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大学のゼミの春学期のゼミ論文

<序論>

 本研究は、「オンラインにおける全国一斉、初期日本語教育」についてである。テーマとして、外国人の子どもに対する初期日本語教育の全国一斉オンライン授業の提言である。さらに、サブテーマとして、初等教育における多文化共生の方法についてとする。これらを提言するにあったって、「外国人児童・生徒に対する多文化共生の必要性について」「日本における初等教育の外国にルーツのある子供に対する言語教育の必要性について」「 オンラインにおける全国一斉初期日本語指導について」を3章に分けて述べる。これらを述べるにあたって、第1章では、多文化共生の必要性を考えるにあたって、日本の課題点は多くあること。しかし日本が今後グローバル化するにあたって多文化共生が必要不可欠であることについて述べる。そして第2章では、初期日本語教育の短期的・長期的ともに見る必要性について述べる。さらに、そのために行うべき教育の課題点について述べる。最後に第3章では、集住地域と散在地域の課題点のオンライン教育によって可能となる解決策の提示をする。一方で、課題点もあるがその課題点に対してどこに実現可能性を見出しているかについて述べる。第4章では、 第5章では、

<本論>

第1章 外国人児童・生徒に対する多文化共生の必要性について

現在の日本において多文化共生は必要不可欠であると考える。この根拠として日本における少子高齢化による外国人労働者の必要性が挙げられる。現在日本人口は、2008年をピークに徐々に減少し、2100年には7496万人まで減少すると推定されている。人口減少が続くことにより、生産年齢人口や労働力減少につながり、経済規模の縮小は避けられないとされている。そこで国が目をつけたのが外国人労働者である。外国人労働者の増加は、日本のグローバル化を促進することに繋がる。これらは国際結婚の増加や移民の増加にも繋がる。移民の増加に伴い、多文化共生は必要となってくる。現に、現在の在留外国人の人数は令和3年6月末の在留外国人数は,282万3,565人とされている。この数字は、前年末に比べて6万3,551人の減少ではあるものの、2022年10月に外国人の入国制限が緩和される等、今後は回復に向かう公算が大きいとされている。また、23年4月中旬に外国人労働力のあり方を議論する政府の有識者会議は、技能実習制度の廃止を求める提言の思案をまとめた。現在は、原則として認めていない転職を一定度認める仕組みにするそうだ。新制度では、政府は労働力確保と人材育成の両立させることを検討すると言われている。この新制度の運用は24年以降になるとされている。さらに同月下旬には、熟練した外国人材が日本で長く働く道を広げようと、長期就労は可能な業種を6月にも現在の3分野から全12分野に拡大する方向で関係省庁が調整に入ったとする。運用開始は、24年の5月ごろとされている。また6月初旬には岸田文雄首相は閣議会議で「日本の深刻な人手不足を踏まえ、魅力ある働き先として選ばれる国になるようにすることが重要だ」と述べている。政府の有識者会議では、技能実習の廃止を発展的に解消する方向で「人材確保と人材育成を目的とした新たな制度を創設する」と記載されている。このような現状の中で、多文化共生は、社会的に少数派とされる移民の人々の基本的人権を尊重するために今後必要となってくると考えられる。また、多文化共生に関しては子供に対しても重要になってくる。理由として、国際結婚や外国人労働者の増加により、文部科学省による2020年の調査では、学齢相当の外国人の子どもの住民基本台帳上の人数は、小学生相当8万7,033人、中学生相当3万6,797人の合計12万3,830人とされており、子供の増加も見てとれる。これらのことから、大人に対しても子供に対しても多文化共生が必要な人数は存在しているのではないかと考えられる。一方で、多文化共生は日本において難しいとされている。例として、米勢の2006年の研究によると国際理解教育は、英語教育の強化や親善交流イベントによる外国理解教育が主流であり、多文化共生教育の視点が希薄であると言われている。また、別府の1996年の研究によると、日本は単一民族ではないにもかかわらず、単一民族のように考えてしまう思考があるため、思考が閉鎖的になる傾向があるとされている。また遠藤の2013年の研究によると、日本は同調圧力が強く日本社会は摩擦が激しいとされている。これらのことから、日本社会において多文化共生を行うことには課題点も存在することがわかる。しかし、令和2年9月10日に自治行政局国際室の発表によると、「地域における多文化共生推進プラン」の改訂として①多様性と包摂性のある社会の実現による「新たな日常」の構築②外国人住民による地域の活性化やグローバル化への貢献③地域社会への外国人住民の積極的な参画と多様な担い手の確保④受け入れ環境の整備による都市部に集中しない形での外国人人材の受け入れの実現などが考えられている。また文部科学省においても、「初等中等教育段階において、全ての子供達が、異文化や異なる文化を持つ人々を受容し、共生することのできる態度・能力」を育てることが重要視されており、今後の日本のグローバル化、さらには日本経済の回復には必要不可欠なものであるとされている。これら2点のことから多文化共生の必要性については確認することができたのではないかと考える。

