見出し画像

現代の錬金術『人工ダイヤモンド』

みなさん、こんにちは。
本日は本職のジュエラーとしてのお話を。
紫がたり 第九十四話 須磨(一)は8月7日(日)に掲載いたします。

タイトルにある人工ダイヤモンドについて本日はお話し致しましょう。
その昔、人は金をその手で作ろうとしました。
魔術?科学?それとも化学?
ともあれ、それは錬金術と言われました。

現代では天然ダイヤモンドとまったく同じ組成の合成ダイヤモンドが作られるまでに技術が発達しております。
まずは人工ダイヤモンドの歴史からお話致しましょう。

ことの発端は1797年、ダイヤモンドが炭素のみで構成されているという科学者の発見からでした。
天然のダイヤモンドの生成について簡単に説明を。
ダイヤモンドは地球の核の近く、マントルと言われるマグマが煮えたぎっている場所で生成されます。高温、高圧力の元、安定した炭素の結晶が生成され、マグマの力によって時速100キロのスピードで地表近くまで押し上げられて急速に冷まされることでダイヤモンドの原石は出来上がります。
このメカニズムを再現しようとして、HPHT(High Pressure and High Temperature)法によって最初の人工ダイヤモンドは出来上がりました。
しかしながらHPHT法によって作られたダイヤモンドは宝石品質ではなく、もっぱら工業ダイヤモンドとして利用されました。
ダイヤモンドの硬度はご存知最強のモース硬度10。
さまざまな加工などに用いられたということですね。
それが現在の宝石品質にまで進化したのは1940年にCVD製法の発明によるものが大きいのです。
CVD(Chemical Vapor Deposition)製法は日本語で化学気相蒸着法といいます。
専門的なことはややこしくなるので、こちらも簡単にイメージのような感じで。
メタンを含んだ炭素合成ガスと水素ガスを高圧力を維持するマシンの中でプラズマ状の気体を発生させて基板に定着させるというもの。
その成分は天然のダイヤモンドと全く同じで、物理的、光学的特徴も同じです。
天然か合成かは原石の状態を見れば端的です。
天然の原石は正八面体の形をしておりますが、人工ダイヤは気相で構築されるので板状です。

0804コラム

昨今ではCVD製法のためのマシンもコンパクトになり、1カラットの原石を生成するにも数時間でできるようになりました。
以前はCVDによって作られた原石をHPHTで処理して品質を安定させたものですが、現在ではCVD製法の段階であらゆる調整が可能となりました。

さて、もちろん原石を作るだけではダイヤモンドは出来上がりません。
カット、研磨をほどこして完成するのです。
まさに現代の錬金術ともいうべき、宝石品質のダイヤモンドを人は手に入れました。

こうして出来上がった宝石品質のダイヤモンドが今世界ではどう受け入れられているのか、日本ではどのようなムーヴメントを起こそうとしているのか。
明日は『人工ダイヤモンドの躍進』というタイトルでコラムを掲載いたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?