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【雑誌『婦人の友』連載】ポルトガル、湯けむり慕情の記事

※この記事は自分が取材し、雑誌『婦人の友』で掲載となった内容を再編集したものです。

ヨーロッパの冬は寒いです。比較的温暖なポルトガルであっても同じこと。石造りの街は底冷えがするし、こたつもないし、なにより湯船に浸かる、という文化もないので、バスタブはあっても、広くて大きくてお湯を溜めてもすぐにぬるくなってしまうのです。

ポルトガル暮らしの唯一の難点と言っても過言ではない冬の過酷さですが、それを楽しみに変えるすばらしいものがあったんです。そう、温泉。

場所はアソーレス諸島。大西洋に浮かぶ島々で、目的地はもっとも大きいサンミゲル島。島の空港から車で1時間ほどのフルナスという、山間にある小さな街に到着。ここに温泉があるというのですが…。

噂どおり、街にはいくつかの温泉施設があり、僕はPoça da Dona Beijaという施設を利用させていただきました。小川に沿っていくつもの湯船があり、中には滝のような温泉もあったり。湯温はややぬるめ。ゆえに長く浸かっていられます。水着着用のお風呂で、カップルや家族連れ、一人旅の人など、たくさんの人が、ゆったりのんびり温泉を楽しんでおられました。南洋の大きな木々に囲まれた露天風呂に浸かっていると、〝ここは楽園?〟と思えるほど、心身ともリラックスできました。

温泉のあとの楽しみといえば、そう食事。当地の名物はポルトガルでよく食べられているコジードという煮込み料理。そして、聞けば、島の温泉を使って調理しているというのです。

Fumarolas Lagoa das Furnasという公園に行ってみると、そこには日本が誇る温泉県、大分の別府のような光景が! 噴気の中には、レストランの名前を掲げたプレートがいくつも。なるほど、いわゆる〝地獄蒸し〟というわけですね。

故郷・日本を思い起こさせる事物が、大西洋の島にあったのでした。

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