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チームの多様性を殺す方法

安斎が編集長を務めるウェブメディア「CULTIBASE」にて、注目の新連載『クリエイティブ組織の要諦』が始まりました。デザイナーやエンジニアなど、クリエイティブ職種の組織作りに取り組んでいる企業にインタビューし、組織デザイン/組織開発のヒントを探る連載企画です。

第1回目は世界的デザインコンサルティングファーム『IDEO』の組織デザインについて、IDEO Tokyo代表のダヴィデ・アニェッリさん、タレント・リードの杉浦絵里さんに伺いました。豪華!是非お読みください!

SNSでも反響が多く、個人的にも興味深かったのは、組織の「多様性」に関する議論です。

杉浦:そもそも、多様性は目的ではありません。「違いに対する認識」が重要なので、「違う考えの人を採用しよう」というアプローチは違うかなと。既存の組織の中でも、全く同じ経験をしてきた人ばかりではないはずです。皆さん考え方も違うでしょうし、一人ひとり異なる経験やバックグラウンドを持っているはず。

大事なのは、お互いを知ること。この人は何に興味関心を持つのか、どのようなキャリアをたどってきたのか、土日は何をしてるのか、家族はどんな人なのか……。その人を知れば知るほど、「だからこういう場面で意見が食い違うんだな」がわかってくると思うんです。

ミナベ:IDEOを「多様性があるから強い組織なんだ」と理解している時点で、そもそも失敗するんですね。それぞれの違いに着目し、対話を通し理解し合うのが大切なんだなと。WhyとHowが逆になってたんだと理解しました。

ダビデ:まさに、多様性をゴールにして人を雇うというのは避けるべきでしょう。やるべきは、等身大の自分を安心してさらけ出したり、自分のパッション、やりたいことをさらけ出しても大丈夫だと思える“余白”を設けることではないでしょうか。

IDEOは「多様性が高いからクリエイティブ」なのではなく、本来的に人は「異なる」ので、その「違い」について深く理解し、それをポジティブに活かしあえる土壌をつくることが大切である、というメッセージだと解釈しました。

How to kill diversity? 多様性は殺せるのか?

このお話を読みながら、ふと2012年頃に、安斎が東大で主催した「多様性」に関する研究会の議論を思い出しました。

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このときのテーマは「多様性を活かす」で、ゲストは『問いのデザイン』の共著者である塩瀬隆之先生でした。(ちょうど安斎と塩瀬先生が色々とコラボし始めた時期ですね..!)

当時から"天邪鬼思考"(『問いのデザイン』第2章参照)で問いを立てていた塩瀬先生は、集まったビジネスパーソンたちに「How to kill diversity ?」と投げかけました。さすがです。

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つまり、多様性を活かそうとする前に、逆に「多様性を殺す」ためのチームや組織の状態、方法論を考えてみて欲しいと。マネージャーがどんな言葉を投げかけると、チームの多様性を打ち消してしまうのか。多様性がゼロのチームとは、どんなチームだろうか。全員が同じ服装で、同じ方向を向いて軍隊のように整列していたら、それは多様性がないチームだろうか。...このディスカッションは、言わずもがな、とても盛り上がりました。

多様性とは、性質の違いではなく、認識である

ここでの学びは、多様性とは、認識であるということです。一人ひとりの仕様や機能の具体的な変数によって「多様であるかどうか」が決まるのではなく(それは大事なことではなく)、人それぞれには無数の変数が潜在していて、集団は潜在的に多様な性質を持っていて当然である。

そのなかで、どの変数を「重要な違い」として認識し、どの変数を「とるに足らない違い」と認識するのか。

そしてその「違いに対する認識」によって、心理的安全性や創造性、パフォーマンスなど、チームにポジティブな影響を及ぼすことができるかどうか。それがむしろ重要である、という議論に着地したことを覚えています。

今回のIDEOの記事を読みながら改めてこのことを思い出し、「多様なチームを作ろう」「多様性のある人材を採用するには?」という問いが筋悪であり、適者開発型のタレントマネジメントの考え方にヒントがありそうだな、と改めて実感した次第です。



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