見出し画像

DX時代にどんどんデータを活用する「データレバレッジ経営」とは?

こんにちは、須賀優樹です!

普段は様々な企業のデータ・アナリティクス関連の戦略構築や分析支援をやっています。

本日は、ベイカレントコンサルティング著『データレバレッジ経営』を自身の経験や感想なども交えながら解説していきたいと思います。

似たような言葉として「データドリブン経営」というのも世間では言われるようになってきましたが、「データを活用して経営をよくしていく」という本質は同じです。

いずれにしても、企業としての目的は「データレバレッジ経営をする」ということそのものではなく、

「デジタル技術を活用して企業経営を高度化する」

ということになります。

ではさっそく本題に入っていきたいと思います。

今回はデータ戦略家のユウキが「これだけは知っておきたい!」と思ったポイントを3つに絞って紹介しつつ、最後に「データレバレッジ経営」の作り方をサクっと解説致します!

----------------------------------------

本書のポイントは、以下の3つです。

①データを「価値」に変えることがDXを推進する
②「データレバレッジ」が業績と直結する
③「攻めのIT」を実現する

順に説明していきます。

①データを「価値」に変えることがDXを推進する

これまで、「情報」は「ヒト・モノ・カネ」に次ぐ「第4の経営資源」と呼ばれてきました。

「情報活用」の重要性が叫ばれつつもあくまで「第4」の存在だったわけです。

ところが、近年のビッグデータ、クラウド、機械学習、人工知能といった技術の発展によって、「データ」から得られる情報や知見というのは飛躍的に価値が上がりました。

また、IoT(モノのインターネット)やロボティクスといった「リアルな世界とネットを繋ぐエージェント」が登場してきたことにより、あらゆる産業・企業はデジタル技術を活用して変革を起こすという、「デジタル・トランスフォーメーション」(以下「DX」)を迫られるようになったのです。

しかし、膨大に増え続けるデータが存在する一方で、それらはただ「持っている」というだけでは価値になりません。

データは、データを使う主体(一般的には「人間」を指しますが)にとっての意思決定や行動改善などに役立ち、何かしらの利益をもたらさなければ、「価値がない」どころか「コストとして膨らみ続ける」というものなのです。

その「データ」を「価値」に変える1つの取り組みとして注目を集めているのが「データサイエンス」です。

「データサイエンスとは何か」ということをここでは詳しくは述べませんが、ざっくり言えば、「あるデータに対して数理統計学やプログラミングを活用し、それらを様々なITツールを使いながら分析し、課題解決に役立てる」、というものです。

「データ分析 = データサイエンス」

という訳ではありません。あくまでデータ分析の中の1つの分野がデータサイエンスです。

また、大量のデータ(いわゆる「ビッグデータ」)を扱い分析すること、自体がデータサイエンス、という訳ではありませんが、IT技術の発展や分析理論の高度化によって、「大量のデータでも分析できるようになった」と言えるでしょう。

データを価値に変える上での道具としては「IoT」や「AI」が上げられますが、それらが直接的にDXを推進するというよりも、「データサイエンスがDXのキードライバーである」というのが本書の主張するところです。

したがって、データサイエンスを通じて、

◆これまで既に存在していた業務や製品・サービスを改善する
◆これまでにない業務の在り方や製品・サービスを創り出す

といった「あたらしい価値を生み出すこと(イノベーション)」がDX推進のキモであり、それを実現するのが「データレバレッジ経営」であると言えます。


②「データレバレッジ」が業績と直結する

上記では「データを価値に変えることがDX推進のポイント」と解説致しました。

したがって、「データを価値に変えることができなければ、DXを実現するのは難しくなる」ということでもあります。

「データが価値に変わった」とうことは、企業経営においての課題や目的といったことに対して、「データが役に立った」ということです。

言い方を変えると、「課題や目的の不明確なデータ活用・分析は価値を生み出さない」と言えます。

では、どうすれば企業は「データ」から得られる価値を最大化することができるのでしょうか。

ここで「データレバレッジ」という考え方が登場してきます。

「レバレッジ」とは何なのかを簡単に説明すると「てこの原理」のことです

画像1

「データレバレッジ経営」p28をもとに筆者が作成

上記の図のように、てこの右側には経営課題の改善や目的達成に適切と思われるデータを社内外から調達します。

あくまで、大量にデータをかき集めればよい、という訳ではなく、「目的に沿ったデータ」を持ってくるというのがポイントです。

また、てこの「支点」にあたる部分も非常に大切になります。

上記の図では「データ分析」がてこの「支点」にあたりますが、適切にデータ分析を設計することや、データの加工方法、分析手法、アルゴリズム選定といったことで、「支点」の位置が変わってきます。

