眩しさの先で−−藤本和子『塩を食う女たち 聞書・北米の黒人女性』
昼間学部と夜間学部をあわせて千を超す新入生と新歓の呼び込みをする「先輩」たちでごったがえした二〇〇五年四月の文学部キャンパスで、きっとわたしは冷静さを失っていたにちがいない。大教室でおこなわれる講義にくわえて選んだ少人数制の必須選択の授業は、現代アメリカ小説を翻訳で読むという奇妙に宙ぶらりんな英文科の演習科目だった。学術においても表現においてもいわゆる専門性や専門ジャンルを追求する確固とした姿勢に憧れと畏れをいだきながら、その縁をぐるぐるまわっているだけの中途半端をモットーと