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早期のリーディング指導が日本の英語教育に必要な理由。

こんにちは。Little Readers Clubのユウキです。英語圏で広く実施されている「ガイデッド・リーディング(Guided Reading)」という絵本を使った英語のリーディング指導法と、なぜ早期のリーディング指導が日本の英語教育に必要なのかについて、私なりの考えをお伝えします。


英語教育にもっとも大切なことは、子どもたちが「英語に興味を持つこと」。

ご存じの通り、外国語活動という形で小学校3年生から小学校での英語指導が始まっています。私の娘も小学生ですが、授業で英語を習っています(最も、娘は英国で育っているので、Do I need to take this class? と常々言っていますが・・・)

日本語話者は英語の習得にどうしても時間がかかりますので(比較的語族の近いドイツ語を話す人と比較して4-5倍の時間がかかるようです)、初等教育から英語がスタートさせるのは、国全体の英語力の底上げのためには必要な措置なのでしょう。

しかし、娘の英語の教科書を見て驚きました。How are you? I'm good, thank you. And you? の定型文からのスタートは、20年ほど前に私が中学校で英語の勉強を始めたときと、さして変わっていない気がするからです。
子どもたちの発達度に応じた展開になっており(色を塗ったり、お友だちと会話しようというようなアクティビティが入っている)、子どもたちが楽しめる内容にしようという意図は感じられます。しかし、私にはどうにも英語「を」教えるという意識が根底にあって、この意識が教える側の内容を限定している気がするのです。教える側の内容が限定されてしまえば、子どもたちの興味の幅がそこに限定されてしまいます。

(文部科学省の小学校外国語活動教材)

絵本を用いた英語の指導で豊かな思考力を身に付ける

私はガイデッド・リーディングというリーディングの指導方法とフォニックスを掛け合わせたプログラムを、日本の初等教育(保育園・幼稚園の年長さんから小学校低学年くらいまで)に導入する活動をしています。ガイデッド・リーディングとは、子どもたちが一人で英語が読めるようになるために、リーディング・スキルを丁寧に教えていく指導法です。
読解力のレベルに合わせて、最大でも8名程度に子どもたちをグルーピングし、そのグループの子どもたちの読解力に合わせて選んだ本を使い、教師がガイド役となって読解を進めていきます。

日本ではまだなじみがないですが、リーパー・すみ子先生がガイデッド・リーディングに関する著書を出版されています。
ガイデッド・リーディングの手法に関してご興味のある方、もしくは絵本を用いたおうち英語を実践されている方、英語教育に携わっておられる方など、とても参考になりますので是非手に取って頂きたいです。

英語を話せない・書けない・読めない移民の子どもたちに、どうやって英語を教えるのか。アメリカの小学校で、長年、教師としてその問題と向き合ってきた著者が、日本の子どもたちのために書き下ろした英語習得法。

──メキシコ移民であふれるアメリカ、ニュー・メキシコ州。普段はスペイン語を使っている移民の子どもたちは、なかなか英語に馴染むことができない。そんな子どもたちを、英語で考え、英語で自分の意見を言えるような大人に育てるため、アメリカでは多くの試行錯誤が重ねられている。

そのようなアメリカで成功を収める、英語名作絵本を使った英語習得法「ガイデッド・リーディング」。本書は、その指導法を実際の絵本を引きつつ具体的に紹介。子どもに英語を教えるすべての人にとっての必読書です。

リーパー先生は、「文字が読めること」と「本が読めること」は全く違うと書いておられます。ガイデッド・リーディングでは、市販の英語絵本を用います。教科書の定型文ではない、生きた英語を先生と子どもたちが一緒に読み解いていくことで、総合的な読解力を身に付ける指導をしていきます。著者が絵本を通じて読者に伝えようとしている価値観や考えに触れます。

毎回の英語の需要がリーディングの指導になる必要はありません。しかし、月に1回でも絵本を用いた授業があれば、「英語ができれば世界が広がる」「世界が広がることは楽しい!」と子どもたちに思ってもらえるのではないか思っています。そしてこの点が、英語教育の原点であるべきというのが私の考えです。

(Yo! Yes! という黒人と白人の子どもの友情を描いた絵本。
指導にあたっては、英語の内容はもちろんのこと、イラストレーションから読み取れる二人の関係性を子どもたちに質問しながら読み解きます。また、アメリカにおける黒人の歴史なども簡単に説明し、子どもたちの理解を促進します)

なぜ日本の教育に適しているのか?

加えて、私は以下の3点から、ガイデッド・リーディングは日本の教育に適していると思っています。

インプットの重要性
日本の英語の初等教育では、アウトプット(英会話)に焦点が当たりがちですが、インプット(リーディング、リスニング)なくしてアウトプットが出ることはありません。
年中さんくらいの年齢までは、英語を使用した歌・ダンス、リトミックなどで英語に触れる環境があれば十分ですが、年長さんより上の年齢になってくれば、確実なアウトプットのためのインプットが必要となります。

思考力の育成
ガイデッド・リーディングは単なる読み聞かせにとどまりません。内容について考え、批判的思考力や創造力を養います。また、最大8人程度の子どもたちが先生と共に絵本を読み、その内容について議論することで、自分の考えを表明することの大切さや難しさ、他の意見を聞いて自分の考えをより豊かにしていくことや、他者の意見を尊重することを学びます。

指導のしやすさ
加えて、私が良いなと思っているのはこの点なのですが、英語絵本は使用される単語自体が比較的簡易なので、ガイデッド・リーディングは指導者に高度な英語スキルは求めません。これにより、多くの先生や、英語力に自信のない保護者の方でも、この手法を取り入れやすくなります。

英会話などのアウトプットを学ぶのであれば、ネイティブ・スピーカーの先生の方が良いのかもしれません。しかし、リーディングを指導するのであれば、教える側が何の教材を用いて、何の力を子どもたちに身に付けさせたいと思っているのか、の方が重要です。この点から、正直、指導力のないネイティブ・スピーカーにリーディングを教わるよりも、指導力のある日本人の先生に教わった方が絶対にいいと思っています。

多読との違い

子どもへの英語教育を行う際に、「多読」という言葉をよく聞きます。
私が推進しているガイデッド・リーディングは「精読」です。1冊を時間をかけてゆっくり、何回も読むことで、一人で読める力を養うものです。一方、多読は質より量にフォーカスする読み方で、読むスピードや語彙力の向上を図るものです。
それぞれ長所と短所があるため、学習者の目的や段階に応じて適切に組み合わせる必要があります。

多読のメリット
1. 英語で意味をとる力が向上する
2. 読解スピードが上がる
3. 語彙力が自然に増える

多読のデメリット
1. 文法の細かい理解が不十分になる可能性がある
2. 初期段階では適切な教材選びが難しい
3. 短期的な効果が見えにくい

精読のメリット
1. 文法構造を深く理解できる
2. 語彙の正確な用法を学べる
3.文章の論理構成を分析的に学べる
4. 高度な内容の文章も正確に理解できる

精読のデメリット
1. 読解スピードが上がりにくい
2. 大量の英文に触れる機会が少ない
3. 語彙力が限定的になる可能性がある

おわりに

ガイデッド・リーディングは、絵本を使った英語のリーディング指導法で、英語圏で広く実施されています。この方法は、インプットの重要性、思考力の育成、指導のしやすさという点で日本の英語教育に必要であり、また適していると思っています。

この手法を広めていき、英語に興味を持つ子供たちに、もっと英語を好きになってもらって、自分の世界を広げていってもらいたいと切に思っています。

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