ワークショップデザインの副産物:場作りを通したキャリア学習
中原淳先生の『働く大人のための「学び」の教科書』を読みました。様々な学習に関する理論が背景にありながらも、ビジネスパーソンにとってわかりやすく実践的にまとめられていて、大変読みやすかったです。
本書のなかでは、大人の「学び」を支える「原理原則」と、学ぶための具体的な「行動」について、以下のようにまとめられていました。
原理原則(学びのOS)
1.背伸び
2.振り返り
3.つながり
行動(学びのアプリケーション)
1.タフな仕事に挑戦
2.本を1トン読む
3.人から教えられて学ぶ
4.越境する
5.フィードバックを取りに行く
6.場をつくる
7.教えてみる
このなかでも「6.場をつくる」ことで学ぶ、というアプローチはとても共感しました。僕の視点で言い換えれば、「ワークショップを実践することで学ぶ」ということですね。
ワークショップの効用というと、企業や地域の課題解決にばかり焦点があたりがちですが、「ワークショップの企画者にとって、そのテーマに関する学びが深まる」「ファシリテーターにとってのキャリア学習の機会になる」ということが、もうひとつの重要な効果だと感じます。
なんでもよいので、もし自分が興味関心のあるトピックがあれば、他の人と一緒に深めたい「問い」を立て、それをテーマにワークショップを企画してみましょう。ワークショップと銘打たなくても、トークイベントでも、研究会でも、なんでもかまいません。参加費は、有料でも、無料でも、どちらでもかまいません。プログラムデザインに自信がなければ、はじめのうちは1〜2時間程度の短い企画でも十分かもしれません。
いずれにせよ、ワークショップを参加型のイベントとして成立させるためには、何らかの話題提供(知見のインプット)があったほうがよいですから、企画者としてテーマに関して「複数の本」を読み込み、それを整理したり持論と結びつけるかたちで話題提供を用意しましょう。これは学びのアプリケーションのうち「2.本を読む」「7.人に教える」の学び方につながります。
可能であれば、自分の話題提供だけでなく、専門性を持ったゲストを招いて、ゲストの視点からも話題提供をしてもらいましょう。これは、企画者にとって「3.教えられて学ぶ」ことにつながります。そして自分とゲストの話題提供のあとに、参加者を巻き込んだディスカッションをしましょう。その場そのものが自分にとっても参加者にとっても「4.越境する」場になるでしょうし、持論に対する「5.フィードバック」の機会にもなります。
例えばですが、以下のように構成すれば、90分程度のワークショップ型のトークイベントの出来上がりです。
企画者から挨拶・テーマと趣旨の説明【5分】
参加者同士の自己紹介【10分】
企画者から話題提供【10分】
ゲストから話題提供【20分】
テーマについてグループディスカッション【30分】
グループから話したことの共有【10分】
企画者とゲストから総括コメント【5分】
本業とは別に、自分自身の興味関心をテーマにしたワークショップを実践することで、この本に書かれている「学びのアプリケーション」はほぼすべて網羅することができてしまいます。人のつながりも充実し、キャリア学習の手段としてとても効率的ですので、是非「自分の学び」のためにもワークショップデザインを活用してみてください!
ミミクリデザインのウェブサイトでは、無料の入門書「ワークショップデザイン・ファシリテーション実践ガイド」をダウンロードしていただけます。よければご覧ください。
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