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AIに仕事を代替される職業・されない職業、ランキング&マッピングで判明!


坂本貴志
キャリア・スキル
ニューノーマルに備える働き方改革
2020-11-20 03:

※これは2020年に公表されたものになります。

AIによって仕事を代替されるかどうかは、定型的(繰り返し)な業務を行っている割合が影響しているという。

では、日本において定型的な業務を行う割合が高く、AIに代替される可能性があるのは、どんな職業か。『統計で考える働き方の未来――高齢者が働き続ける国へ』の著者であるリクルートワークス研究所の坂本貴志研究員が、同研究所の行った就業実態パネル調査からAIによって仕事を奪われる可能性の高い職業をあぶりだす。

 機械学習やIoTなど、AIの技術革新によって既存の仕事がなくなることが指摘されて久しい。

野村総合研究所がオックスフォード大学のマイケル A. オズボーン教授らと行った共同研究によると、2030年にかけて日本の労働人口の49%が就いている仕事は人工知能やロボット等で代替可能になるのだという。

 さらに、マサチューセッツ工科大学の経済学者であるデイビット・オーター教授らによると、ある仕事が代替されるかどうかは、主にそれが定型的(繰り返しの仕事)かどうかで判別できるのだという。

毎日同じ作業を繰り返して行う仕事であれば、その仕事のやり方を機械に学習させてしまえば遂行できてしまうからである。

 それでは、日本の労働市場において、このような繰り返しの仕事は誰によって遂行されているのであろうか。

繰り返しの仕事をしている人の属性やその人がついている職の特徴を探ることで、AIによって仕事を奪われる人は誰なのかを予測してみよう。

定型業務の割合の大小で
AIへの代替されやすさを検証


 リクルートワークス研究所が行った『全国就業実態パネル調査2020』では、繰り返し同じことをする仕事(定型業務)の割合を問うている。

本稿では、AIなどによって仕事が代替されるかどうかが「定型業務の割合の大小によって決まる」という前提のもとで、どのような職についている人がその仕事を代替されやすいのかを分析してみよう。

 図表1は、各職種を、定型的な仕事が多い職種(代替されやすい職種)か非定型的な仕事が多い職種(代替されにくい職種)なのかと、頭を使う業務の多い職種(ホワイトカラー)なのか体を使う業務の多い職種(ブルーカラー)なのかという2軸でマッピングした図となる。

この分類に従うとすれば、職業は以下の4つの区分に分けられる。

・ブルーカラーで代替されやすい職種
・ホワイトカラーで代替されやすい職種、
・ホワイトカラーで代替されにくい職種
・ブルーカラーで代替されにくい職種

図表1代替されやすい職と代替されにくい職

※「ブルーカラー」=肉体労働、「ホワイトカラー」=頭脳労働

郵便配達、ドライバー
清掃、配達・倉庫作業などが代替可能

 まずはブルーカラーで代替されやすい職種からみていくと、郵便配達・電話交換、ドライバー、清掃、配達・倉庫作業などが並んでいる。

郵便配達や宅配、清掃といった作業は、毎日同じ業務を繰り返し行う側面が強い。

このため、たとえばドローンの開発や、清掃用のAI掃除機などのさらなる開発が進めば、機械による代替可能性が高まる。

 さらに、ドライバーも代替可能性が高い職種となった。

自動運転の技術の進展に期待されるところだが、ドライバーの種類によってその代替可能性はやや異なる。

すなわち、その他ドライバーやトラックドライバーは代替可能性が高いが、タクシードライバーは代替可能性が低い。

タクシードライバーの提供するサービスは顧客によって変えなければならない部分も多く、レベルが高ければ顧客の満足度に影響を与え、売り上げもそれによって変動するからだろう。

 一方で、トラックのドライバーやそのほかドライバー(バスの運転手など)は、タクシードライバーよりも定型的な業務を行う側面が強いと考えられる。

同じ運転手でも仕事の性質は異なるのである。

財務・会計・経理
一般事務、薬剤師なども代替可能

 ホワイトカラーの中にも、代替されやすい仕事がある。

その筆頭は、財務・会計・経理である。

この職種は比較的定型化された仕事が多く、将来代替される可能性が高い。

公認会計士・税理士は財務・会計・経理業務の中よりも専門的で、高度な仕事を行っていることから定型業務の比率はやや低くなったものの、それでもやはり代替可能性が高い区分に入った。

 一般事務も比較的代替されやすいが、一般事務は最も職業人口の多い職種であり、多様な人がこの区分に該当している。

同じ一般事務でもその人の担う役職によって職務は大きく違うし、正規雇用者か非正規雇用者かでも異なる。

ただ、全体的な傾向として、この区分もやはり定型業務が多いことがわかる。

 薬剤師も定型業務が多かった。

患者の状態を鑑別し、どのような薬を処方するかを決めるのは医師である。

薬剤師はその判断に基づいて、指示通りに薬を調合する側面が強いからだと考えられる。

研究開発、建築家、デザイナー
弁護士、医師などは代替不能

 次に、ホワイトカラーで代替されにくい職種を明らかにしていく。

この中で特に代替されにくい職種をあげていくと、研究開発(電気・電子・機械)、建築家、ソフトウェア関連技術職、エンジニア、広告出版マスコミ専門職、美術家・デザイナーなどとなった。

