧じゃなくていいんだって思えるようになったんだ。
頑張らなくていい時だってあるし、
見通せないことなんて沢山あるって理解したよ。

お母さん、あのね。
いっぱい酷い言葉を発してごめんなさい。
産んでくれてありがとう。


来るべき、母の日に寄せて。

なんだか一足早いけれど、
いつ伝えられるか分からないから此処に置いておくよ。

とい。

自立支援医療(精神通院医療)は、通院による精神医療を続ける必要がある方の通院医療費の自己負担を軽減するための公費負担医療制度です。
(※厚生労働省下記資料より)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000146932.pdf

本当は自分の言葉で制度を説明したかったけれど、
今は出来そうにないので、ご興味がある方は、
こちらのページを覗いてください。

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