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なぜダンベルフライをプレスのように行うのか

こんにちは、恵比寿でパーソナルトレーナーをしている倉田です。
今回は今までと趣向を変えてトレーニングに関する細かい話をしようと思います。
トレーニングを指導する立場にあるパーソナルトレーナーがどのように種目を選んでいるのか、フォームについてどのように考えているのか、そういった内容がボディメイクの参考になれば幸いです。

ちなみにこのnoteの内容は2021年1月時点での倉田の考えです。
人によって違った考え方もあると思いますし、今後私の考えも変わるかもしれません。

“トレーニングにたった一つだけの正解というものはない。“

師匠から聞いた言葉で、トレーニングについて考えるときはいつも頭に浮かびます。

何年か後このコラムをに読み返して「まだまだ考えが浅いな」と思うかもしれませんし「なかなかちゃんとした事言っているな」と思うかもしれません。
こういった多面的な楽しみ方ができればと思います。

ダンベルのフライプレス

ここ数ヶ月のトレーニングで今まで行っていなかったダンベルフライを取り入れました。
新しい刺激を入れた事もあり、大胸筋が今まで以上のペースで発達しているように感じます。

ただ、現在行っているフライはプレスのように動作中は常に肘の真上にダンベルがあるようにしており、この方法は「ダンベルフライプレス」という呼び方があるようです。

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今回はどのような理由でその方法を選択してメニューに組み込んだかをまとめてみました。

フライとプレスの違い

まずダンベルフライとダンベルベンチプレスの違いについて解説します。
どちらもダンベルを使ってベンチ台に仰向けになって行う、主に大胸筋を鍛える種目です。

簡単な見た目の違いとして、フライは胴体とダンベルが平行なのに対してプレスは直角に構えて行います。

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これによってトレーニング動作の可動域が変わります。
具体的にはフライの方が大胸筋をよりストレッチしたポジションで負荷を与えやすくなると考えています。
なぜなら、フライの方がより肩関節を外旋しやすいからです。

ダンベルプレスは肘関節(橈尺関節)がやや回内した状態です。
この状態でも肩関節を外旋することはできますし、肩の怪我を予防する意味でもできる限り外旋したポジションで行う事が大切です。

しかし、フライでは肘関節(橈尺関節)がそこよりも回外することになり、肩関節はさらに外旋しやすくなるのです。

メモ)
回内は肘から先を内にひねること。
回外は肘から先を外にひねること。
外旋は腕の付け根である肩を外にひねることです。 

肩関節は内旋位より外旋位の方がより大胸筋をストレッチしやすくなる事が写真を見ていただくと分かると思います。
下段の写真がより外旋したポジションでの可動域です。

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トレーニング種目の選択

プレスよりもフライの方が大胸筋をストレッチをしやすい種目である事がわかりました。

それではフライの方がプレスよりも優れているのか?答えは否です。
なぜならプレスは三角筋の前部を動作に参加させる事ができ、一般的にはフライよりも重い重量を扱う事ができると言う特徴を持っているからです。

ストレッチの負荷、より重い負荷。どちらも筋肉の発達に貢献してくれる違った形の刺激です。

大切なのは形が違うパズルのピースの「どちらが優れているか」ではなく「どちらのピースが今の自分にとって必要か」という視点です。

目的、トレーニング歴、経験、大胸筋や他の部位全体のメニューの構成、柔軟性、可動性、既往歴こういった要素を踏まえて、どのピースが自分にぴったりハマるのかを考えてメニューを選ぶとより効果的なトレーニングが行えると思います。

パーソナルトレーナーはクライアントにぴったりのピースが何かを考えて、それを提供するのが仕事とも言えます。

メモ)
重量だけを考えるのであればバーベルのベンチプレスを行うという選択肢もあります。一般的にバーベルで行った方が扱える重量は重くなります。

私はベンチプレスの重量は少しずつ伸びてきているものの、大胸筋の発達がほかの部位と比べて遅れているように感じていました。

そこで、今まで取り入れていなかったフライ系の種目を追加することが効果的だと判断してメニューに取り入れています。

なぜプレスのように行うか

続いて、そのフライのフォームについて考えたいと思います。
ダンベルフライは肘関節を110〜135度程度でほぼ固定して行う形が一般的です。

一方ダンベルプレスは動作中ダンベルが肘の真上にくるよう動かすため、肘関節の角度は大きく変わります。

私が行っているプレスのように行うフライはダンベルは体と平行、動作中は常に肘の真上にダンベルがある形です。

この形で行う理由をすごくシンプルに考えて説明したいと思います。

フライモーメントアーム

写真の左側が一般的なフライの動き、右側がフライプレスの動きです。
テコの原理では軸となる支点と、作用を受ける重心との垂直距離が離れているほど大きな負荷がかかることになります。

