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ピンク=女性?
建築の仕事をしていると、お施主さんでもよく
ここは女性用のお手洗いだからとか、
女性用のフロアだからとかいって、
壁にピンクを使いたがることがある。
うちの事務所の人間も同じで、
女子更衣室や女性エリアなどの壁に
アクセントカラーといって一面ピンクにしたがる。
彼らはそれが女性のためだと思っている。
「かわいい」「女性らしい」と思ってくれるから
だそうだ。あるいは、「女性だから」という理由で
空間の一部をイメージで作ってしまっている。
たしかに女性を表現する手法として、
ピンクや赤といった色で一目でわかるデザインを
することがある。
ただそれは一目でわかる目的で
取り入れているだけであって、必ずしも女性らしいかと言われれば頷きがたいのである。
ジェンダーについて深く考えるべき時代となっているが、未だ己のイメージや価値観で他人を定義付けてしまう人間が奇しくも業界内にも存在するのだ。
もちろん、ピンクを好む女性はたくさんいる。
むしろ、集めている方もたくさんいる。
しかしそれは、モノやプロダクトなどの小さな要素を自分で選択して、収集している場合がほとんどである。
なにもこちらからピンクを提供しなくても良いのだ。
好きな色と言うのは他人に理解されるように
視覚化、数値化することは難しい。
一般人はマンセル値など使うはずもなく、
「こんな感じの色」という曖昧な言葉で表現する。
その人の好みの色を、たかだか数ヶ月の付き合いの人間(僕ら)が理解出来るはずもないのだ。
だから僕らは下地のようなキャンバスのようなものを提供するだけで良いのではないかと思うのだ。
そこで自ら、その人らしさや、
好きなもの(好きだとこちらが思い込んでいるもの)を、貼り付けてしまうのは僕たちのエゴであり、
直接的にいえば"お節介"なのだ。
今の時代、アクセントカラーでピンクの壁紙を貼った
アパートをどれくらいの女性が決め手に契約するだろうか?
その人らしい空間を表現する「色」は、
僕らが与えるものではなく、
その人自身が集めていくものであるのだ。
だからデザインする側は"お節介"という言葉に
1番怯えてしまわなければならないのだ。
しかしここでひとつ危惧が生じる。
それは僕らの作るデザインが「無個性」へと向かってしまうかもしれないということである。
その人のためにデザインしたはずが、
角の取れすぎた「無個性」になってしまっては、
僕たちの立場はどこへ消えてしまうのだろうか。
しかし「無個性」というテーマで話し出すと
文が止まらなくなるのでそれはまた別の機会に。
個性を表現する為の無個性へと向かわないように
深く深くデザインを考えていく。
なんて難しくて楽しい仕事なんだろうか。
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