紫がたり 令和源氏物語 第十話 帚木(六)
帚木(六)
藤壺の宮のしっとりとした柔らかい手はその昔に触れた時と変わらずに温かいものでした。源氏はうつつと確かめたくて、その手のひらに口づけをして頬を擦りよせました。
宮はそれに応えられるように愛しそうに源氏の輪郭をなぞり、そっと額に口づけをされました。
「宮、内裏で初めてお会いした日のことを覚えておいででしょうか?私はあの時からずっとあなたを慕い続けておりました」
源氏の涙が宮の白い肌にはたはたと零れ、月明かりできらきらと流れていくのを宮はせつなくご覧になり、優しく源