 第2章 日本における外国にルーツのある子供に対する言語教育の必要性について
 日本語教育の必要性として、文部科学省によると、日本語指導が必要な児童生徒は全国に約5万8千人(2021年度)いて、10年弱で約1.75倍に増加している現状がある。この状況から子供にも多文化共生が必要なことが言える。また、日本語が理解できないことによって学業挫折を起こすことが先行研究により言われていることから、日本語指導の必要性を言うことができる。外国人の子供に対する初期日本語教育を受けさせる短期的な目的として、子供の学業挫折をなくし非行や犯罪を減少させることが可能となる。これは、労働者の家庭を安定させることに繋がり、移民に対するイメージの改善を行うことができるのではないだろうか。さらに、このことによって移民の受け入れがより行いやすくなり、日本の景気回復につながるのではないかと考える。また、長期的な目的として、グローバル人材の創出につながり、日本のグローバル化にもつながる。これらの目的を達成するためにも、外国人の子供に初期日本語教育を行うことは必要であると考えらえる。最後に、現在の日本語教育についての課題点として取り出し授業の問題点をあげたい。これらの理由について以下詳しく述べる。
 まず初めに、短期的理由として述べた、「子供の学業挫折をなくし非行や犯罪を減少させることが可能となる」という考えについてだが、そもそも現在外国人労働者(特に単純労働)の子供は、宮島の2010の研究によると、家族の低い不安定な収入から子供の教育に配慮することが困難な出稼ぎ型スタイルや家庭内暴力や別居、離婚が引き起こす家族統合の欠如などが主な要因となり、学業挫折を起こし、社会的こりつを引き起こしているという現状がある。そして、この現状は子供の貧困に繋がり、少年非行や犯罪を起こす要因につながっている。現に、法務省の報告によると日本語能力に問題があることに加え、外国人であることからいじめに遭い、学校に通学できず、非行に走ってしまうことがわかっているほか、不良集団についての報告では、日本社会への不適応が非行に走らせる原因となっているとされている。さらに、少年非行と知能指数の関係について調べた報告書によると、調査対象者と日本の入院者との間で知能指数について有意差が見られたほか、知能指数が90未満である者の構成費が外国人少年の方が高い数値が現れているという報告がある。さらに、宮口(2019)より、非行少年の特徴として、①「認知機能の弱さ」(見たり聞いたり想像する力が弱い)②「感情統制の弱さ」(感情をコントロールするのが苦手。すぐにキレる)③「融通の効かなさ」(なんでも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い)④「不適切な自己評価」(自分の問題点がわからない。自信がありすぎる、もしくはなさすぎる)⑤「対人スキルの乏しさ」(人とのコミュニケーションが苦手)プラスアルファとして、「身体的不器用さ」(力加減ができない、身体の使い方が不器用)と言うことが挙げられている。このことは、認知機能の弱さは言語的な壁が課題としてあるのではないかと考えられる。次に、感情の統制や不適切な自己評価、対人スキルの乏しさは、母語や母文化の喪失によるアイデンティティの喪失によるものではないかと考えることができる。この課題点によって引き起こされた、事例として2015年に川崎市の多摩川河川敷で中学1年生の上村亮太さんが外国にルーツを持つ少年三人に殺害された事件が起こるなどが挙げられる。これらのことから、子供の学業挫折は日本の治安を悪化させるだけではなく、外国人労働者への犯罪のイメージの増幅へとつながる可能性が挙げられる。現に来日外国人のイメージについての調査では、「あなたは、日本で来日外国人の犯罪が増えていると思いますか?」という問いに対して、約80%が増えていると思うと回答している現状がある。そこでこれらのサイクルを変える必要性があると考えられる。