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ゼロから始める伊賀の米づくり〜新米兼業農家の記録〜

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2020年1月、三重県伊賀市の父の実家の田を継ぐことになった男の米作り1年目からの記録です。京都⇄伊賀の二拠点生活を送っている筆者が、家族の思い、地域の信頼に応えるべく、自然のま…
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#田んぼ

ゼロから始める伊賀の米づくり58:ドローン空撮で眺める稲刈りの風景

2024年9月の稲刈りは、先の台風10号の影響によって予定が後ろ倒しとなり、収穫のできない期間が続きました。 前回はその中でもやれることはやろうと、近年、除草剤にも耐性をつけてきている雑草の除草作業と雑草の品種の特定などを行い、記録にまとめました。 今回は、ようやく収穫を始めることができたため、秋晴れの田んぼの様子を記録として収めたものを時系列順に紹介していければと思います。 また、今回は父の友人が趣味のドローンで収穫時には動画や写真撮影を行なってくれたため、その一部も

ゼロから始める伊賀の米づくり56:稲刈り前。田んぼに侵入する野草たちとの戦い

2020年1月に父から実家の米作りを継ぎ、5年目のお盆過ぎ。いよいよ、収穫の時期が近づいてきました。 田んぼの稲穂が黄色く染まり始めています。 関東地方に影響を及ぼした台風の影響もあってか、雲が次々と形を変えながら流れていく様子も伺えます。 稲穂の様子がどうなっているのか近くまで降りて見に行ってみると、立派な穂がついている様子も見えました。 稲刈りの予定は8月末〜9月初旬ですが、ここからもう少し葉も黄色く染まり、まさしく黄金色と言えるような色合いとなる予定です。 と

ゼロから始める伊賀の米づくり55:例年より遅い梅雨入りと、中干し前の田んぼライダー

2020年1月、父から実家の米作りを継いで5年目の初夏。田植え後に行う中干しのシーズンがやってきました。 家族経営の兼業米農家という形式上、口伝や暗黙知で伝えられてきた業務フローやプロセス。それらをきちんと見える化し、共有知として遺していこうと始めた記録も、今回で55回目です。 前回は、5月連休中に行なった田植えの際の気づきについてまとめました。 今回は、田植え作業の際に気づいたことについてまとめたいと思います。 中干しとは?「中干し」は、一度、田んぼの水を抜くことで

ゼロから始める伊賀の米づくり54:これまでの経験や積み重ねを活かし、5年目の田植えに臨む

2020年1月、父から実家の米作りを継いで5年目の田植えシーズンがやってきました。 家族経営の兼業米農家という形式上、口伝や暗黙知で伝えられてきた業務フローやプロセス。それらをきちんと見える化し、共有知として遺していこうと始めた記録も、今回で54回目です。 前回は、田んぼに水を引き込み、代掻き作業を行った際の気づきについてまとめました。 今回は、田植え作業の際に気づいたことについてまとめたいと思います。 昨年の教訓から今回に活かしたこと苗の植付本数の設定 田植えの際

ゼロから始める伊賀の米づくり52:雨の多い春の田起こしで土質の違いに触れる

2020年1月、父から実家の米作りを継いで5年目の春がやってきました。 家族経営の兼業米農家という形式上、口伝や暗黙知で伝えられてきた業務フローやプロセス。それらをきちんと見える化し、共有知として遺していこうと始めた記録も、今回で52回目です。 今回は、田植え前に土を耕すプロセスと、その際に気づいた田んぼの土質の違いについての気づきをまとめておこうと思います。 耕しながら土質を見る例年、3月には春の田起こしを行っていますが、今年は雨が多く、なかなかチャンスが巡ってきませ

ゼロから始める伊賀の米づくり51:動物たちの痕跡を追って

2020年1月、父から実家の米作りを継いで5年目の春がやってきました。 家族経営の兼業米農家という形式上、口伝や暗黙知で伝えられてきた業務フローやプロセス。それらをきちんと見える化し、共有知として遺していこうと始めた記録も、51回目となりました。 今回は、田んぼ周辺によく現れる野生動物たちの痕跡が目立ってきたので、それらについてまとめていこうと思います。 小動物の群れの足跡まず、私の田んぼは氏神様を祀る神社の前に位置しています。 向かって右側の一面と、向かって左側の一

ゼロから始める伊賀の米づくり48:豊作の予感!?出穂を確認!

