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Palo Alto / 脆くて苦い青春群像劇


監督:Gia Coppola  製作国:フランス 上映時間:100分 視聴方法:Amazon Prime Video 出演:James Franco, Emma Roberts, Jack Kilmer

ジア・コッポラの長編デビュー作で主演がジェームズ・フランコ、エマ・ロバーツと豪華な面々で話題となったパロアルト・ストーリー。青春映画を語る上で欠かせない"Kids"を彷彿とさせる彼らの苦い青春には、我々からは一見遠い存在である「アメリカのティーンエイジャー」たちの(我々もかつて感じたような)苦悩が描かれています。


小さなきっかけを引き金に


主人公であるエマ・ロバーツ演じるエイプリルは女子サッカー部に所属し、
コーチであるミスターBの息子のベビーシッターをしています。そんな彼女を気にかけているのがジャック・キルマー演じるテディ。ジャック・キルマー自身は映画公開したあたりにSaint Laurant のSSショーにモデルとして参加し、そのミステリアスで深みのある出立が話題となりましたが、映画においてはその魅力が抜群に生かされていた印象を受けました。物語はティーンたちの小さな見栄の張り合いによってどんどん歯車が狂い、次から次へと事態を悪化させていきます。パーティで女の子に部屋へ連れ込まれるテディを見て嫉妬したエイプリルは近くに居た男の子を誘惑し、それを見たテディもそれに嫉妬し怒りが爆発したまま車に乗って事故を起こしてしまいます。


April: I wish I didn't care about anything. But I do care. I care about everything too much.


素直になれない、大人になりたいといったティーンたちの思いがストレートに描かれている本作。エイプリルが劇中でロッカーにすっぽりと収まっているシーンがあります。わたしが映画において最も共感した場面なのですが、ロッカーの中は冷たくて、ちょうどいい狭さで圧力が掛かって孤独なんだけど心地いいのがロッカーの中。視界を狭めて音を小さくすることができるティーンのためのセルフ・アイソレーション手段です。よくそんなところに入れるね、とミスターBが声をかけますが、悩みの種が彼自身であることを全くもって想像もしていない様子。エイプリルはコーチのミスターBとも関係を持ってしまいますが、後々自分だけがその立場にあるわけではないことを知ります。


リアルなティーンの姿


もしパロアルト・ストーリーがティーンに「むけた」青春群像劇だったなら、エイプリルはテディの気持ちにもう少し早く気づくことが出来て、エイプリルはテディの気持ちにもう少し早く気づくことが出来て、テディもトラブルメーカーのフレッドを早々に改心させてるのではないでしょうか。しかし、いわゆる青春物語にしては暗くてジメジメしたこのストーリーは、大人の目線からリアルなティーン世代のだれにも分かってもらえない些細なことをキャラクターたちに乗せて共感していた/させているように感じます。テディもトラブルメーカーのフレッドを早々に改心させてるのではないでしょうか。物語は感情のままに叫びながら車で暴走するフレッドと大人の目線からリアルなティーン世代のだれにも分かってもらえない些細なことをその車から降りて歩きながらエイプリルからのメールに微笑むテディを写して幕を閉じます。物語は感情のままに叫びながら車で暴走するフレッドと爆走するフレッドがテディに衝突するわけでも、車から降りたテディが走ってエイプリルを迎えに行くわけでもなく、爆走するフレッドがテディに衝突するわけでも、車から降りたテディが走ってエイプリルを迎えに行くわけでもなく、答えのない物語として、かつ青春の勢いを保ったまま終わる余韻の残る映画です。ティーンエイジャー達は20歳になった時その括りの終わりがきますが、我々が過ごしてきたように、彼らの人生はその後も続きます。リアルな青春にはロマンチックなBGMはないし、どこからともなく現れる"大人"によるアドバイスもないまま、自分の中で悶々としたものをどこかで持ち続ける。その気取らない描かれ方がこの物語にほろ苦さを与えていると思います。
自分の中で悶々としたものをどこかで持ち続ける。その気取らない描かれ方がこの物語にほろ苦さを与えていると思います。リアルな青春にはロマンチックなBGMはないし、どこからともなく現れる"大人"によるアドバイスもないまま、自分の中で悶々としたものをどこかで持ち続ける。その気取らない描かれ方がこの物語にほろ苦さを与えていると思います。

まとめ

気取らないとはいいつつも、ゆったりとしたカメラワークに被さる会話や不思議な音楽、色彩が最高です。冷たい夕方の風に当たりながら、高校時代を思い出して観てみてください。

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