この垂直距離をモーメントアームと呼びます。

写真では上腕の付け根である肩を支点とし、ダンベルを重心(作用点)とみなしました。
下段の場面で見るとダンベルの重量が同じ場合、大胸筋への負荷はフライの方が大きいと言うことがわかります。

また、別の見方をすると、フライはモーメントアームの変動が大きく、フライプレスでは変動が小さい事が分かると思います。

基本として、トレーニングでは全ての可動域で動作をコントロールできる事が大切だと考えています。
つまり、この動作で考えるとモーメントアームが最も長い時でもコントロールができるなかで最大の重量で負荷を設定することになるのです。

そうなった場合、フライとフライプレスでは後者の方がより重い重量を扱えると言うことができます。
単純化して考えるとモーメントアームが半分になると、扱える重量は2倍になります。

上記のセオリー通り重量設定をした場合、フライプレスの方が扱うダンベルは重くなりますが写真の下段のポジションではフライ、フライプレスともに同じ負荷がかかることになります。

しかし、写真の中段のポジションではモーメントアームにそれほど差がなく、扱っている重量には差がある為、筋肉に対する負荷はフライプレスに軍配が上がります。

これが、私がフライプレスを選択している理由です。
ストレッチポジションでの負荷は同じだとしても、その他のポジションでの負荷でプレスの方が有利だと感じるからです。

怪我の予防

フライはスタートポジションでは弱い負荷だったものが、ボトムポジションで急激に強い負荷となります。
一方、フライプレスはボトムでの負荷はフライと同じだったとしても負荷の強さにそれほどの変動はありません。

こういった視点から考えて、より安全に実施しやすいのはフライプレスではないかと思っています。

これに加えて、筋肉と骨の位置関係から考えても、ボトムの位置で筋肉に大きな負荷がかかるということを考慮する必要があります。

フライモーメントアーム2

写真のオレンジの線が大胸筋、グレーの線が骨をイメージしています。
筋肉が収縮することで骨を引っ張り、結果的にダンベルが挙上します。

この時、骨に対して筋肉が直角の位置関係にある時、力が1番発揮しやすいポジションになります。写真の下段です。

一方で写真上段では骨と筋肉がかなり狭い角度で引っ張ろうとしています。
実はこの角度では実際のモーメントアームがさらに長くなります。ダンベルを動かすのにとても大きな力が必要なのです。

つまり、最初の図での解説以上に筋肉に大きな負荷がかかりやすいと言うことです。

このようにフライではモーメントアームの長さの変化により筋肉への負荷が急激に増えてしまいます。
大胸筋は紡錘状筋という種類の筋肉です。
紡錘状筋は筋損傷を起こしやすい種類の筋肉と言われています。

そういった筋肉にエキセントリック(伸張性収縮)の場面で急激な負荷の変動を与えることはリスクが高い動作だと考えています。

メモ)
例えば写真下段で「限界に近い」と感じた負荷が、上段のポジションになることで急激に負荷が増える事にリスクを感じます。

スターティングストレングスはトレーニングの基礎に関するとても重要な情報が詰まっていますが、モーメントアームに関しても様々な表現で解説してあります。
モーメントアームについてもっと知りたいと言う方におすすめです。

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フライプレスのコツ

まず、この種目のメリットでもある肩の外旋をしっかとするようにしましょう。

現代人はデスクワークやスマホ操作によって肩が内旋し、猫背の姿勢で過ごす時間が長くなり、その結果、肩の外旋ポジションをとることが苦手な方が多くなっていると感じます。

大胸筋、小胸筋、広背筋といった内旋させる作用を持つ筋肉をほぐしたりストレッチし、十分外旋できるまで弛緩させます。

メモ)
トレーニング前に対象筋(この場合は大胸筋)を弛緩させることは筋出力を下げると言われていますが、取りたいポジションを取れないのであれば出力よりもケアを優先すべきだと思います。

その上で外旋筋群である棘下筋、小円筋などをアクティベーションしましょう。
アクティベーションはこちらの種目がおすすめです。

しっかりと外旋のポジションがとれると、腕の軌道は体に対して直角ではなく、やや脇を締めながら降ろしていく形になると思います。

この時、ダンベルが頭側に残ってしまい、肘とダンベルの位置が崩れることが多いので気をつけましょう。

ダンベルは常に肘の真上にあるようにしたいです。

その為にダンベルを握りこまないことが大切です。
強くダンベルを握りすぎると、ダンベルの傾きを感じることができず、肘の真上にダンベルを保持する事が難しくなります。

手をセンサーとして働かせるためにも、ダンベルは優しく、卵を持つように握りましょう。

細かく上げていくともっと沢山のポイントがありますが、長くなりすぎるのでこのへんで…。

記事を最後まで読んで頂きありがとうございました。
皆さんのトレーニングの参考になれば幸いです。
評判が良かったらほかの種目の解説もしたいと思います(スキを❤ください)。


恵比寿駅徒歩5分のパーソナルジムでトレーナーをしています。
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