オンラインの孤独　1月9日の思い出　#ほろ酔い文学

全然酔えない。
右端の彼が、謎がけをしようだなんていうから。
今、僕はとても焦っている。
左端で焦っている。何も思いつかない。

そもそもオンラインで懇親会をしようだなんて言いだしたのは誰だ。

あ、僕か。
今年の正月も帰省する人はまばらだった。
田舎に残る僕は、
都会にいる友人に複雑な気持ちがある。

会いたいような、会っちゃいけないような。

人の少ない閉鎖的なこの町で、えたいの知れない病気に罹るほど恐ろしいことはない。

ここにいる皆ならわかるだろう。
町の妙な結束力を。

最後にリアルに皆で集まったのは、5年前の成人式だ。
2017年1月9日。
あの日僕は誕生日だったんだ。

僕は、誕生日会をしたことがないんだ。
3学期が始まる直前の冬休みの一日、
みんな忙しいだろう？
それに、自分から言い出すものでもないだろう？

でも、今年ならオンライン懇親会って名前をつけてれば、みんなを集められると思ったんだ。
誕生日会じゃなくていい、
みんなでワイワイする会。
でも、アレだな、オンラインって意外と孤独だ。

あ、余計なこと考えていたら謎かけが進んでいる。
まずい、あと3人。
真ん中のアイツと右端の彼女と、僕。

「誕生日とかけまして、
新年、とときます。
どちらもhappyがつきものです。」
「誕生日とかけまして、
今後の日本とときます。
いいケーキ（景気）を期待します！」

なんだ？みんな誕生日とかけてる。
なに？バズワードなの？

えー？
誰？誰の誕生日会？
え？俺？！

え、サプライズ？
な、なに、みんなの壁紙！
誰が書いたの？俺の似顔絵？！

なんだよこれ、顔がたくさん。
コワイじゃないか、
でも、泣けて来るじゃないか。

泣いてる？
酔ってんだよ！

いや、嬉しいよ。
すごく。

謎かけ俺の番だね。
「整いました。
ビール、とかけまして
オンライン、とときます。
その心は、
アワないと寂しい。」

いつか、帰ってこいよ。
お土産なんてなくていい。
何も気兼ねなく、
正月とか関係なくフラッと。

待ってるよ。