また、長期的な目標として挙げられている、「グローバル人材の創出につながり、日本のグローバル化にもつながる」ということに関して初期日本語教育が必要な理由として、先ほど初めにも述べた通り、文部科学省によると、日本語指導が必要な児童生徒は全国に約5万8千人(2021年度)いて、10年弱で約1.75倍に増加している現状がある。さらに鳥海の2021年の研究によると、公立小中学校に通学する外国人児童生徒の5.37%が特別支援学級に在籍している現状があるとされているこれは、日本人全児童生徒数の特別支援学級の在籍率は2.54%に比べて約2倍以上の数値であることがわかる。これらの原因を鳥海は「日本語が理解できないため、知能指数の結果が低く、知的障害と判断された可能性がある」としている。つまり、外国人児童生徒の言葉の問題や日本文化に関する知識の不足、教育カリキュラムの違い、母語における教育の状況、保護者の認識等様々な要因を解決する必要性があると考えられる。また、長期的目的であるグローバル人材を育成するためには、ダブルリミテッドの児童を減少させる必要性があると考える。そもそもダブルリミテッドとは、中島の2007の研究によると、「一つ以上の言語に触れて育ち、言語レベルがどの言語も年齢相応に達していない言語形成期の児童を意味する」とされている。これらの子供に対して、小野の研究によると日本では初期日本語指導が行われている。しかし、この行為とても短期的なものである。しかし、この教育は、児童のアイデンティティや人格形成、生活に大きく関わるものであり、支援する場合長期的な教育的介入が必要であるとしている。最後に、日本語教育の現状について述べる。現在日本では、取り出し授業と入り込み授業の2種類が使用されている。取り出し授業とは学年相当の学習言語が不足し、学習活動への参加に支障が生じている生徒に対して、児童生徒の在籍学級以外の別室で個別または、少人数で行う授業のことである。次に、入り込み授業とは在籍学級内に日本語指導担当教員や支援員が入り児童のサポートを行う授業体制のことである。先ほどからも述べている通り、日本では、取り出し授業が基本として日本語初期日本語指導では行われている。しかし、これには課題点が多く存在する。まず初めに、1985年にイギリス政府の出した報告書において、海外の取り出し授業は英語取得と教科学習においてマイナスに作用すると言われている。次に、バトラー後藤の2009年の研究によると、ESL教育において取り出し授業を行っても結局普通の授業に戻った際にはついていくことができないということが言われている。これらのことから、基本的に普通の授業を支援員と受ける方法が有効であることがわかった。しかし、基礎的なことを学ためには、取り出し授業は日本語初期指導では必要ではないかと考える。これらのことは他にも、現在日本ではカミンズの理論が提唱されている中で、「CF,BICS」と「DLS」に関する外国人の子供の取り出し授業の重要性について以下詳しく述べる。現在日本では言語能力の捉え方として、カミンズの初期理論を利用していることが多い。この初期理論とは、一つは、「basic interpersonal communicative skills(BICS)」で、もう一つは、「cognitive/academic language proficiency (CALP)」である(Cumminsl980)。これらの「BICS」は対人関係のける基本的なコミュニケーションスキルで、「CALP」は教科学習に必要な認知・教科学習言語能力であり、メタ言語として関連する力である(cummins1980,中島2011)。これらを日本では「生活言語能力」と「学習言語能力」と説明することが多い。しかし今回はカミンズの2006年の研究でで、「BICS」と「CALP」を整理しなおした3つの側面「conversational fluency(CF) : 会話の流暢度」または「BICS」、 「discrete language Skills(DLS) :弁別的言語能力」、 「academic language proficiency(ALP) :学習言語能力」を使用する。さらに、この中でも「CF,BICS」と「DLS」に視点を向けて考える。