運がいいと思う人と、運が悪いと思う人の違いは?
「はぁって言うゲーム」開発者の解答
人気を博しているアナログゲーム、「はぁって言うゲーム」を生み出したのは、伝説の落ちゲー「ぷよぷよ」を生み出したクリエーター、米光一成さんだ。
天才的発想をし続ける、米光さんの頭の中を知るコラム。
名作ゲームが生み出される過程には、現代にも応用できるビジネスヒントが隠されている!
「運がいい人」の秘密の法則と「ぷよぷよ」の誕生
落ちものパズルゲーム「ど~みのす」は、開発中止になろうとしていた。
「ど~みのす」は、サイコロが落下してきて、それをつなげる落ちゲーだった。
「テトリス」に触発されてはじまった企画で、3人ぐらいで進めていたプロジェクトだ。
これがどうにも面白くならないらしい。
開発中止にすべきかどうかの会議が、会社近くの喫茶店で開かれることになった。
繊細な内容になりそうなので会社で会議しにくかったらしい。
ぼくは「ど~みのす」の開発にノータッチだったし、どういう状況かも知らなかった。
ただ「喫茶店に行きたい!」と思って「会議に参加していいですか」とねじ込んでもらった。
ゲームセンターにはよく行っていたが、喫茶店にはあまり行ったことがなくて憧れだったのだ。
会議は迷走した。
開発中止にするのはもったいない。
こうしたらいいのではないかという新しいアイデアは出るが、それを実現できるのか、そしてそれは面白いのか、まったく検討がつかない。
そもそも、予定していた開発期間はオーバーしている。
デザイナーは次の仕事に移っている。プログラマーも次の作品に取り掛からなければならないタイミングだ。
新たに戦力を投入する余力もない。
なんとか、パッと、魔法の杖のひとふりで解決できないものか。
もちろん、そんな魔法の杖は、だれも持ち合わせていない。
会議は行き詰まった。
そもそもプロジェクトが行き詰まっているのだ。
開発中止にすべきなのだろうと誰もが思っていたらしい。
そのことに、ぼくだけ気づいてなかった。
そもそも、「喫茶店に行きたい」と思って、会議に参加していたので、あまり発言もしていなかった。
ウインナーコーヒーというものを初めて注文して、「ウインナーが入ってるわけじゃないんだ!」と心の中で驚き、あまり楽しい雰囲気じゃない会議に「もぐりこんで失敗したなー」と思いながら、コーヒーに浮かんでいるホイップクリームをちみちみと突いていた。
その時、誰かが言った。
「米光くんが、引き継いでやってみたら?」
行き詰まった会議に飽きていたのか、みんな、それがいいという雰囲気になった。場がぱっと明るくなった。
ぼくは、よくわかってないまま「はい。やりますよ!」と返事をしていた。
「テトリス」「コラムス」などの落ちゲーが大好きだし、そのころ「KLAX」にハマっていて、落ちものパズルゲームの新しい可能性にも注目していたから、どうにかなるだろうと考えたのだ。
「根拠のない自信」と「安請け合い」でチャンスを掴む
そして、「安請け合い」した最大の理由は、「根拠のない自信」。
「ようやく俺に任せてくれる気になったのか」ぐらいの思い違いをして、「がんばるぞ」と燃えたのだ。
「ひとまず一番の若僧に押し付けて、会議を終わらせよう」ってことだとは思いもしなかった。
この「根拠のない自信」と「安請け合い」で、ぼくはいままでも何度か失敗している。
でも、それと同じぐらい「根拠のない自信」と「安請け合い」でチャンスを掴んでもいる。
ウインナーコーヒーを飲みながら、状況をよく分からないまま「はい、やります」と安請け合いしたこのプロジェクトが「ぷよぷよ」になって大ヒットするとは、この時のぼくは予想すらしてない。
『運のいい人の法則』(角川文庫)という大ベストセラーの著者、リチャード・ワイズマン博士は、テレビ番組で、運のいい人と運の悪い人がいるのは何故なのか調べる企画をスタートする。
運がいいと思う人と運が悪いと思う人を募集して、宝くじの当選番号を予想してもらう。
運がいい人は当選番号を当てられるのか? 700人に、宝くじの予想番号とアンケートに答えてもらった。
結果は、運のいい人も運の悪い人も、当選数は同じだった。予知能力などなかった。
だが、このときのアンケートで際立った違いが見つかる。“運のいい人は運の悪い人の二倍以上、当せんする自信があると答えていた”のだ。
「運がいい人」は自信を持っている。
自信がある人は臆せずチャレンジする。
「運がいい人」はチャレンジする回数が多い。
当選確率が同じなら、アクションした数が多い人が当選する可能性が上がる。それが「運がいい人」の秘密の法則だ。
だから、若い頃の「根拠のない自信」と「安請け合い」は大切だ(と、この年になって思う)。
何度も何度も打席に立たなければ、ヒットもホームランもないのだ。
米光一成/Kazunari Yonemitsu
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