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その手はもう、しばらくつながなくていいだろう。

娘の部屋に、もう何ヶ月も置いてある大きな箱があります。
それはそれは大きな箱で、身体の小さい私が体育座りして楽に入れるほど。
届いた時はびっくりしたけれど、すっかり部屋の一部と化していて違和感がなくなっています。

今日、ふとその箱を見て思い出しました。
あと2ヶ月もしたら、彼女が二十歳を迎えることを。

それに気づいた私は、自分の中に何かを感じていました。


数時間後、二人で出た散歩の途中、私は、まるで子供みたいに彼女を困らせました。彼女が涙が止まらなくなるまで困らせました。
そして、謝り、再び歩き始めました。



喧嘩の原因なんて、些細なこと。
つまらぬことで突っかかり、自分の中にあった何かを、別の形でぶつけていた。ただそれだけでした。

いつもより暑さを感じながら、最終的に笑いながら家路についたのに、しばらくの間ただひたすら無表情で過ごす自分を感じていました。


日が落ちるまで呆然と過ごした私の元に、夕飯の献立について彼女が相談しにきました。ここ一ヶ月ほど、夕飯は彼女が作っているからです。

「昨日はお肉だったから、今日は魚かな」
「うん。そうだね。」

少しふざけた会話を加えて、笑いながら台所に行く彼女を見て、やっぱり本当のことを言わなければいけないなと痛感しました。


そう。
今日、あなたを困らせてしまったことの、本当の理由について。



その手はもう、しばらくつながなくていいだろう。

真夏に生まれた私の元に、彼女が来てくれたのも真夏でした。

彼女の名前には、季節感のある文字が入っています。
彼女と私の季節が近づくと、その文字を街中で見かけるのです。
そうして暑さを感じると、彼女を迎える前の空気を思い出すのです。


昨年、彼女のために着物を買いました。
大きな箱には、彼女が成人式で着る振り袖が入っています。
2ヶ月後にはこの振り袖を来て、写真を前撮りする予約をしています。

赤い振り袖と黄色い振り袖。
どちらも色白な彼女に似合っていました。
レンタルでも購入でも同じ金額。
どっちがいいか迷った挙げ句、黄色い振り袖を選びました。

それを選んだ時、やはり夏の暑かった日を思い出したのです。
そうしてちょっと、泣きそうになったのです。

大人になってしまうのだなと。
もうその手を、しっかりとつないでおく必要はないのだなと。




あなたを困らせてしまったことの、本当の理由について、このnoteを書き終えたら伝えるつもりです。


あなたが大人になることが、急に寂しく思えたということを。
ありがとうの言葉と共に。


日常のふとした瞬間や閃きを、毎日書き記しています。 応援してくださると泣いて喜びます(T_T) Twitter:https://twitter.com/yurari_0_0