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世界初の女性映画監督の誕生 「映画はアリスから始まった BE NATURAL」

8月に入ってから気温の変化が大きく、雨の被害などもあり、体もどうにも落ち着きませんね。

前回に続き、ドキュメンタリー映画
「映画はアリスから始まった BE NATURAL」(2018年米国映画、パメラ・B・グリーン監督)
のお話です。

写真機材の会社で秘書をしていた22歳のアリス・ギイは、1895年にリュミエール兄弟の映画を見て記録映画ではなく、映画で物語を取ることに挑戦することに。

アリスの勤務先は写真機材の会社で、当然当時生まれたばかりの映画を撮影する準備などありません。
 
スタジオがわりに写真焼き付け工房のそばの壊れたテラスを使う許可が出て、アリスはここで第1作目の「キャベツ畑の妖精」を撮影します。
 
ちなみに、フランスには
「赤ちゃんはキャベツ畑で生まれる」
と言われているのだそうです。
 
(特に男の子。
女の子はバラの花から生まれてくると言われているとか)
 
背景の絵は近所の扇子絵師に書いてもらい(この方のものかどうかわかりませんが、映画に登場するアリスの遺品には手描きらしい美しい扇子がありました)、舞台装置も間に合わせ。
 
衣装はあちこちで借りたもので、出演者はアリスの友人、登場する赤ちゃんたちも「借り物」。
 
とにかく前例もないので、和気藹々とみんなでアイデアを出しながら映画を作りました。
 
この作品は予想外にヒットし、様々な場面で上映されて評判になり、勤務先も映画を事業化する決定をします。
 
その責任者は23歳のアリス。
 
こうして、アリスは世界初の女性映画監督になったのです。
 
身長155センチほどのアリスはいつもコルセットを身につけて監督として先頭に立って撮影現場で働いていたようで、体力的にもかなりキツかったのでは。
 
それでも精力的に映画作りに打ち込んでいたのですから、映画にかける熱意は半端なものではなかったのでしょう。
 
と言っても、彼女自身も一緒に働くスタッフも、経験なんてありません。
 
映画創世記の映画では男女、若者、ベテランの区別なく、「映画」というものを発見しながら作っていっただとか。
 
コメディ一つでも「転落もの」、「出会いもの」など様々なタイプを次々に作っていきます。
 
また、スタッフや仲間たちと日々様々な手法も編み出していきます。
 
フィルムの逆回し、フェードイン、クローズアップ、彩色などなど。
 
「彩色?」と思われるかもしれませんが、当時の映画は白黒が基本なので、女性たちが手作業でフィルムに色付けをしていたのです。
 
また、音は蓄音機で先に録音しといた音に映像を同期していました。
 
当時は音と映像をシンクロさせるのが非常に大変だったそうです。

アリスが監督した「失礼な質問」という短編映画では歌手が歌を歌っている様子を
撮影したものですが、この映画は彩色も施されていました。
 
テレビもない時代、この映画で初めて歌手が歌う様子を見た方たちもいたかもしれませんし、生まれて初めてライブを見に行ったような感動があったかもしれませんね。
 
実は今回、このドキュメンタリー映画の公開を記念してアリスが監督した短編映画を2日間限定で見ることのできる上映会がありました。

それぞれ10分に満たないものでしたが、1本1本が個性豊かな作品でした。
 
上記の「失礼な質問」以外にもご紹介したい作品があるのですが、長くなりましたので、続きはまた次回に。
 
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 
*今日は8月6日、広島に原爆が投下された日。
 
わたしの住む三鷹市でも投下時間の前に放送が流れ、わたしも自宅で黙祷しました。


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