10万円の給付が世帯主に一括振込ではダメな理由。
10万円もらえると喜んでもいられない
コロナウイルス禍のなか、皆さんは無事だろうか。罹患していなくても、何らかの"無事じゃない"状況に立たされている可能性はある。
そんななか、10万円の一律給付の給付方法が発表された。
この記事の、以下の部分が気になった。
手続きについては、住民票がある市区町村から送られてくる申請書に世帯主が本人名義の金融機関の口座番号などを記入し、口座を確認できる書類と
本人確認の書類のコピーを一緒に返送すれば、家族分の給付金がまとめて振り込まれる仕組みにするということです。
手続きを簡略化したいのはよくわかる。早く届くべきだし、そのために世帯主にまとめて一括振込なんだろう。けれど、それではダメだ。
なぜなら、世帯主と関係が良好でない世帯員もいるからだ。おそらくこれを考えた人は、世帯主(多くの場合夫や父)がしっかり10万円を妻や子に渡すと信じて疑わないほど、優しい世界で生きてきたのだろう。そのあまりに、優しい世界で生きていない人のことは、想像から外れてしまった。
これは大失態である。DV被害者や虐待の被害者を見捨てる給付方法である。
DV被害者にとって、その10万円は逃げるための資金だったかもしれない
DVをご存じだろうか。DVの定義はこちらを見て欲しい。
日本では「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多い(上記サイトより引用)
とある。さらにこのサイトをスクロールしていくと、被害者は女性が多いことや、女性の側に収入がないことなどによる問題も挙げられている。
DVは、男女格差があるからこそ、より深刻化している問題といえる。
では、その被害者はどれくらいいるのだろうか。
こちらのサイトから引用すると、DVを一度でも経験したことがあるのは女性で約3割、男性で約2割である。
内閣府では，全国の20歳以上の男女5,000人を無作為に抽出し，「男女間における暴力に関する調査」（平成23年）を実施した。同調査によると，これまでに結婚したことのある人（2,598人）のうち，配偶者（事実婚や別居中の夫婦，元配偶者も含む。）から「身体に対する暴行」，「精神的な嫌がらせや恐怖を感じるような脅迫」，「性的な行為の強要」のいずれかについて「何度もあった」という人は，女性10.6％，男性3.3％，「1，2度あった」という人は，女性22.3％，男性15.0％となっており， 1度でも受けたことがある人は，女性32.9％，男性18.3％となっている（第1－5－1図）。(上記サイトより引用)
DV被害者は私の想像よりも多かった。DVには経済的な支配も含まれる。経済的に相手を支配している人が、相手にしっかり10万円渡すとは到底思えない。
その10万円があれば、DV被害者は加害者から逃げて新たな生活を始められたかもしれないのに、国の愚策で10万円は加害者の手元に収まり、被害者の希望がなくなってしまうのだ。
虐待する親が、子どものために子どもの分の10万円を使うだろうか、いや、使わない
虐待については言うまでもない。これまでも散々児童手当やら何やらのときに、"子どものためのお金"をパチンコ代や酒代や自分の好きなものを買うお金に使う虐待親について言われてきた。
親子とは支配-披支配の関係である。元々がそうであるのに10万円という金額が絡むと余計に拗れる。養ってやってるんだからこれは俺のものだとか、親なんだからもらうのが当然だとか、そういった謎理論で支配者である親は子どものお金を取り上げ、子どものためには決して使わないのである。
親がまとめて受け取って、それが学費や食費になるならいいだろう。それがまともな家庭というものだ。しかし、まともじゃない家庭では、親の娯楽に消えるだけだったりするのだ。
個人に給付すれば問題は解決か？
では、世帯主への一括給付をやめて、個人への給付にすればこれらの問題はなくなるのだろうか。私は減りはするが、なくなりはしないだろうと考えている。
個人に給付されたものであろうと、暴力や脅しを用いて世帯員からそれを奪う世帯主は存在するだろう。しかし、個人に給付されたものであれば、自分の口座に振り込まれるので、世帯主に「渡してください」と言う必要がない。DVや虐待の被害者達が罵られたり殴られたりする危険なしに、10万円を受けとるまではできる。
個人への給付にすれば、完全に解決ではない。しかし、世帯主への一括給付にすると、自分のお金であると勘違いし、世帯員へは配らない世帯主は、個人への給付の場合より確実に多いだろう。
世帯主から世帯員への搾取を減らすために、世帯主に一括給付ではなく、個人への給付の形で10万円配って欲しい。
それから、もしこの記事を読んでいて、「10万円取り上げられそう」と思った人がいたら、シェルターなどに逃げて欲しい。
追記
DV被害者について一定の考慮はされているようですが……。
執筆のための資料代にさせていただきます。