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書籍『問いのデザイン』を書くときに工夫した3つのことと、発売後に感じた反省点、今後の展望

新年あけましておめでとうございます!本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2020年は書籍『問いのデザイン』を6月に出版し、半年間で3万部を突破し、大きな反響をいただきました。2015年に出版企画が立ち上がって以来、5年間の探究の成果をかたちにしたものだったので、無事に多くの人に届けられて、嬉しく思っています。研究者としても良い節目になりました。

まだご覧になっていない方は、この機会に是非!

2021年は現時点で3冊の出版が決定しているので、引き続き、人と組織の創造性を耕すための有用な知見をアウトプットしていく所存です!🙏

1年のはじめに、2020年の振り返りとして、書籍『問いにデザイン』を書くときに何を意識していたのか、密かに工夫していた点と、発売後に振り返って反省した点について、記録しておきます。

掲げた目標は「1年目1万部」、あわよくば数万部

前提として、この本は5年かけて書いてきたこともあり、当然ですが、なるべく多くの人に読んで欲しいという思いがありました。3ヶ月とか半年で仕上げた本であれば、もうちょっと気軽に世に出せたかもしれませんが、「この本はスベるわけにはいかない..!」という気負いがありました。

前著『ワークショップデザイン論』は、1月には改訂出版が決まり、7年間で累計1.2万部。大学の教科書的なテキストとしては、じわじわと読まれ続けていますが、一冊入魂した『問いのデザイン』は1年目で少なくとも1万部を超えたい。あわよくば、数万部のベストセラーの代表作として成長させたい。そのためには、どうすればいいのか。かなり頭を悩ませて、あれこれ戦略を練っていました。

販売後のプロモーション戦略は、イベントやSNS、Live配信など手を尽しましたが、肝心の書籍がプロダクトとして良いものではなくては売れませんから、本記事ではプロダクトに込めた工夫を3つ振り返って紹介します。

売るための工夫(1)タイトルに"ワークショップ"を入れなかった
売るための工夫(2)「はじめに」に命をかけて、"Why"を練り込んだ
売るための工夫(3)コンテンツフックを多層的に散りばめた

売るための工夫(1)タイトルに"ワークショップ"を入れなかった

第一の工夫は、タイトルに「ワークショップ」を入れなかったことです。僕のそれまでの専門性を表すキーワードは「ワークショップデザイン」でしたからその実績とブランドを活かすのであれば、タイトルのどこかに「ワークショップ」を入れるのが素直な戦略でした。

けれども、ワークショップを正面に掲げすぎてしまうと、一定の売上が見込める一方で、読者層をワークショップ実践者だけに狭めてしまう懸念がありました。

本書の知見は、非日常的な場であるワークショップに限らず、企業・地域・学校の日常のあらゆる問題解決に応用可能な方法論ですから、あえて主題を「問いのデザイン」として、副題にワークショップの本質を言い換えた「創造的対話のファシリテーション」として、内容を表しました。

売るための工夫(2)「はじめに」に命をかけて、"Why"を練り込んだ

自分自身の読書体験を振り返ると、たいてい「はじめに」を読んでいるときに「面白そうだ!」「アタリの予感だ!」「この本はじっくり読もう」といったことを判断していると感じていました。

これはワークショップやイベントも同じですよね。開始5分の主催者のイントロダクションを聞けば、「今回は期待できそうだぞ」とか「はずれのイベントに参加してしまったかもしれない..」という直感が働きます。エキスパートファシリテーターほどイントロに勝負をかけていますが、書籍は「はじめに」が勝負だと考えていました。

そこで、専門性を薄めずに、濃密な知識を数万人の読者に届けているロールモデルとなるビジネス書をいくつかピックアップし、魅力的な「はじめに」に共通する原則を分析しました。

その細かな洞察はここでは内緒にしておきますが笑、共通していた大原則として、書籍の「Why」にあたる部分を、著者の目線からストーリーテリングすることが重要だと仮説を立て、その意識でWhyを凝縮させた「はじめに」を何度も何度も書き直して推敲しました。

なぜ、問いのデザインが重要なのか。問いのデザインは、現代社会のどんな問題を解決するのか。なぜ、それを私たちが語ることができるのか。私たちは何に立ち向かっているのか。

