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ボードゲームと学びに関する4つの立場


はじめに

子育てと査読対応など締めきりのある研究活動に奔走しており、すっかりnoteにまで手が回らなくなっていました。最近出版された「ボードゲームで社会が変わる」という本を読み、この筆者の方達はシリアスゲームに対してアンチよりの立場だということを暗示的(明示的かも)に書いています。ボードゲームと学び(この本は学びに限った本ではないですが)といった時にも様々な立場があるということを改めて考えましたので、ボードゲームと学びに関する4つの立場についてまとめてみました。他にもこういう派閥があるという意見があればぜひ教えてください。(時短のためにChat-GPTをちょっとだけ活用しました)

1. 自然な遊びを通じて学ぶべき派

この考え方では、ボードゲームを自然な遊びの一環として捉え、特別な介入を加えることがない自然な学びが良いとします。例えば、子どもはゲームを遊ぶ際にそのルールを理解しようとして論理的な思考をし、戦略を練る過程において問題解決能力を養うことができます。ここに大人や教育者が積極的に介入することで、逆に学びが不自然になって台無しになってしまうと考えます。この考え方では、ゲームの楽しさを最優先に考え、学びはその副産物として捉えます。もちろんよいゲームわるいゲームというのはありますので与えるゲームは大人などが選ぶ可能性はありますが、いわゆる一般的なゲームの遊び方こそがベスト!という立場です。

2. 適切な介入によって汎用的スキルを身につけさせる派

この考え方では、主に市販のボードゲームを教育に活用し、既存のゲームが持つ教育的価値を最大限に引き出すことを目指します。例えば、「カタンの開拓者」では資源管理と交渉のスキルを、また「チケット・トゥ・ライド」では計画的思考を教えることができるというように考えます。この考え方で目指される学びの目標は「交渉力」のような汎用的なものが主で、「チケット・トゥ・ライド」で「アメリカの地理を学べた」というようなことは副次的な効果として考えることが多いです。

大人や教育者は、ゲームが持つ教育的要素と子どもたちが学ぶべきスキルや知識との間の関連性を考慮して、ゲームを選択し提供します。また必要であれば、ゲーム中やゲーム後に振り返りの機会を与えるなどして、目標としているスキルとの関連性を深めます。ゲームの楽しさと学びについての考え方については、1と3の中間的なものになります。(いわゆる広義のシリアスゲームですね)

3. 教育目的のためにデザインされたゲームが必要派

一方、市販のゲームを用いるのではなく、特定の教育目的のためにデザインされたボードゲームを特定の学習目標を達成するために利用すべきだという考え方もあります。これらのゲームは、特定の科目やスキルに焦点を当て、それを教えるために最適化されたルールやゲームプレイメカニズムを持っています。例えば、私と研修会社で共同開発した「成果の達人」は、会社の成果に直接貢献する活動と間接的に貢献する活動のバランスについて考えることに焦点化しています。

この考え方で目指される学びの目標は「特定の内容に関連する知識・スキル・態度」となり、汎用的な能力は副次的なものになることが多いです。またこの考え方では、楽しさがあることは重要ですが、学びの方を最優先事項として捉えます。(いわゆる狭義のシリアスゲームです)

4. そもそもボードゲームと学びを結びつけるんじゃないよ派

最後に、ボードゲームは純粋な遊びであり、そもそも学びと結びつけるべきではないという考え方もあります。特に金融的な教育的効果をうたったボードゲームは、ネットワークビジネス的なものに利用されるケースもあり、こういうところから「学び」と「ボードゲーム」を結びつけること自体がうさんくさいと思う方もいらっしゃいます。また、自分の趣味で好きでやっていることを「役に立つ」という観点で捉えられることに関して不快感を覚える方も一定数いらっしゃるようです。

まとめ

研究者の書くものなので毎度すっきりしなくて恐縮ですが、もちろんどれが正しくてどれが正しくないというものではありません。私は研究としては成果を測定しやすいために3のアプローチを取ることが多いですし、専門家として「このゲームを遊べば、ほぼ確実にこれが学べる」と責任をもっていえるのは「教育目的のためにデザインされたゲーム」(かつその学習効果がきちんと検証されたゲーム)かなと思います。(2は上手な方が適切に与えればそうなるのだろうと思いますが、私が専門家として例えば「カタンで交渉力が身につく」ことに責任が取れるかといわれればNOです)

もちろん、子どもが大きくなったら2の考え方でゲームを与えることもあると思いますし、純粋に趣味として遊ぶ際には学びのことなど考えませんので4の立場に立っていることもあると思います。

自分でも何が書きたいのかよく分からなくなってきましたが、ボードゲーム教育やボードゲームの社会課題への利用が最近少し流行ってきています。その方が1~3のどの立場に立っているのかを考えると、主張が理解しやすくなるかなと思いますので、参考にしてみてください。

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