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テムズ川をボートで渡って行った邸宅、 「ハム・ハウス」

1997年に英国に滞在していた中で
すっぽり記憶から抜けていたことがありました。  

わたし、ロンドンを流れるあのテムズ川を
ボートで渡ったことがあったのです。  

(距離的には短かったと思うのですが) 
 
渡英時の経験を
電子書籍を書くために
自分の過去の日記やアルバムなどを調べていると
忘れていたことも、
だいたいすぐに思い出せます。 
 
でも、珍しく、自分で読んでも
「あれ?そうだっけ?」
と思ったことがありました。 
 
ロンドンのリッチモンドには
以前貴族の邸宅だった
歴史的建造物もいくつもあり
みて歩くと楽しいのですが、
ある時、欲張って
「1日で3箇所回ろう」
とちょっと無謀なことを計画したのです。 
 
1箇所目は
「マーブル・ヒル・ハウス」。 
 

マーブルヒルハウス


ジョージ二世の愛人だった
ヘンリエッタのために
18世紀前半に建てられた邸宅で、
比較的こじんまりとした佇まい。 
 
でも、建物から少し離れた木陰には
冷蔵庫があってびっくり!  

マーブルヒルハウスの冷蔵庫

 
冬の間にどこかから氷を切り出して
運んできて、冷蔵していたのだとか。 
 
2箇所目は、
マーブル・ヒル・ハウスのすぐ近くにある
「オルレアンズ・ハウス・ギャラリー」。  

オルレアンズギャラリー

フランス革命のため、フランスから亡命して来た
オルレアン公爵が住んでいた屋敷が、
ギャラリーとして公開されているのです。  

八角系の建物が印象的でした。 
 
そして、三箇所目に行きたかったのが
テムズ川を挟んだところにある、
ナショナル・トラストが
維持管理をしている邸宅、「ハム・ハウス」。 
 
この邸宅、実は駅などから少し離れています。  

すでに2軒のお屋敷を見た後で、
少し疲れていたので、
オルレアンズ・ハウスで 
 
「どうやってハム・ハウスまで
行ったらいいですか?」 
 
と聞いたら、 
 
「テムズ川を船で渡れますよ」 
 
と教えてくれました。  

テムズ川のボート

 
船に乗ると、あっという間に対岸へ。 
 
三箇所目の「ハム・ハウス」、
この日訪ねた邸宅の中では
もっとも印象的でした。 

ハムハウス


ハムというと、食べる方の「ハム」を連想される方も多いかもしれませんが、
地名にちなんでいるそうです。 
 
さて、この建物は元々はジェームズ一世の
ナイト・マーシャル
(王家で宮廷での秩序維持を担当する官吏のようです)
だったトマス・ヴァヴァスールのものでした。 
リッチモンド、ロンドン、ウィンザーにある
三つの王室居城へテムズ川から
水路で移動しやすいこの地を授けられ、
ヴァヴァスールがハム・ハウスを築いたのは
一六一〇年のこと。  

その後、一六二六年、チャールズ一世は、
子供の頃から「ウィッピング・ボーイ」
として仕えていた延臣、
ウィリアム・マーレーにこの邸宅とその地所の貸借権を与えます。 
 
「ウィッピング・ボーイ」とは、
王子やその他の高い身分の子供が
教育を受ける場合などに、
もし王子や身分の高い子供が
いけないことをしたら、
身代わりに罰を受ける子のこと。 
 
とんでもない役割のように思いますが、
王子の学友として共に教育を受けて育った
ウィリアム・マーレーは
大人になり、王子が王になっても
支え続けます。 
 
マーレーはハム・ハウスに
贅沢な装飾を加えたことで、
「自分のスタイルをもつ人物、王の親友、宮廷の重要な一員」
として一目置かれるようになります。 

ハムハウスのステアケース


しかし、チャールズ一世の統治下で
イングランド内戦が始まり、
マーレーはハム・ハウスに家族を残し、
王党派として戦いますが、
王党派は戦争に負けてしまいます。  

チャールズ一世は捕らえられ、
一六四九年に打ち首にされます。 
 
チャールズ一世の王子は
スコットランドでは王位を得たものの、
イングランドでの王位は取り戻せず、
大陸へ逃げることに。
 
クロムウェルが護国卿として就任してからの
五年間は
マーレー家のような王党派にとっては
厳しい時代でした。 
 
ここで強かな立ち回りを見せたのが
ウィリアム・マーレーの長女・エリザベスです。 
 
表面上はクロムウェル側とも
良い関係を保ちつつ、
フランスで亡命中の王子へ
連絡を取り続けました。 
 
そして一六六〇年の王政復古で
チャールズ二世が権力を取り戻した時、
ハム・ハウスはもう一度、
華やかな場所となるのです。 
 
一六七二年、エリザベスは
王・チャールズ二世に近しい廷臣、
ローダーデール公爵と再婚。 
 
公爵夫妻は、世界中から美術品を集め、
やがてはチャールズ二世の妃、
キャサリン・オブ・ブラガンザを
この邸宅にお迎えるという機会を迎えるのです。 
 
親子2代に渡って
豪奢で繊細な内装を施したこの邸宅、
本当に見事でした。 
 
本当はもっと詳しく書きたいところですが
ここには書ききれないので、
いずれ、電子書籍「1997」シリーズで
お読みくださいね。  

それにしても、今回自分の記録を見直すまで
テムズ川をボートで渡るという経験をしたことを
すっかり忘れていました。  

テムズ川

 
やはり、書き残しておくって、大事ですね。 
 
今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
 
*電子書籍
「1997~英国で1年暮らしてみれば~Vol.2」
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「1997」Vol.3、鋭意執筆中です。

ハムハウスの近くの馬


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