学術書の「はじめに」は、研究的背景や社会的背景などを淡々と述べがちなのですが、Whyを論理的に説得するのではなく、著者が「私」を主語にして、語りかけることを心がけました。

売るための工夫(3)コンテンツフックを多層的に散りばめた

最後の工夫として、読者に「刺さる」可能性のあるコンテンツのフックを、なるべく多様にして、1冊のなかに散りばめたことです。どうしても伝えたい、根幹となる1つのノウハウを丁寧に解説するのではなく、複数のベクトルのフックを用意して、構造的に重ねたことが、本文側に凝らした工夫でした。

具体的には、問いのデザインの方法論を、前半の「課題のデザイン」後半の「プロセスのデザイン」に大別し、前半と後半で大きく内容の性質を変えたことです。

読書のスタイルは多様で、頭から終わりまで全ページを読まない人もたくさんいらっしゃいます。僕自身、最初の2章だけ読んで満足する場合もあれば、後半の実践的なところだけ読んで終わりにする本もあります。

もちろん"課題"と"プロセス"のデザインはつながっているので、できれば通しで読んでいただきたかったのですが、前半の「課題のデザイン」編(〜p.108まで)だけ読んで終えたとしても、多くのビジネスパーソンにとって役立つ内容として仕上げました。

他方で、後半の「プロセスのデザイン」編は、ワークショップやファシリテーションを実践する人に役立つ具体的なノウハウを散りばめました。前著『ワークショップデザイン論』などを読んでいた読者も、満足いただけるようにファシリテーションの手法を具体的に解説しました。

実際にSNSの反応をみると、実際に前半が刺さっていた層と、後半が刺さっていた層に大きく分かれたようです。

また、ひとつひとつのトピックについても、これまでnoteの記事でテストマーケティング済みの内容を散りばめたので、「ファシリテーターの芸風」の話が刺さった人もいれば、「問いの因数分解」が刺さった人もいるはずです。

ちなみに「問いの因数分解」のコンテンツは、noteで2万PVあったので、ここを詳しく解説しているだけでも、書籍の新規読者に対して一定の満足度が担保できるだろう、という安心感もありました。

とにかく様々な角度から"たくさんの手数"を放ったので、これだけ撃てば、何発かはヒットするだろう、という戦略でした。

出版後にいただいたリアクションから浮かび上がった反省点

結果として販売すぐに増刷が決まり、3万部を突破したため、「1年目で1万部」「あわよくば数万部」 という出版前に掲げた目標は無事に達成することができました。

他方で、販売後のSNSに書いていただいていた感想や、実際にいただいたご連絡を見ながら、いくつかの反省点も浮かび上がりました。そのリアクションとは、以下のようなものです。

「"はじめに"を読んだらとても良さそうだったので、じっくり読みたいと思います」
「読了。良書だった。今後も何度も読み直して、実践に落とし込もう」
一度読んだだけでは理解しきれないので、今後も何度も参照する教科書になりそう」
「これで読書会を開催したい or しました」
「実は積読していたので、この年末年始に読み込みたいと思います」
...などなど

これらはすべて「大変嬉しい感想」であり、結果「書籍としてよかったところ」の裏返しでもあり、売るための工夫の副作用的なところがあるのですが、今後の課題として認識している点がいくつかあります。

まず、書籍としての「重さ」を想起されているために、「隙間時間でサッと読んでしまおう」「今すぐ読もう」という動機付けが働きにくかった点です。命をかけた「はじめに」によるイントロダクションには成功したものの、「時間ができたときに、腰を据えて読もう」と、対峙する覚悟を必要とする書籍になっていた点です。

また、前編と後編のベクトルの違いや、多様なコンテンツフックを散りばめた副作用で「すべてのコンテンツは咀嚼しきれない」という消化不良感を与えてしまっていたこと。※これは僕の学習観も影響していて、「本は書かれている100%のことを読み切る必要はないし、頑張っても読みきれない」「自分が吸収できたことだけが、読書の価値」だと思っているので、食べやすいシンプルな定食より、知のビュッフェを提供したいという考え方が影響しています(ちなみに、CULTIBASEもそういう考えで運営しています)。

