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紫がたり 令和源氏物語

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青木紫 が語る「令和源氏物語」。創作を盛り込んだ現代語意訳です。 千年前でも現代人でも変わらないのは人の心。 光る君の生涯「桐壺」から「雲隠」まで、449話にて完結です。
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2022年4月の記事一覧

紫がたり 令和源氏物語 第十六話 空蝉(三)

 空蝉(三) 源氏は逃げた女を想っておりました。 賢くて、憎くて、やはりそれでも慕わしい…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第十五話 空蝉(二)

 空蝉(二) 源氏は女のつれなさを寂しく思っていました。 「お前の姉上は頑迷だね」 小君を…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第十四話 空蝉(一)

 空蝉(一)  空蝉の帖では薫りを意識しながら読んでいただくと味わい深いものに感じられま…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第十三話 帚木(九)

 帚木(九) 源氏は思いもよらぬ逢瀬に女を忘れることが出来なくなりました。 なんとか連絡…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第十二話 帚木(八)

 帚木(八) 夜も更けて辺りは仄かな月明かりのみ。 みな床につきはじめると、静寂(しじま…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第十一話 帚木(七)

 帚木(七) 夏のすだく熱気冷めやらぬある宵、源氏はしばらくぶりに左大臣邸を訪れました。…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第十話 帚木(六)

 帚木(六) 藤壺の宮のしっとりとした柔らかい手はその昔に触れた時と変わらずに温かいものでした。源氏はうつつと確かめたくて、その手のひらに口づけをして頬を擦りよせました。 宮はそれに応えられるように愛しそうに源氏の輪郭をなぞり、そっと額に口づけをされました。 「宮、内裏で初めてお会いした日のことを覚えておいででしょうか?私はあの時からずっとあなたを慕い続けておりました」 源氏の涙が宮の白い肌にはたはたと零れ、月明かりできらきらと流れていくのを宮はせつなくご覧になり、優しく源

紫がたり 令和源氏物語 第九話 帚木(五)

 帚木(五) 源氏はぼんやりとあの夜のことを思い返しておりました。 あれはどれほど前のこ…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第八話 帚木(四)

 帚木(四) 中将は重くなった場の空気を気まずく思い、沈黙を通している式部丞に話をふりま…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第七話 帚木(三)

 帚木(三) 左馬頭はふと自嘲気味に笑むと続けました。 「それでは今一人の女の話を・・・…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第六話 帚木(二)

 帚木(二) 左馬頭はなかなか鋭いことを言うな、と興がのってきて、源氏はまた質問をしまし…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第五話 帚木(一)

 帚木 (一) 「光源氏」と呼ばれるようになった源氏の君ですが、世の人々は噂好きで、さも…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第四話 桐壺(四)

桐壺 (四) 光る君にとって藤壺の宮と出会い、共に過ごした何年かがもっとも幸せな時であっ…

YUKARI
2年前
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紫がたり 令和源氏物語 第三話 桐壺(三)

 桐壺(三) 桐壺帝は日々若宮の成長を見守りつつ、月日を重ねても亡き御息所を忘れることができないご様子でした。 女御や更衣達の元へのお渡りもありません。 弘徽殿女御は目障りな更衣が消えて帝の寵愛を取り戻せると思われていたようですが、思惑が外れたので、 「死んだ後まで憎々しい存在だこと」 などと、恨みはさらに募るようです。 ここのところ弘徽殿女御は毎日管弦の宴などを開かれております。 女御はご自分の憂さを晴らしながら、管弦の遊びを喜ばれる帝をお慰めしようという御心もあったよう