紫がたり 令和源氏物語 第三百六十四話 若菜・下(三十)
若菜・下(三十)
二条院に戻った源氏はまず紫の上が無事であることを確認してほっと胸を撫で下ろしました。
「お帰りなさい、あなた。宮さまのお加減はいかがでした?」
「なに病気ではないのだから、元気にしておられたよ。それよりあなたは今日も起き上がれるようだね。顔色もよいし、よかった」
紫の上はふと何かあったのかという違和感を持ちましたが、それはやはり源氏が宮さまを気遣っているのではと考えました。
「ねぇ、あなたはもう六条院に戻られた方がよいのではないかしら?身重でいらっしゃ