私は現在、大阪府と三重県で二拠点生活を営みつつ、実家の田んぼで米づくりをしている兼業農家として暮らしています。 3年前、父の他界をきっかけに家業として継続していた実家の米作りを継ぐこととなり、文字通りゼロから米づくりについて学び、実践することとなりました。 幼い頃から家の手伝いをしていた……ということはあったものの、なんとなく流れがわかる程度で、詳細は作業工程は把握しておらず、父が亡き後は父の友人や仕事仲間の皆さんに教えてもらう形で、さながらスパルタOJTで身につけること

ゼロから始める伊賀の米づくり46:梅雨の晴れ間の溝切りライダー

父から継いで4年目の田植えを先月、無事に終えることができました。 父が健在の頃は父中心の取り組みであった我が家の兼業米農家としての取り組みですが、私の代に代替わりして以降は、母や弟などと情報共有を行い、役割の明確化と必要な準備・アクションをそれぞれが連携し、担当しながら行えるようになってきました。 そのような形で、毎年5月連休に田植えを終えた後に行うちょっとした作業として挙がるのが『溝切り』です。 溝切りとは?溝切りは例年、田んぼの『中干し』を行う6月中旬〜後半までに行

ゼロから始める伊賀の米づくり45:父から継いで4年目の田植えを終えて

3年前、父から継いで始めた実家の米づくりもいよいよ4年目の田植えの日になりました。 先日、代掻きを行なって土と水を馴染ませ、平らにした田んぼは以下のようになっています。 天気も申し分なく、早朝から準備に取り掛かり、田植えを実施することにしました。 田植えの当日の作業まずは、JAで育ててくれている苗を取りに向かいます。 JAの育苗センターでは大きなビニールハウスで苗を育てており、これらを受け取って田植えを行います。 農家の中には自前の苗を育てて田植えを行う家もあります

ゼロから始める伊賀の米づくり44:代掻きを行うトラクターの運転席から観えるもの

いよいよ田植えシーズンが始まり、前回は田んぼに水を引き始めるところまでのプロセスを追いました。 今回は、田んぼに水が入った後、水と土を耕しながら馴染ませる代掻きについてのまとめです。 水の入った田んぼにトラクターで入り、代掻きを行うことで凹凸の目立つ土は水平に均され、後の田植えを行いやすくなります。 また、土と水が耕され、砕かれて馴染むことにより田植えをした苗の根つきもよくする効果があります。 気持ちの良い天気に恵まれ、早速トラクターで田んぼへと乗り出したいと思います

ゼロから始める伊賀の米づくり43:田植え直前!田んぼに水を引くまでのプロセス

父の跡を継いで4年目の春。 前回は、春の田起こしを行って土を徐々に柔らかくしてきていましたが、今回はいよいよ田植え直前ということで、田んぼに水を引くまでのプロセスをまとめていきたいと思います。 まず、この地域では田んぼに水を引くまでに草刈りを行なっています。 春になり、気温が上がってくると雑草も繁り始め、田んぼの中も以下のように緑っぽくなってきます。 手入れの行き届いていない田んぼは不精の証…… おおよそそのような反応が地域の人々から返ってくるため、まずは畦道に繁茂し

ゼロから始める伊賀の米づくり42:春の田起こしと、土・自然・機械とのコミュニケーション

冬の農閑期の間に圃場の石拾いをしてから約2ヶ月。 3月に入り、いよいよ5月連休の田植えを見据えての田起こしの季節がやってきました。 稲の苗の根付きを良くするため、また、春になって繁茂してくる雑草を鋤き込んでいくため、トラクターで田んぼを耕す作業です。 今回は、トラクターの操作上で注意すべき点がいくつかあったため、それごとにまとめてみたいと思います。 泥の中をトラクターで走る際の注意点まずは、水路の水漏れが起こってしまっているこちらの田んぼです。 雲ひとつない快晴の天

ゼロから始める伊賀の米づくり41:冬の田んぼで石拾い。稲の生育しやすい環境づくり

正月休みで帰省した間は、早朝の寒さを感じつつもこの季節ならではの景色を散歩しながら堪能してみたり、 曽祖父の遺した耕作放棄地を50年ぶりに開拓するなどして、過ごしていました。 しかし、農閑期とはいえこの冬の間にも田んぼについてできることはあります。 石拾いです。田んぼをトラクターによって耕し、雨が降った後は地表に石が露出します。 その石は苗の生育を阻害してしまうものであるため、拾いながら取り除きます。 今回は、霜が降りる正月休みの早朝に行うことにしました。 ウイン

ゼロから始める伊賀の米づくり39:冬の夜明けの散歩風景

前回の記録は、稲刈りを終えてから行う必要があった秋起こしの際のものでした。 稲刈りを終えてからも土の中の栄養を稲の切り株は吸い上げ続け、成長しようとします。 そんな稲の切り株……蘖(ひこばえ)をトラクターで耕して土に還し、地中での有機物の分解を促すことで次のシーズンの土の肥やしにする。それが、秋起こしでした。 そんな秋起こしからしばらくし、正月休みに入ると田んぼの様子も冬の様相を呈してきます。 私の田んぼのある三重県伊賀市は盆地であり、昼夜の寒暖差の大きな地域です。