そして最後に、実践のハードルの高さです。"組織の問題の本質を見抜いて、解くべき課題を設定し、ワークショップ型プロジェクトを設計して、対話をファシリテートしましょう"...という本書の中心的な提案は、「よし、明日やってみるか!」とはならないですよねw。

実際には明日から採用できるノウハウも沢山書いているのですが、全体として「これはとても重要な方法だけど、実践するにはいろいろ準備が必要だぞ..!」と思わせてしまった点が、大きな反省点です。

実践しやすい"初手"からの二段構え戦略

そんな反省もあり、出版後に独自の研究を重ねたのですが笑、10万部以上読まれている実務的なビジネス書に共通している点として、「実践のハードルの低さ」と「ノウハウの奥深さ」が両立していることがあると思っています。(実践のハードルが低くて、ノウハウも表層的であれば、それはただの薄い本ですね)

本の全体像を読み込まなくても、すぐに実践可能なファーストステップがまず示されていて、第1〜2章くらいまで読むだけでも、すぐに仕事に取り入れられて、現場で変化を生み出せる「初手」が示されている。

手軽な「初手」を実践するだけでも、一定の手応えを感じながら、現場で「プチ成果」を出すこととができる。けれども、それだけでは本質的な課題解決にはつながらないので、現場で「次の壁」が見えてくる。しかしその壁も著者からすれば「あるある」のパターンで、書籍全体のノウハウの奥深さを体得することで、乗り越えることができるように、きちんと手引きがなされている。

そんな風に、良い実践書とは、「実践のハードルの低さ」と「ノウハウの奥深さ」を両立させ、読者を「実践」「気づき」「試行錯誤」へと導く、二段構え、三段構えの構成になっている場合が多いと思うのです。

書籍『問いのデザイン』には、もちろんすぐに実践できるリフレーミングの10パターンとか、ファシリテーションのプロセスデザインのテクニックも掲載していたつもりでしたが、前編で提案している初手が「まずは問題の本質を見抜き、適切な課題を設定しよう!」だったので、初手としてはややハードルがあがっていたのだと思います。

結果として「ノウハウの全体像を理解しないと、実践に落とし込みにくい」という読後感につながり、「何度も読もう」「じっくり読み込もう」「読書会を開催しよう」というアクションを誘発していたのではないか、というのが現在の反省をこめた仮説です。

反省点を踏まえた、今後の展望

5年分の探究の成果を込めたので、消化不良になって当たり前といえば当たり前なのですが、これは前述した「売れるかどうか不安」だったために「とにかくたくさんの手数を撃って、当たることを祈る戦術」だったことの、弊害だったのだと思います。

繰り返しになりますが、上記の反省点は、書籍としての成功でもあります。研究者としては「何度も読み返そう」と思っていただける著作を出せたことは、これほど冥利に尽きることはありません。

他方で、現場に実践知を届ける書き手としては、「読みやすくて、すぐに実践しやすい」書籍にも、2021年はトライしていきたいと思っています!

理論がしっかりしたタフな書籍と、手軽に実践しやすい実務書の「両利き」を目指すことを、今年の目標としたいと思います。ぜひご期待ください。

CULTIBASEの運営にもよりいっそう力を入れていく所存です。年始には3連続で無料で視聴可能なYoutube Liveを配信予定なので、ぜひチェックしてみてください!CULTIBASEをチャンネル登録をして、リマインダ設定していただくのがおすすめです。

【Live配信①】2021年に注目したい、人とチームの創造性を高めるための5つのキーワード
2021年1月2日(土)11:00-11:30
https://www.youtube.com/watch?v=f7_0aXTYPZM

【Live配信②】心理的安全性とリーダーシップをめぐる6つの問い
2021年1月3日(日)11:00-12:00
https://www.youtube.com/watch?v=I39aTEJGkHM

【Live配信③】『コ・デザイン —デザインすることをみんなの手に』出版記念ライブ 〜わたしたちにとって「デザインすること」とは?〜
2021年1月8日(金)20:00-21:00
https://www.youtube.com/watch?v=ZvHtqefn5r0

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株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO/CULTIBASE編集長/東京大学大学院情報学環特任助教/人と組織の創造性を高める方法論について研究しています/新刊『問いのデザイン』3万部突破 https://cultibase.jp/