話を聞いてあげること。
もうすぐ退職する私は、今日は休みをもらって家にいた。
早朝のバイトを終えた、大学生の娘が家に帰ってきた。
床にペタッと座り込み、ため息をついている。
「朝のシフトはあんまり好きじゃないんだったっけ?」と言う私に、
「・・・嫌なオバサンがいるんだよ。超合わない」と返事をする。
24時間営業のコンビニのバイトなのだけど、入る時間帯によって仕事の内容も異なるから、いつも夕勤の彼女にとって朝勤の仕事は苦手なのだそうだ。
そこに加えて、嫌なオバサン。。。
「『突っ立ってないで、ちゃんとやって!』とか言うんだよ。別に突っ立ってたわけじゃないし、何にもしてなかったわけじゃないのに」
実際そうなのだと思う。
自分の娘だからかばうわけではないが、もう1年もここでバイトをしているから、時間帯は違えど何もしないで突っ立っているわけではなかろう。
言い方が嫌味なのだそうだ。
それから、自分がこの仕事場を仕切ってるんだ!みたいなところがあるらしい。
「そういう人、結構どこでもいるんだよね」
「そうだよねー。これから社会に出たら、いっぱいそういう人いるんだろうねー。」
振り向くと彼女は泣いていた。
めずらしく号泣レベルだ。
中学生くらいまでは、「泣けない子」だと自分で言っていた。
もちろん、幼少期は人並みに泣くこともあったことは母親の私がいちばん知っている。
小学校にあがり、中学校にあがり・・・。
親が目にすることのできない空間の中で過ごすことが多くなると、本人にしか知らない「自分の立ち回り」が明確になる。
分かりやすいところでいうと「卒業式」だ。
小学校でも中学校でも、卒業式ともなると泣く子がいる。
涙が出ていなくても、感慨深い表情だったり。
そんな中、彼女は感動が薄いことを自覚して「泣けない。私は泣けない女だ」と、淡々とつぶやいていた。
きっと心の中では、「泣ける子の方が、周りから可愛らしく見えるんだろうな」というのが分かっていて、泣けない自分がちょっと残念に思うところがあったのかもしれない。
そんな時の私の返事は
「別にいいんじゃない」だ。
ダメ出ししても仕方がないし、同意するのも違和感がある。
「別にいいんじゃない」は、精一杯の承認なのだ。
そんな彼女が変わってきたのは、高校2年生になってからだった。
うちの子供たち(姉弟)は、特別仲が良いとも悪いとも言えない、親の私からするとちょうど良い距離感を持った状態を保っている。
性別が違うから、直接的に比較されることがないのは気楽なのかもしれない。
ただ、世の中的に「きょうだいを比較してはダメ」と言われそうだが、私は大いに比較する人だ。しかも本人たちの前で。
それぞれ違う資質を持って生まれた、別人格なのだ。性別だけではない、違いを楽しまないで何が「育児」だ「教育」だ!と考えるからだ。
それこそ、日々の生活態度から成績に至るまで、あらゆる面で比較する。
だがしかし、彼ら彼女らが未だに「反抗期」がないのは、比較されることで自分を確立する材料にしているからではないかと思っている。
どちらかというと成績の良い弟が高得点をとってくると、「お前、バカじゃないの?」と大声で反応する母に、二人して大笑いで返してくる。
(勉強がトコトンできなかった私の子供なのに、高得点とるとか、びっくりして受け入れられない。笑)
だから私の代わりに姉として「すげーなー」と感心していつの間にか弟を褒めて認めているのである。
そんな彼女の涙腺が緩み始めたのは、弟がバスケ部のキャプテンになった頃からだった。
いろいろ苦悩しながらも、決して強いとは言えないチームを率いて試合に出場。それを私と娘で観に行った。
そこで泣いた。
二人で号泣だった。
「がんばってるねぇー(T_T)(T_T)」
そう言い合って二人で泣きながら試合を観た。
なぜその日からになったのかが不明だが、とにかく彼女の中で様々な経験値が上がって想像力が増したのだと考える。
さて、話を戻すが、
朝バイトから帰って家で号泣し、すぐに大学に向かった彼女は電車の中でも涙が止まらなかったそうだ。
電車で泣いている女子大生。
うっわーーーーー。
彼女と食卓で笑いながら今日一日を振り返る。
「嫌なことがあったら、意識的に愚痴るといいよ」
高得点をとった息子をバカ扱いする私にしては、まともな発言だ。
頷きながら、嫌味オバサンについて考察し
対処方法を挙げる。
悩みを聞きながら、ずいぶん成長したと感じる。
話を聞いてあげられる存在であることが、私にとっての親としての喜びだ。
それ以外の部分では、
だいぶ乱暴で雑で適当だし
彼らに頼っている部分が本当に多い。
目線を合わせたり、角度を変えてみたり
いろいろな視点から物事を見ることを伝えていきたい。
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