 これらの職種を一言で表せば、新奇性が求められる職種とでもいえるだろうか。

彼らが前例にとらわれず独自の発想で仕事をしなければ、新しい価値ある財・サービスが開発され、世の中に普及していくことはない。

そうした仕事はいくら技術が進展したとしても機械による代替は不可能なのだ。

 これらの職種には劣るが、弁護士・弁理士・司法書士、医師・歯科医師、教員・塾講師など各種専門職も同様に非定型的な仕事が多い職種となった。

同職種の人たちは上記のような新奇性が求められる職種と比較すればパターンが決まった案件も多いとみられるが、顧客が直面する多様な状況に対応して、その時々に高度な判断が求められることが多いからだと考えられる。

保育士、看護師・保健師
機械保守、建設作業者なども代替ができない

 最後にブルーカラーで代替されにくい職種をみていこう。

保育士、看護師・保健師、機械保守・メンテナンス、建設作業者、家政婦などがこの区分に入った。

 まず、保育士や看護師・保健師は専門的な知見を持ちながらも、多様な人への個別の対応が求められる。

通り一辺倒の対応では質の高いサービスにならない職種であるから、これらの職種も機械による代替は期待しにくい。

 機械保守・メンテナンスの仕事は、機械にイレギュラーな事態が起こった時に対応する仕事である。技術革新が進み、機械が多くの仕事を果たすようになる未来において、これらの仕事の需要はますます高まるはずだ。

 建設作業者や家政婦も代替されにくい職種となった。一つの構造物を建設するにあたっては実に様々な職人が仕事に当たり、一人ひとりの職人が行う仕事も複雑である。

家政婦の仕事もその時々において顧客の要望は異なると考えられ、機械化は難しそうだ。


4つの区分について解説してきたが、まとめとして定型業務の大小から導き出した「代替されやすい職業ランキング」を紹介しておこう。

リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査2020」

すべての人が
代替されにくい職へ移る必要はない

 本稿では、だれの仕事がAIなどによって代替可能であるのかを検証してきた。

この事実を私たちはどのように解釈すればいいだろうか。

 結果を単純に解釈すれば、代替されそうな職は危険だから、そのような職に就く人は代替されにくい職へ移動すべだという政策提言ができそうだ。

しかし、実はそうとも限らない。

代替されやすい職種があるといっても、仕事が完全に代替されるためには、将来的に大規模な技術革新が起こらなければならないし、それと同時に、その技術が相当に安価に導入されなければならず、これらの職が10年や20年といったスパンで消滅するわけではないからである。

さらにいえば、代替される職種から代替されない職種への移行は、国全体で行われればよいのであって、一人ひとりがそのような職業転換を伴う必要は必ずしもない。

 AI技術者のようなこれから興隆する職種には、これから長いキャリアが待ち受けている若年層が就くだろう。

そして、ドライバーや配達業、マンション管理などの仕事の一部には徐々にAIが進出しつつも、熟練したシニアが仕事の中心を担うのではないだろうか。


 たとえば、マンション管理においては、フロアの清掃業務やごみの分別業務などを行うのはAIになるだろうが、その一方で、こうした機械の管理のほか、住民からの個別の声を拾い上げて実際のサービスに反映するのはシニア労働者の役割になる。

このようにAIとの分業を適切に行いつつ、一人ひとりのライフサイクルのなかでこういった職業のすみわけが行われれば、これからの技術革新による職業構成の変化に十分対応することができるのだ。

 おそらく、AIなどによる仕事の代替は、多くの人たちが思っているより、中長期的に緩やかに起こっていくだろう。

私たちが考えなければならないのは、どのような仕事がなくなるのかを心配することではなく、こうした技術革新をいかにしてスピード感をもって実現していくかということになるはずだ。

今後、日本社会は更なる少子高齢化のなか、深刻な労働力不足に直面するのはほぼ間違いないからである。

 機械によって代替できる仕事の範囲を広げて、実際にそれを実現させていく。

その道筋を描くことが、今後の日本経済の発展にとって必要不可欠な視点となるはずだ。

(リクルートワークス研究所 研究員 坂本貴志)



2020年では、このような予想をされていたが2023年の今、AIとの関係がちょっと変わってきていると思います。

AIに仕事を奪われる、奪われないという敵対する考えで予想していたけど、AIと共存する考えも持っておいた方が良さそうだ。

AIによってクリエイティブスキルが低い人でも発信できるようになった時代が今である。

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