(SM短話)夜の音

縮こまっている。


冷たい床に座る裸の男。
ソファに腰掛けた私は、カイロ代わりの暖かい紅茶の入ったマグカップを口に運んで自身の体を温めていた。
カップからゆらゆらと上る小さな白い雲のような湯気から、男へと焦点を合わせる。


彼は先日、私の指示に従えなかった罰を受けているところだ。
その痛みから逃れるように彼は体を小さく小さく丸めている。
憐れで惨めな姿だが仕方がない。


『ゆき様の命令ならどんなことでも聞きます』


嬉々として自分から宣言したのはいつだっただろう。


彼自身にそれを思い出させるために体のある場所に器具をつけてやった。
代償という程、大袈裟なものでもない。
今日は少し私の機嫌が悪かっただけだ。


郊外にある一室は想像以上に静かで、車が外を走る音さえ聴こえない。
窓の外は、ただ暗い。


互いに何も言葉を発すことなく、もうどのくらいの時間が経っただろう。
男の額からは脂汗が滲んできた。


私が少し動くたびに、彼は体をビクッと震わせ、
器具の先につけた小さな鈴がチリンッと可愛らしい音色で鳴く。


次はどんな仕打ちを受けるのだろうと恐れているのか、それとも労いの声をかけられ器具を外してもらえると期待しているのか。
その様子は少し愉快だった。


チリン
チリン


その音はまるで彼が私に許しを請う声にも聴こえた。

でも、しばらくはこのまま。
この仕置きの時間がとびっきり心地良く、手放したくないのだ。
私と彼の夜は始まったばかり。


今夜の落とし所はまだ決められそうにない。


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