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ダーウィンと2人のヴィクトリアン・レディ・トラベラー

19世紀、ヴィクトリア朝(1837-1901)の
英国には
“ヴィクトリアン・レディ・トラベラー“
(Victorian lady traveler)
と呼ばれる女性旅行家たちがいました。
 
しかも、ヨーロッパ近辺にとどまる旅ではなく、
飛行機のない時代に南米やアジアまで旅をし、
道無き道を1人で旅するような女性も
いたのです。
 
その中の2人、
植物画家、マリアンヌ・ノースと
(1830—1890年)
紀行作家、イザベラ・バード
(1831−1904年)
は、一歳違いの同い年。
 
二人には、他にも共通点がありました。
 
男爵令嬢、マリアンヌ・ノースは
26歳でキュー・ガーデンを訪れた時に
大温室「パーム・ガーデン」で
初めて熱帯植物に出会い、強い興味を持ちます。

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両親を亡くした後、
精力的に世界各国に出かけ、
生き生きした姿でそれぞれの地域の
植物を描きます。
 
当時のヴィクトリア朝の一般的な植物画は
正確には書かれていても標本のようで、
一体どんなどころにどんな状態で
成長しているかわからないものでした。
 
でも、彼女の描いた植物画は
現地の風景や動物などとともに描かれていたのです。
 
カラー写真が出現する前のその時代に
色鮮やかに生き生きと描かれた彼女の絵は
植物の専門家まで参考にしました。 

1875-1876年には日本を訪れ
横浜・神戸・京都などを回っており、
日本を描いた作品も残しています。
のちに彼女は自分の作品を
キュー・ガーデンに寄贈し、
敷地内に自ら
「マリアンヌ・ノース・ギャラリー」
を建てました。

キューガーデンの「マリアンヌ・ノース・ギャラリー」では
壁一面に飾られた彼女の絵を楽しむことができます。 

ギャラリー


(ただし、現在は新型コロナウィルスの影響で閉館中です)
 
そして、牧師の娘だったイザベラ・バードは
世界各地を旅してはその体験を
次々にして出版し、その印税をもとに、
また次の旅へと出かけて行きました。 

イザベラ


マリアンヌ・ノースが来日した
数年後の1878年に日本を訪れ、
東京を起点に北海道の平取から関西方面まで
旅行し、詳細な記録を残しています。
 
ちなみに、当時、外国人は
限られたエリア以外への立ち入りは
厳しく制限されていました。
 
このバードの旅が実現し
7ヶ月滞在期間中に
効率的に旅をし、
彼女が会いたい人に会い
取材すべきことを取材し、
当時の日本の姿を詳細に記録できたのは
これが彼女の個人旅行ではなく、
駐日英国全権公使兼総領事のパークスが
深く関わった旅だったからでした。

旅の計画のほか、、
旅行地域や期間を制限しない
パスポートの取得から
関係各所への協力の依頼まで、
パークスは様々な手はずを整えて
サポートしてくれたのです。

特に、北海道のアイヌ民族は文字を持たないため
のちに本格的なアイヌ民族研究が始まる前に
バードが北海道で平取アイヌに会って
書き残した記録は非常に貴重なのです。

そして、マリアンヌ・ノースと
イザベラ・バードに共通するもう一つの点は
2人ともダーウィンと関わりがあり、
ダーウィンのアドバイスや後押しを受けていること。

ダーウィン

「種の起源」で有名なチャールズ・ダーウィンは
(1809—1882年)は英国の自然科学者で、
彼自身も英国海軍の測量船ビーグル号に乗って
南米やオーストラリア・ニュージーランド、
アフリカなどをめぐる旅をしていました。
(1831—1836年)。 

彼はマリアンヌ・ノースの絵を評価し、
その才能を評価したからこそ、
さらなる旅へと彼女を後押しした、
とも言われています。

また、イザベラ・バードは
日本に行くことを決める前に
南米アンデスに行くことをダーウィンに相談し、
当時治安が悪かったアンデスを断念し、
日本行きを決断したといいます。

(他にも理由はいくつかあるのですが)

ダーウィンは手紙魔で、
生涯で2000人と手紙で意見交換したそうですが
同時代に活躍していた女性旅行家二人も
彼のアドバイスや後押しを受けつつ
行動していたと知って
びっくりしました。

ダーウィンの著書「種の起源」や
その他の著書、研究は
世界中のたくさんの研究者に
影響を与えたと思いますが
また違った場面で彼の影響を受けた方も
たくさんいらっしゃるのでしょうね。

それにしても
インターネットもメールもない時代に
当時の人々が必要な情報を
本その他の印刷物で必死に探り、
必要であれば手紙を書いたり
直接会いに行ったりして
コミュニケーションをとっていたこと、
すごいことですよね。 

今回も最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

(マリアンヌ・ノースの写真はWikipediaから、
マリアンヌ・ノース・ギャラリーの写真は
Kew Gardensのホームページ
https://bit.ly/2J0egcd
からお借りしています)

*電子書籍
「1997~英国で1年暮らしてみれば~vol.1」
https://amzn.to/3irzfRg

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続編、鋭意執筆中!

二人のレディ・トラベラーのことも
続編を書くために調べ物をしていて知りました。

二人とも、日本を訪れた時には四十代後半。

その後も各地に旅し、
絵画を描き、本を書いて行きます。 

その行動力に、脱帽です!

カフェで書き物をすることが多いので、いただいたサポートはありがたく美味しいお茶代や資料の書籍代に使わせていただきます。応援していただけると大変嬉しいです。