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文学

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短歌と詩と小説。
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#tanka

【短歌連作】静止画が飛んでいる

夏のマッハボーイとにかく速い速い言っている間に見えなくなった 重力をつらぬく光の線がいたむ 進め心臓はくれてやるから 環状になってこの一瞬だけの讃歌をみんなのための讃歌を 前髪のプリズムを通してゆらぐ炎の美しいこと! まぶしくて見えないものが見えた(逆に)しばらく動けなかった(普通に) 波の音の不器用だけが救うからちっぽけな型にいつまでもはめるな ハイライトきかせてすべてが光すぎている世界を生きてたら夜 続くなら他愛ない日々 はやくって終わる明日は水銀に似て

【短歌連作】現在にまつわる数々の噂

あいまいみーまいん、ゆーゆあゆーゆあーず…… かつて駄菓子屋と川があった 弾丸も当たらないほどなめらかな鳥がふたりで懐かしむ川 「3年前の川の模様を覚えてる」きみが言うなら、まちがいないね 昔の話。川の近くを通るたび死にたくなって死にたくなくって 不自然な動きをしているらしい 川の凹凸のようになれと? 足元に(わたしの気持ちを大雨の川に喩えてみたけど)花が 鳥たちが伝えたいのはいつかその川の断面 きみといるとき 川岸に片足で立つ生活の灯がぜんぶ沈んだら戻ろうか

短歌連作「オルタナティヴ」

廻避する手がないことを知ったのはお遊戯が始まってからだった 3人の桃太郎がおじぎをする 1人は衣裳のみの出演 どこからか撥条があらわれ きえて べつに探してないけどそこに 思春期の間歇泉を避けるためやわらかいほうのソファに飛びこんだ 「テンプレとか劃一的とかはいいからさ、もっと君も訊いてよ。来てよ」 あいつらが(気持ちよさげに!)飛ぶせいで僕らの大地が小さく翳る 1組と2組と2組 8八の限界聚落解体決定 何者かに侵蝕されてるぞ 僕ら 古文を逐語訳するみたいに

短歌連作__is not empty

初めて連作というものをやってみた。 テーマに沿って絞り込んだり並べ替えたりする作業が非常に楽しい。 今回は連作ということで、かなり気合が入っている。 縦書きにしたかったから、画像という形態を採った。スマホの方は横画面にしたりして読んでいただきたい。 (画像の画質が悪そうなので一応PDFを置いておきます)

かなり生き急いでいる短歌_24首

図書委員の当番中に読んでいた。 しおりがなかったからセブンイレブンのお手拭きを挟んだ。 薄氷の上の生活と、Twitterでの不安定な繋がり。歌に危うさが漂っている感じがする。 以前から「了解」という言葉は電子メールによってその重さを奪われているんじゃないかと思ってたけど、本書のタイトルはまさにそういう意味を含んでいそうだ。 『京大短歌 29号』と青松輝『4』を買った。 京大短歌会は学生短歌界でもかなりの重鎮だと聞いて気になったのだが、偶然にも29号には青松さんが寄稿して

対港区女子短歌_1首

港区女子が寿司屋に殴られたとか殴られてないとか、背景が歪んでるとか歪んでないとか、そういう事件が話題だ。 今回は、そんな世相をみじん切りにする短歌を作ってみた。 置く場所をまちがえた呼び込み君に逆位相の波をぶつける

教室のすみっこで作った短歌_18首

うれぴ〜〜〜!!! 今回は、教室のすみっこで生まれた短歌を大紹介。 僕の席は窓から外が見えるので、考え事をするのに向いている。とてもいい席だ。 近くで工事をやってるらしく、その音も聞こえる。 レゾナンス つり革を持つおじさんのおしりのリズムとガタンゴトンが 駅前のエホバを無視する学ランは部活ででかい声を出してる 雪だって!! 手の体温を抵当に入れて楽しくスマホを凝視 けだるげに通学路を歩いていたら雪が降って2分でやんだ 石を切る音と世界の泣き声を重ねた音は同じら

年末年始の短歌_9首

とか言いながら8/9は年始の短歌。 前回よりも上達している気がする。 柿ピー食べすぎかな、いや、もうひとつ食べれば何かが見えてきそうだ 石川を憂いながらも大阪へ向かう車内は「き」ではなく「けり」 ジムニーの若葉マークを隠すため緑と黄色を半分ずつ塗る 背が伸びて声も低くなったけどくしゃみは未だ「はくちっ」のままで 黒豆のなかの僕らは兄弟で 年に1回会う程度の仲 遠縁の気まずいどうし目が合って苦笑いするついたちの午後 Amazonの緩衝材着て人ごみをかき分け願うは

はじめての短歌_5首

木下龍也と青松輝(敬称略(最近まで僕はずっと「敬省略」だと思って生きていた))で興味を持ち、映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」に背中を押されて、短歌を詠んでみた。 初めてだからそういう補正込みで読んでね。 あ、虹じゃん あの人も気づいたのかな、そうしたらもう他人ではない ヘルメットかぶってるのに信号無視 命をどうしたいんだよ ひげ剃って数日経ってあらわれる生命の尊さしたたかさ 四ツ切の画用紙ですらこのデカさ 世界は意外と広いのかもね ちょきちょきと髪が解体さ