これらの視点に目を向ける際に重要になってくるのが、バトラー(2009)で提案されている「第二言語の支援の必要な児童・生徒の教育を(1)学校だけに抱えさせない、(2)第二言語学習児童・生徒担当の教員だけに抱えさせない、(3)第二言語学習児童・生徒だけを対象とした支援にとどめない」ということである。このバトラーの(3)に関して櫻井の2008年の研究により「対象の外国人児童の学習態度が変化しただけはなく、日本児童との相互関係にも肯定的な変化が現れた」とされている。これらのことから、多文化共生を行うためにも、外国人の子供が日本語学習をするのにおいても、入り込み授業は必要になってくると考える。しかしその前段階として、外国人の子供が入り込み授業についていけるようにするためには取り出し授業において日本語の基礎(つまり、「CF,BICS」と「DLS」)に関して理解できる状況を作る必要性があることが言われている。その際にバトラー後藤の2009年の研究ににおいて書かれているアメリカで現在使用されている「ニューカマー・プログラム」は良い方法であると考える。このプログラムは、バトラー(2009)によると、「基本的な英語や、主要教科で遅れをとってしまっている内容を補ったり、アメリカの学校に慣れるための指導を行なったりする」とされている。これらの教育は、赤 堀 (1990)によるとESL教育(English as a second language)とも言われており、アメリカ、カナダなど、他民族国会において第二言語としてESL教育はとても豊富であるとされている。その中で、ESL教育の目的・内容・課題として挙げられることは以下の4つに分類することができる。初めに、ESL教育の目的は異文化似合って子供たちが、自己の価値を認めることができるように援助すること。次に、Whole Languageの概念に基づいてる(ホール・ランゲージとは、子供が意味に集中するべきだと強調する読み書き能力育成に関する考え方のこと)。次に、ESL教育の指導方法が単に言語指導にと留まらず適応指導も含み、精神的ストレスを解放するような指導が行われている。最後に課題として、ESL教育実施にあたって、地域住民の経済的負担が大きいことが挙げられていた。これらのことがわかった上で、カナダとアメリカのESL教育の目的について述べる。カナダにおけるESL教育の目的は「単に言語獲得をすることにとどまらず、自己の存在価値が自覚できるように、学校・地域・社会が他の文化に尊重するような教育を実施すること」である。これは、各個人が持っている民族文化に対してランクづけをせず、個人の尊重や暴動の原則から発送されていて、教育の機会平等を保障しようという考えから起きている。次にアメリカのESL教育の目的としては、「外国人が教科を学習するための基礎的言語の習得という意味と同等に、異文化の中で学校生活をより快適(自分でできる・独立する・自立する)にする表現手法の習得という意味を持っている。これは、個人の存在価値を互いに尊重すること、そのために相互理解できる手段として言語教育が行われている。しかしESL教育の問題点として、質や量が不十分であったり、予算不足、児童生徒の教育的背景が多様化して対応できないということ、また高いレベルの英語力を要求している人の対応ができないことなどが挙げられている。この論文から日本はアメリカ式に近いことが言える。この教育を日本でも解決して取り入れようとした際に、課題となってくるのが、小池・古川(2021)に記されている、「『学年相当の学習言語』とは何かに関する具体的な説明や定義がなされていない」こと。また、李の2020年の研究によると、小学校における多文化共生教育の現状として、外国にルーツを持つ子供が多く存在する地域においては日本語教室を拠点とした多文化共生教育が学校全体の取り組みとして実施されている現状がある。しかし、児童の少ない散在地域では手厚い教育支援は期待できないとしている。これらの現状に対する解決策について第3章にて述べていく。これらのことから、初期日本語教育の必要性また、母国語教育の必要性についていうことができるのではないかと考える。

