エッセイ #14|運命は自分で切り開く。七夕の願い。
世の中では、七夕とは「織姫と彦星が年に一度だけ逢えるロマンティックな日」と認識されている素敵な日だが、
私にとって七夕はずっと「一年で最も気合いを入れて警戒しなければいけない日」だった。
というのも、何の偶然なのか、20年前の七夕に両親は離婚届を出し、18年前の七夕の日に妹が病で死の淵に立たされているという通告を受けた日だった。
「七夕って本当にロクなことがないな・・・」私はずっとこう感じていた。
七夕が来る度に嫌な気持ちになる。あの時の頭が真っ白になる感覚を思い出す。どうしても「世の中の不条理や理不尽」について考えてしまう。自分の運命を後悔しなければならないことが苦しい。
そのうえ「二度あることは三度ある」こんな言葉まで聞こえてくる始末だった。
「どうして私だけこんな目に遭うのか。私よりもっと悪い人は世の中にいっぱいいるはずなのに、どうして私だけ、私の家族だけこんなことになるのか。悔しい。」
20代が終わるまで私はずっと「悔しい」気持ちでいっぱいだった。
そんな私も、”30代になって、全てを乗り越えて幸せに生きていました”
と言いたいところだが、内容は違えど、私は30代に突入しても変わらず悔しがって生きていた。
そこで、「もしや、好きで悔しがりながら生きることを繰り返しているのではないか・・・?」と自分を疑ってみることにした。
確かに、社会人になって選択肢の幅も格段に広がったし、何より妹の病気もおかげさまで無事完治して元気に過ごしていて、私を取り巻く状況は良い意味で大きく変わった。
でも、私が感じている感情はあの頃のまま。悔しさでいっぱいだった。
そんな自分を俯瞰的に見た時に、「なんだ、やっぱり自分のせいじゃん」と腑に落ちた瞬間があった。
私はいつも、まるでツバメの雛のようにただ口を開けて、親鳥が餌を運んでくれるのを待つだけの、超受け身な他人任せの人生を送ってきた。それこそが安定だと信じて。
「私は10代の頃に取り巻く環境のせいで散々嫌な目に遭ってきたからこそ、大人になったらストレスとは無縁の安心した世界で生きていきたい。」
だから変わらず周りが与えてくれるのを待っていた。ただ口を開けて、手を広げて。
ずっと、自分を取り巻く世界が勝手に変わってくれることを待っていただけだった。
その頃の私がやっていた努力は、雛鳥で例えると、
「どうやったらもっと大きな口を開けることができるのだろう?」「どうしたらもっと長く手を広げられるだろう?」という非常に的外れなものだった。
でもある時、ストレスの一番の要因は、「やるべきことをやっていない」つまり「必要な行動をしていない」ことにあるということを知り、
自分に今必要なことを徹底的に分析した時に、
今の私に必要なのは、「自分に自信を持つこと」と即座に理解をした。
自分に自信を持つためには、自分の弱さと向き合うこと。
私の一番の弱さは、「違和感を違和感のまま残しておく」という、自分の不快感に鈍感すぎる生き方をずっと採用していたことだった。
本当は不快に感じているのに「人生ってそんなもんだよね」と流す。本当は疑問に感じているのに、相手にの機嫌を損ねたくなくて「別に死ぬわけじゃないしまぁいいっか」と違和感をなかったことにする。
そんなことをしているうちに、すっかり自分の気持ちが分からなくなってしまい、最も酷い時なんて「今日はなにを食べたい?」と聞かれても全く答えられない始末だった。
自分の気持ちが分からないと、選択・決断が高確率でブレる。そうなると、行動内容もブレる。
そうなると「すごく頑張っているのに、ちっとも報われない」という怪奇現象が起き始める。
そうするとますます「世の中って不条理で理不尽だなぁ・・・」という想いが強化されてしまう。これこそが負のループ。
そんな私が自分の弱さと向き合った結果、「運命は自分で切り開くもの」ということが分かった。
だからこそ、一番の不幸は「自分には選択肢がない!」と思い込んでいることだということも分かった。
思い出そう。自由に望んでいたあの頃を。
たとえ目の前にどんな現実がきたとしても、頭の中だけは誰にも侵されない神聖な自分だけの領域であることを。いつだって自由に望んでいいということを。
そんな矢先に甥っ子の七夕の短冊の写真が届いた。
「しょうぼうしさんになりたい」そうだ。多分、大好きなトミカ(車のおもちゃ)の影響。
それぐらい軽やかでいいのだ。
私だって、当時、苦しい現実を目の前に、将来のことや恋のことでも頭がいっぱいだった。
きっと当時の私は「どうせ自分の運命は自分で切り開ける!」と本能的に分かっていたのだ。
七夕というロマンティックな日に、色々重なったのも、このことに気付くためだったのかもしれない。
私はいつだってずっと自由だったし、これからも自由でいいんだ!
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