また、常にデータが「流れる」ことによって「てこの原理」が働くとされています。

データマネジメント」の考え方においては「データライフサイクル」などと呼ばれたりすることもありますが、データは一度集めて分析したら終わりという訳ではなく、常に新しいデータを収集することや古いデータは思い切って破棄することも必要になってきます。
家の中でも1年前と全く同じものがあるわけではないと思います。新しいものを買ったり使わなくなったものは捨てたりしますね。データも一緒です。

図の一番下にある「データガバナンス」というものは、「組織としてデータを適切に管理・運用する仕組み」のことを指します。

なお、今回取り上げているベイカレントコンサルティング著の「データレバレッジ経営」においては、「データガバナンス」を構成する要素として

①データレイク
②クローラー
③データカタログ
④ETL(データ変換)
⑤データプロパレーション

の具体的な5つの技術として定義していますが、国際データマネジメント協会(DAMA)が提唱する「データマネジメント」の概念における「データガバナンス」では、
◆データクオリティ
◆データアーキテクチャ
◆データセキュリティ
◆メタデータ



など、データガバナンスの領域は10個の概念で構成されているとしてます。
(本稿では割愛させていただきます)

いずれにせよ、データ活用においては「データガバナンス」がしっかりしていなければ、「てこ」もグラグラしてデータから価値を生み出すことが難しいことを示唆しています。

データレバレッジが研ぎ澄まされてくると、意思決定の達成や課題解決といった、目的を達成できる可能性が高まったり、実現できたときの経営インパクトが大きくなっていきます。

「データレバレッジ経営」によれば、企業のデータ活用のレベルは以下のように4段階で分類できるとしています。

1.データレバレッジ経営が進みつつある企業
2.データレバレッジ経営が発展途上にある企業
3.データレバレッジ経営に着手している企業
4.従来の経営を継続している企業

この4パターンの企業群の2016年~2018年の売上高を比較すると、

◆第1パターンの企業群の売上高増加率が最も高い
◆第1パターンの企業群の80%は売上高を向上させており、40%の企業は10%超の売上高増加率を記録している
◆第3パターンの企業群では、売上高を増加させたのは40%


という調査結果を報告しています。

「データレバレッジ経営」そのものの明確な定義や、この調査自体の信頼性がどの程度あるか、といったこともありますので、「データ活用が上手い=売上UP」とは言い切れない部分もありますが、少なくとも経営層が「データ活用」を明確に打ち出し、業界を超えた取り組みを実現することによって、顧客への新たな価値提供や、働き方の変革、企業そのものの価値向上といったことに寄与する可能性がある、と言えるでしょう。

③「攻めのIT」を実現する

「データレバレッジ経営」においては「攻めのIT」が重要であると本書は主張しています。

では、「攻めのIT」とはなんでしょうか。

それは、

「DXを実現するために、ビジネスモデルやオペレーションの再構築に合わせ、既存のシステムを改修・再構築すること」

と述べています。

この1行だけを見て、どういうことか理解ができた方は、「CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)」に向いているかもしれません。

これはどういうことか、というのを簡単に言ってしまえば、

「ビジネスそのものをデジタル化すること」

ということです。

これまでの「IT」(本書では「守りのIT」と述べています)は、

◆会計データを管理したいから「ERP」を導入
◆顧客データを管理したいから「CRM」を導入
◆バックオフィス業務を自動化したいから「RPA」を導入

というように、ビジネスを実施する際に発生するお金の管理や顧客管理などをIT化し、業務を効率化する、というのが目的でした。

つまりITはどちらかと言えば「コスト削減」に対して威力を発揮してきたと言えます。

しかし、企業が存続する大前提は「売上」を伸ばすことです。

経営者や現場が、「コストの削減」ばかりを考えていて、売上を伸ばすことを考えていないのであれば、顧客に対しての新しい価値提供や企業価値の向上といったことは望めません。

実質、「0.5%」程度の経済成長率と言われている近年の日本においては、「売上」を伸ばすということがいかに大変かということが分かると思います。

そうした中で、従来型の「守りのIT」では現状を打破することが難しく、「攻めのIT」との両輪を回して経営していかなければならないのです。

では、「ビジネスそのものをデジタル化」するということはどういうことでしょうか。

例で言えば、
◆自動車の自動運転
◆スーパーやコンビニなどの無人化
◆生産プロセスの自律化
◆通貨の仮想化

といったものです。

これらは、「バックオフィス業務を自動化する」というレベルではなく、顧客に届く製品を創るプロセスや製品そのものがデジタル化する、ということを指しています。

よって、これらを実現するためには、既存の「運用・保守」型の「守りのIT部門」だけではなく、「創造・駆動」型の「攻めのIT部門」が重要になるのです。

これを実現するべく、ここ数年では上記で少し触れた「CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)」を設置し、デジタル技術を活用してビジネス変革をもたらすことを目指す企業が少しずつ増えているようです。

