第171回 「コアファン」と「VIP」は、それぞれ求めているものが全く違う! それを理解しないと「VIP戦略」は失敗に終わる!
『夢と金』から広まった「VIP戦略」だが、誤って理解している人が多すぎる!
西野亮廣の特別授業!――VIP席として「最前列」を用意している人、それ大間違いです!
今日は【お前のVIP対応は間違ってるぞ!】です。
VIPはコアファンでは無い
2023年の春に『夢と金』という本を出させていただきまして、ありがたいことに楽天とオリコンの両方でヒジネス書年間ランキング1位を獲得するという売れっ子作家をやらせていただきました。
まだ読んでいない方がいらっしゃったら、絶対に読んでください。
大袈裟に言ってるわけではなくて、本当に、日本の教科書に載せなきゃいけないレベルのことを書いています。
『夢と金』をキッカケに一気に広まった文化でいうと、「VIP戦略」だと思うのですが、それこそ『夢と金』を出版する前、プペル歌舞伎で「VIP席」を設けた時に「銭ゲバだ~」と騒いでいた連中も、今はこぞって自身のイベントに「VIP席」を設けていたりするのですが、上辺だけ真似をしてしまっているから、西野調べでは世のVIP戦略の8割は、ものの見事に空回っています。
というわけで今日は「【教えて!西野先生!】VIPの対応って、どうすりゃいいの?」をお届けしたいと思います。
まず、イベントの「VIP席」の作り方から御説明させていただきますと、これは『夢と金』にも書いたのですが、多くのイベント主催者は「VIP席」を客席の最前列に構えるのですが、これは間違いです。
間違っちゃいけないのは、「VIPはコアファンでは無い」ということ。
コアファンというのは、「一秒でも長く、1ミリでも近くで推しメンの姿を見たい人」のことです。
当然、そのコアファンに用意する席は最前列が望ましくて、ただその席の名前は「VIP席」ではなくて「SS席」です。
VIPというのは、どういう人かというと「応援はしているけど、熱狂はしていない人」で、中には「自分の次の仕事に繋げることを目的としている人」もいます。
「今後ともご贔屓に」という感じで、「お付き合い」で来られる方や、あるいは、VIP同士の横の繋がりを作りに来られる方(つまりイベント会場を社交場として使われる方)もいらっしゃいます。
家族で観に来られる上場企業の社長さんもいらっしゃるでしょう。
こういった方々は、一緒に来られた方とのコミュニケーションに重きを置いていたり、あとは、忙しい方々ですから仕事で途中抜けしなきゃいけなかったりします。
となってくると、身動きをとることができない(ステージを観ること以外何もできない)最前列の席というのは、こういった方々にとっては窮屈で仕方ないんです。
なので、スタジアムでも何でもVIP席というのは、選手から一番近いバックネット裏じゃなくて、選手から最も遠い客席の一番後ろの個室です。
試合の様子はモニターで観たりなんかして、お付き合いのある選手に、「スタジアムまで応援に行ったよ」という既成事実を作りにいっています。
コアファンとVIPは、それぞれ求めているものが全然違うんですね。
去年『VIP戦略』というものがバーっと広まった時に、キチンと本を読まずに上辺だけ真似たとある劇団が、客席の最前列に王様の椅子みたいなのをつくって、そこを「VIP席」としたのですが、公開処刑もいいところです。
このへんは気をつけてください。
基本姿勢は「あなたナイズ」
僕はよく「VIP向けのサービスの基本姿勢は『あなたナイズ』」と言っているのですが、VIP向けサービスは、すでにあるサービスにVIPを落とし込むのではなく、VIP一人一人に向けて一つずつサービスを作ることが大切です。
「作った商品を買っていただくのではなくて、買っていただけることが決定している商品を作る」という感じです。
そんな中、先日、我々CHIMNEY TOWNはファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』のVIP席を購入してくださった御客様一人一人に「お手紙」を贈らせていただきました。
チケットではなく、「VIP席を購入してくださったあなたのおかげで、今日の挑戦があります」という感謝の気持ちを綴った、ただのお手紙です。
もちろんスタッフには、公演当日に、誤ってこのお手紙をチケットだと思って持って来られたVIPのお客様に対して「チケットがないと入れません」など言わず、「西野から聞いておりますので」とキチンとお席にご案内するように伝えています。
#あなたナイズです
ちなみに、この「お手紙」ですが、VIPチケットの購入ページに「特典でお手紙をお届けします」とは書いてないんです。
CHIMNEY TOWNからサプライズでお贈りさせていただいたのですが、VIPサービスのコアは多分ここで…多くのイベント主催者は二言目には「VIP特典」の話をするのですが、それより何よりVIPの方に伝えなきゃいけないのは、「CHIMNEY TOWNはスタッフ一同、本当にあなたに感謝しています」というメッセージで、恋人や奥さんになんでもない日にプレゼントを渡すように、「いつも助けてくれるあなたに、感謝の気持ちを伝えたくて、プレゼントを買いに行ったり、プレゼントを作ったりする時間を設けました」ということだと思うんです。
なんで、ここまで熱く語っているかというと、先日の講演会終わりで、お客さんと飲み散らかしたのですが、そこにファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』のVIP席を購入してくださったお客様がいて、その方が「手紙が届いたんです! 本当に、本当にありがとうございました!」と目に涙をうかべながら僕に御礼をしてきたんです。
御礼をしなきゃいけないのはコッチの方じゃないですか?
なので、二人とも向かい合ってペコペコしてたんですけども、この関係が最高じゃないですか?
VIPとの関係はこれだと思います。
西野亮廣
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