第3章 オンラインにおける全国一斉初期日本語指導について
  私が今回の研究において提言したいこととして、「オンラインにおける全国一斉初期日本語指導」がある。このことについて、現状として外国人の子供がそもそも少ない県である山形県と、外国人の子供が多いとされている大阪府について文献調査を行った。そこから見えてきた課題点と、取り組みについて述べる。また、オンライン教育を全国的に行うことによって最終的には母国語教育も可能になるのではないかと考える。このように考える理由などについてメリットと課題点を踏まえつつ書いた上で、実現可能性についても述べる。まず初めに山形県の現状として、土屋ら(2014)によると、山形県は、外国人散在地域であると考えられている。この中で、子供に対する教育支援は、支援者と学校教員が行っており、子供がいなくなると取り組みが中断されることが問題として上がっている。これらの原因として、子供に教育支援が行政の施策になりにくく、予算の確保が難しいことが挙げられる。一方で大阪府では、大阪府は平成21年1月から大阪府の教育力向上プランに基づき様々な活動がおこなわれている。その中でも特に外国人の子供が非常に多い地域の事例として、東大阪市の多文化共生教育、八尾市のSALAという学校の宿題の補助などを行う取り組み、また大阪市の検討中の取り組みとして、転入前に初期日本語教室の開催などがある。しかし、大阪府の中でも外国人の子供が少ない地域では、制度が整っていない現状があることがわかった。一例として、河内長野市を挙げる。今回河内長野市にインタビュー調査を行う中で、河内長野市国際交流協会の日本語サロンでは、日本語指導クラスはあるもののボランティアで成り立っていると言われていた。さらに、主な対象は技能実習生であり、子どもには基本的に対応していないという。これらのことからわかる課題点として、地方自治体によって支援の方法は大きく異なるということである。これは、第2章でも述べた通り、李の2020年の研究によると、小学校における多文化共生教育の現状として、外国にルーツを持つ子供が多く存在する地域においては日本語教室を拠点とした多文化共生教育が学校全体の取り組みとして実施されている現状があることが言われている。しかし、この現状に対して、大阪府は2021年から「大阪府オンライン日本語指導」と言う取り組みを始めた。これは、日本語指導が必要な生徒は増加している現状があるにも関わらず、学校によっては外国人の子供が少なく、日本語教育がうまく執り行えていな現状をオンライン教育に変換することによって、その子供たちに対しても日本語教育を同質に行うと言うものである。具体的には、初期日本語教育においてオンライによって言語別に取り出し授業を行うというものである。大阪府では、これにより、地域間の差を無くなると予想されている。この取り組みは、同時に授業を他の学校の母国語を同じとする子供と授業を受けることができるため、これらの取り組みは、バトラー後藤の2009年の研究においてにおいて、バイリンガル教育の文献で述べられている「母語で十分な学習言語を習得することが、第二言語での学習言語習得に役立つ」ということにも寄与する。これらのことから、この取り組みは、他の都道府県に関しても行う必要性があるのではないだろうか。これらを行うことで現在は初期日本語指導に焦点が絞られているが、最終的には母国語教育にも応用をすることができるのではないかと考える。この提案のメリットとして、教員が全国的に情報交換を行えるということ。次に、地域に関係なく、同等の質を受けられると言うこと。さらに、母語を同じとする子供とよりつながることができると言うこと。最後に現在の日本語教育の方法よりもコストダウンを行うことができると言うことである。一方で課題点として、オンライン教育は様々な省庁が連携をとる必要性があると考えられるため、縦割り制度が執り行われている日本では弊害が多いのではないかと言うことが考えられる。また、移民労働者の子どもの言語教育のサポートをすることは、外国人住民の識字率を向上させることに繋がり、在留資格・難民申請の要件に今後なる可能性が考えられます。そして最後に、オンライン教育を行うにあたって、zoomなどの海外のツールを利用することによる、コストがある一程度かかることが予想されるため、今後、日本のツールを作るなどの検討が必要であると考えられる。また、今後入り込み授業について考えるようになった際に、外国人の子供の集住地域と散在地域で加配教員の人数などによって課題点が出てくる可能性が考えられる。しかし、まずは初期日本語教育について考えることが先決である。さらに、将来のグローバル人材の育成にかける費用は今後の日本の経済の発展に寄与するため必要経費なのではないかと考える。最後に、実現可能性についてだが、端末利用活用状況等として、全国の公立の小学校等の96.1%が「全学年」または「一部の学年」で端末の利用を開始していることが文部科学省の調べによりわかっている。また、大阪府において、「GIGAスクール構想の実現」により、大阪府内の小・中学校に児童生徒向けの1人1台タブレットPC端末等が整備され、授業等の教育活動に活用されている現状がある。これらの現状からオンラインによる日本語教育は可能であることが考えられる。

