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そのサイコロは本当に振る必要があるのか?

はじめに

みなさま、今年もよろしくお願いいたします。
いくつか下書きは書いていたのですが、年末年始ですっかり間が空いてしまいました。今日は、教育・学習目的のゲームとサイコロ(すごろく)について考えてみたいと思います。

私はゲーム学習(Game-based Learning)の研究をしていますので、その関係で「○○を学ぶためのボードゲームを作ったので見てください」と依頼されることが多いのですが、経験上だいたい初めてゲームを作られる方の半分程度は「○○すごろく(or人生ゲーム)」を開発されます。あとはトレーディングカードゲームと、カルタが多いですね。なぜこれらが開発されるのかも今後のnoteのネタになりそうです。

思い起こせば30年くらい前、私も初めてのゲーム作りとしては両親と一緒に「ドラクエすごろく?」を作りましたので、その気持ちはよく分かる気がしますし、実際ボードゲーム作りの経験を積むのに悪いとはいいません。(この記憶、今まですっかり忘れてました)

スゴロクと学び

「○○スゴロク」を作るのがダメといっている訳ではないのですが、そのゲームが教育や学習目的であるのであれば、本当にそのサイコロは振る必要があるのかを本気で考えてみてください。

言うまでもなく、サイコロはゲーム内に運の要素を発生させるものです。
これまでに見てきた多くの学習ゲームの場合、サイコロはスゴロクで止まったマスの問題を出すとか、止まったマスの内容について考えるとか、そのような形で使われます。

さて、あなたがプレイヤーに学んで欲しいと思っていることは、運の要素で発生したり、発生しなかったりして良いのでしょうか?

経験的には90%以上のケースにおいて、スゴロク形式にしてサイコロを振る必要はなく、カードを用意して(ランダムに)めくれば良いだけです。その方がゲーム中に発生する出来事(つまり学び)はコントロール可能になり、ゲーム展開(サイコロ運)によって学びの質が異なることを回避できます。

よくある反応

上記を指摘した場合のよくあるリアクションを2つほど載せてみます。

1つめは「すごろくのマスを見るだけでも学ぶことができるんだ」というご意見です。
もしかすると開発者はものすごく記憶力の良い方で、マスの内容を一度見たら覚えることが出来るのかもしれませんが、大抵の方は自分が止まったマスの内容(や先にある一回休みマスのようなキャッチーなマス)しかみません。また、市販のゲームでしたら何十回も繰り返し遊ばれる際にマスの内容が覚えられるかもしれませんが、ほとんどの学習ゲームは1度しか遊ばれません。正直、どれだけマスがたくさんあってもプレイヤーの印象に残るかは疑問ですし、むしろたくさんマスがあることでゲームのフォーカスがブレると思います。

2つめは「サイコロを振ると盛り上がるんだ」というご意見ですね。
ただ、学習ゲームの盛り上がるところ、悩ましいところは学んで欲しい内容と直結していなければいけません。「サイコロであの数字を出したい!出た!or 出ない!」というのはあなたのゲームが与えたい学びで重要なことなのでしょうか?

なぜ○○スゴロクが作られ続けるのか

A.ゲームについてよく知らないから
以上、完」なのですが、もう少しだけ説明します。
ゲームには「メカニクス」というものがあり、「サイコロを振って出た目を移動する」というのもその1つです。要するに、他のメカニクスをまったく知らなければ、スゴロク「しか」作れないということです。

私が初めてゲームを作る方で、あまりゲーム経験がない方にしているアドバイスはだいたい以下です。この辺りはまた後日詳しくnoteにしてみたいと思っています。

①製作メンバー全員でボードゲームカフェに行っていくつか毛色の違うゲームを遊んでみましょう(店員さんに薦めてもらうとよい)

②ゲームについてなんとなく分かったら、たくさんゲームが乗っているカタログ(下記のようなもの)を読んで、いろいろなメカニクスを学んでみましょう

③ゲーム作りの入門書(下記のようなもの)を読んでみましょう

ということで、スゴロクをはじめに作ってみるのはよいのですが、ぜひいろいろなゲームを知ってから、学んで欲しい内容に最適なものをみつけてブラッシュアップして欲しいなとは思います。

もちろんよく検討した結果、ルールが誰にでもわかることなどを優先し、学びの質が多少下がってもすごろくにする…という判断もあり得るとは思います。今回はよく検討せず、とりあえずすごろくを開発しがちな問題について書いてみました。

今日の結論:ほとんどの学習ゲームにおいて、そのサイコロは振る必要は無い



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