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紫がたり 若菜・上下 を通じての主要点

みなさん、こんばんは。
長かった若菜・上下がとうとう終わりました。
上下合わせて64話。
私の源氏物語は約450話で完結ですので、その間64話というのはかなりの密度ですね。

源氏物語において、各帖にはそれぞれの主要点というものがあると私は考えております。そこでこの若菜の上下を書き下ろす際に私が心がけたところを綴りたいと思います。
この長きに渡る帖では、様々なうつろいがありましたが、私はこの帖の主観を紫の上を中心として、源氏の晩生を浮き上がらせるよう試みました。
それは源氏の目線だけでは乏しい展開というか、多くの女性ファンを持つ源氏物語だからこそ、女性の気持ちを描くことが重要ではなかろうかと考えた次第です。

若菜の帖では実にさまざまなことが起きました。
何より女三の宮の降嫁は大事件でしたね。
源氏はまたいつもの癖で藤壺の宮を追い求めているもので、女三の宮の母君が藤壺の宮の妹であったことから、その面影を求めずにはいられないのでした。
しかしながらこれまたいつものパターンで逢ってみるとガッカリ、という展開ですね。勝手に期待しておきながら、密かに幻滅、軽蔑されるとは、大変女性に対して失礼ですし、女三の宮にはお気の毒なことです。
そしてこの降嫁は紫の上をたいへん深く傷つけることになります。
上はいつしか出家を願うようになりますが、それを源氏は許してはくれないのです。このようなくだりは本当に平安に生きた女性の哀れを感じさせられます。
所詮は男に縋らなければ生きて行けない。
女は生まれながらに賤しいと蔑まれる社会。
いまだに女性が相撲の土俵に上がれないことや女人結界の存在する寺にははっきり言ってガッカリです。
女がいなければ男は生まれてこないんだぞ!と声を高らかに言いたい!!
あら、言ってしまった ・・・。
。。。と、話が横に逸れてしまいました。

さてさて、若菜の帖でも創作満載でしたが、やりすぎると本筋に戻れなくなるのがつらいところ。
私が悩んだのは、死の淵にあった紫の上がいかにして源氏のために生きようと心を甦らせるのか、という部分でした。
絶望して気力もないところに六条御息所につけこまれ、紫の上は死線を彷徨うわけですね。
自分の死を嘆く源氏を可哀そうと思う?
そんな簡単に長きにわたり傷つけられた心は癒えるのでしょうか。
結局のところ、源氏をまだ愛する心が残っていた、という風に決着しました。
憎むことはそれに囚われる感情からによるもの。
愛の本流がそこにあり、憎しむということはそこから分岐した支流のようなものなのだ、と。

源氏物語にはたくさんの登場人物がおり、それぞれが別の感情を持った人達です。そうした人々が関わり合いながら物語を織りなしていくのです。
そして一人一人を描くことで深みが増してゆくのだと思います。
私の創作部分はそこにこそ重きを置いているもので、これから先も暴走するでしょう。
そこは一人の女房の独り言的な感じで見逃していただけると、たいへんありがたいと思います。

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