「CDO」は既存のIT知識や経験だけではなく、IoTやAI、ブロックチェーンといった先進テクノロジーに精通している必要がありますし、それをどうやってビジネスに組み込むのかを経営陣や事業部門に提案し、リードしていくという、非常に高度な職務を負います。

現在の日本においては、データ分析を担う人材である「データサイエンティスト」が不足している、と呼ばれ、いくつかの大学などが専門の学部を立ち上げ、人材育成への取り組みが始まりました。

ただ、現実的には、「データサイエンティスト」よりも「CDO」のほうが圧倒的に不足しています。

データサイエンスに関しては、理論がかなり体系化されてきていますので、「このように分析すればこうなる」という再現性があります。

しかし、それをビジネスに組み込むとなると、一気にハードルが上がります。

ITの発展やデータサイエンスの発展に、ビジネスがほとんど追いつけていないというのが現状です。

もはや、日本企業の敵は、国内の企業に留まらず、「GAFA」に代表されるような米国系の巨大IT企業や、「BAT」と言われる中国の企業など、グローバルでの競争が激しさを増してきています。

どの産業においてもDXは待ったなしですが、「攻めのIT」を実現できなければ、データレバレッジ経営もDXも成り立たないと言えるでしょう。

おまけ:データレバレッジ経営の作り方

ここまでお読みいただきありがとうございます!

「データレバレッジ経営」はいかがでしたでしょうか。

「データ活用の重要性」はどこもかしこでも言われていることですが、実現するためには色々とハードルが高いなぁ、と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本書では、おまけとして、「データレバレッジ経営の作り方」のコツをサクっとお伝えしたいと思いますので、ご参考にして頂けたら嬉しいです!
(実際にはサクっとはいきませんが・・・)

◆データレバレッジ経営の作り方

①自社あるいは自分の仕事の課題は何かを徹底的に洗い出す

②洗い出した課題で数値化できそうなものを探す

③ ②で洗い出したものの中で、データがすぐに集まりやすそうなものを探す

④ データが集められたら、そのデータは何の課題を解決できそうかを考えながら分析する

⑤ 分析した結果を同僚や上司に報告してみる。あるいは自分で試す。

⑥ 成果が出たら③に戻って次の課題を解決する。成果が出なかったら、③で集めたデータそのものか、④のプロセスに何か問題がある可能性があるので見直す。

⑦ ①~⑥を繰り返して他の人にも広めていく

かなりざっくりですが、こんな感じです。

ポイントは、

◆課題を明確にすること
◆その課題は数値的なデータで解決可能なのかを見定めること
◆課題を解決可能なデータはすぐに集まるかどうか
◆常に課題解決を意識して分析する
◆分析したことを誰かに伝えてみる
◆取り組みを少しずつ広める

といったところです。

本稿の冒頭で申し上げた通り、「課題解決に貢献しないデータ分析は価値がないどころか、コストになってしまう」ということがとても大切です。

したがって、データレバレッジ経営のためには「データ分析」のスキルも重要ではありますが、それよりも「課題設定が適切なのかどうか」「課題を解決することによって経営に対してどれくらい貢献するのか」ということが重要なのです。

まとめ:データレバレッジ経営

大変長くなりましたが、データレバレッジ経営をまとめたいと思います。

今回お伝えしたのは、

①データを「価値」に変えることがDXを推進する
②「データレバレッジ」が業績と直結する
③「攻めのIT」を実現する

という3つのポイントでした。

①では、データを「価値」に変えるためには「データサイエンス」がカギになると述べました。

②では、「データレバレッジ経営」そのものが企業の売上を伸ばしているとは現時点では言い切れないが、データレバレッジ経営への取り組みを目指すことによって、業界を超えたユースケースや、PoC(「Proof of Concept:概念実証」)が進み、新たなビジネスモデルの構築や価値の高い製品・サービスが生まれる可能性がある、ということを述べました

③では、従来型の「コスト削減」重視のITではなく、ビジネスそのものをデジタル化するような「攻めのIT」が必要だと述べました。そのためには人材の確保・育成が急務であるが、CDOにふさわしい人材を日本で探すことは現時点ではかなり難しい、と述べました。

以上、須賀優樹の「データレバレッジ経営」でした!

ぜひTwitterやnoteで須賀優樹の活動に注目していただければと思います!よろしくお願いいたします!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?