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彼は誰時

朝。
まだ日の出前の静寂の時間。
彼は誰時

私は昔からこの時間が好きだ。
朝でも夕方でも。

人の見分けがつかない時間。だから彼は誰時。
実は、深海監督の「君の名は」でこの名前を知った。
人の見分けがつかない時。ネットで調べると、そう説明が書かれてあった。

でも私はこう思う。

あなたは誰?
わたしは誰?
「わたし」
「わたし」は何者でもないと知る時間
それが、彼は誰時

全ての命が何者でもないものになる時。

全ての命が、生も死も時も超えて一つになる時間。

そんな感じがしている。
だから好きなんだと思う。


寒いかなと思いながらも、ベランダに出てみる。
澄んだ空気に包まれる。
温かい白湯が身体を温めてくれるのを感じながら、
このなんとも言えない空気に身を包まれていた。

下を見ると、すでに明かりがついている家もある。
もう生きている人たちもいるのだな。と思った。
前日に寝るのが遅くなった日は、朝も少し遅くなる。
目が覚めると、外はもうすっかり明るい日もある。
わたしが寝ている時も、誰かは起きていて生きていることに、少しの不思議さを覚えることがある。

朝の淀みのない神聖な空気を吸い込んでみる。
皮膚感覚は薄く、まるで空気と一体になっているかのように、何も感じない。
気持ちがいいなとか、寒いなとか、何もない。
ただ、肌に透明なものを纏う。

空気の音は静寂そのもので、
なんのかけらもない。

喜びも、幸せも、悲しさも、苦しみも、悩みも、音も、匂いも、何もない。
光と闇だけが混在している。

わたしは何者でもないと教えてくれる。

この何者でもない自分を今日も生きていく。

ただそう思う。