第4章 言語形成について

 言語形成について、中島によると、2歳から8歳にかけて言葉が形成され、4,5歳から14,15歳までに読み書きが定着する(この言葉が形成される特に2~8歳(中でも幼稚園を卒園する)までは社会状況の影響を甚大に受けることが言われている。このことから、高度達成方バイリンガル(2言語とも学齢相応のレベルに達していることである。)になるためには、聞いたり、見たりする比率が母語と新たな言語が同じようになる必要性がある。この言語形成について日本の課題点として、日本は日本語を強制することがおく、母語が確立されていない年少者は確実にダブルリミテッドになる確率が高くなってしまうという。そのため、パーシャル・イマージョン(一部の科目または時間を言語学習に当て、そのほかのクラスは母語で受ける)の形態が望ましいとされている。しかし、これを行うためには国、地域、学校を挙げて態勢を作っていく必要性があるとも述べられている。このことから、母語の時間を多く取ることは難しいにしても、母語を話す機会は創出する必要性があると私は考える。次に、カンガス(2008)によると、母語は取得する時期、習得順序、熟達度、使用頻度、内的/外的アイデンティティの4つの側面から定義することができ、これらがバランスが取れないと、内外的アイデンティティにも大きな影響を及ぼしてしまうという。また中島(2001)によると、言語形成期前期(0〜9歳)、言語形成期(9〜13歳)この時期が重要な時期である。この時期に複雑な環境下にいる子供は、極めてダブルリミテッドになる可能性が高いと言われている。つまり、小野によると就学前に文字認識や読み書きの基礎母語ができていれば他言語へのリテラシーの移行がスムーズに行われると考えられているという。一方でアイデンティティの形成について高橋(2009)によると、多言語話者児童のアイデンティティの形成過程は単純ではなく、自己のルーツの否定、アイデンティティクライシス、葛藤などの課題が生じるため、母国語教育が欠かせないという。この母語教育を大切にする過程について、次章では、大阪府を事例に考えていく。

第5章実現可能性についての大阪府を事例に考察

<結び>
 
オンラインにおける全国一斉、初期日本語指導について、第1章から3章まで述べてきた。これらについて、まず第1章では、日本の生産年齢人口の減少から見て外国人労働者は必要であり、日本では多文化共生が今後必要不可欠であることがわかった。しかし、同調圧力の強い日本において政府は対応を行いつつあることもわかっていることからも、多文化共生は必要不可欠であることがわかった。次に第2章では、言語教育は子供のアイデンティティや人格の形成に必要不可欠な要素であり、長期的にサポートする必要性がある。その足がかりとして、まずは初期日本語教育が必要なのではないかと考えられる。最後に第3章では、第2章で述べた初期日本語指導を全国的に平等に行うためには、新型コロナウイルスによって普及したオンライン教育を活用し、全国一斉オンライ教育を行うことが良いのではないかということを述べた。さらに、このことに関しては、先行事例として大阪府の「大阪府オンライン教育」が存在すること、またGIGAスクール構想やタブレット端末の配布状況からも実現可能性が見えた。これらのことから、私は「オンラインにおける全国一斉、初期日本語指導」について提言する。今後の課題と展望として、日本における多文化共生の方法について検討すること。研究対象の学年の再検討。ダブルリミテッドの子供のアイデンティティの形成についての検証。日本でこの提言を実現しようとした際の省庁間の課題の解決方法の検討。海外の特にESL教育についての研究をもとにした日本のJSL教育の課題点。最後に人口移動について本当に外国人労働者が今後も増加することが見込まれるのかについての検討が必要であると考えている。

(文字数:字)

参考文献
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