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入社した日に「来週からイスラエル行ける?」と言われて行った話

2019年2月1日。まだ少し肌寒い冬の日に、私はWix日本法人での仕事をスタートした。というか、私は日本法人の立ち上げメンバーとして参画したのでまだオフィスなんてものはなく...赤坂のアークヒルズにあるスタバが、初日の待ち合わせ場所だった。

「久しぶり!今日からよろしくお願いします!」

この日の早朝に長期出張から戻ってきたばかりだというのに、めちゃくちゃ元気な姿で迎えてくれたのはうちの代表。実は前職からの付き合いだ。代表は私より早くWixでの仕事を始めて、今日までの約ひと月、本社のあるイスラエルに出張に行っていた。

お互いの近況、出張のこと、会社のこれからについて、ホットコーヒーを片手に会話。そして30分ほど経った頃だろうか。

👱‍♂️「それでさ、来週からイスラエルに出張行ける?」
👩「え?来週ですか?!」
👱‍♂️「そう。ちょうど本社でオリエンテーションがあるらしくて」
👩「はあ...まあ予定は空いてますけど...」
👱‍♂️「よかった!じゃあ希望のフライト情報を調べて送っといて!」

という感じで、あまりにも突然イスラエル行きが決定。え、しかもフライト情報って自分で調べるの?!という二重のサプライズ。

中東といえば新婚旅行でドバイに行ったことがあるくらいで、イスラエルなんてニュースでしか聞いたことがない。それもネガティブな情報ばかり。予定の渡航日まで4日くらいしかなかったので(急すぎでは...?)、とりあえず限られた書籍の中から『地球の歩き方』を買った。

🇮🇱イスラエルの基本情報
・国土:2.2万平方キロメートル(日本の四国程度)
・人口:約934万人(2021年4月時点)
・民族:ユダヤ人が約74%、アラブ人が約21%、その他が約5%(2020年4月時点)
・公用語:ヘブライ語(一部アラビア語)
・宗教:ユダヤ教が約74%、イスラム教が約18%、キリスト教が約2%(2020年4月時点)
・通貨:新シェケル(NIS)※$1=NIS3.25(2021年7月現在)
・主要産業:鉱工業、農業
出典:外部省のイスラエル基礎データ

「私、来週イスラエル行くことになったよ」

夫や両親にそう告げると、最初は「え、ずいぶん急だね」という反応だった。でも、時が経つにつれて、「本当に生きて帰ってこれるのか?」と心配された。そりゃそうだ...私だって不安しかない。

週末、実家にご飯を食べに行ったら、最後の晩餐かと思うくらいのご馳走が食卓に並んだ。4日間くらいの何気ない日常を噛み締めながら過ごしていたら、あっという間に渡航の日がやってきた。

初出張の渡航ルートは、羽田空港✈︎香港✈︎テルアビブ(イスラエル)のキャセイパシフィック便。経由地をアジアにしたのは、「少しでも長くアジアの地を踏んでいたい」という私のささやかな抵抗だ。

東京からテルアビブへ

羽田空港へは夫が見送りに来てくれた。羽田の国際ターミナルに来るといつも立ち寄る大好きなとんかつ屋さんがあって、今回も迷わずここでお腹を満たす。フライトまでの間ショップ周りをしていたら、侍ジャパンの広告を発見。これから一人で20時間近くのフライトに乗らなきゃいけないという不安な私を、侍たちが応援してくれているようで心強かった。

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香港に到着し、トランジットの手続きを済ませたら自由時間。次のフライトまで6時間もあるし、ラウンジも使えないのでターミナルでひたすら過ごすことに。まずは「香港といえば中華料理だよね〜」ということで、フードコートへ。適当に頼んだ海老ワンタン麺セット。麺は去ることながら、椎茸を煮たものがビックリするくらいおいしくて、「香港、恐るべし...」と思った。

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フードコートでしばらく過ごした後は、免税店で買い物したり、カフェに行ったり。ただ、次のフライトは深夜(1時過ぎ)だったので、待っている間にお店も閉まり、ひたすらベンチで読書をして過ごした。いやー、1人で6時間待機は長いわ!!

そして近づく搭乗時刻。ゲートへ向かうと「Tel Aviv」の文字。心臓がドキドキする。「これに乗ったら、もう二度と帰って来れないのかな...」と不安になりながら、私はひとり飛行機に向かった。
※ちなみに12時間のフライトは、ドリエルを飲んだおかげでぐっすり眠れて超快適でした!

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ようこそ、イスラエルへ

機内には中華系の人が多くてアジアなムードを保っていたけど、到着すればそこはイスラエル。世界一厳しいと言われている入国審査をパスし、長旅を終えたトランクを受け取ってゲートを通過。

「到着後は、Gettっていうアプリ(Uberみたいなやつ)を使ってホテルまで行くといいよ」と事前に代表から聞いていたので、アプリはインストール済みだった。乗り場がよくわからなかったので空港の警察官に聞いて、呼び出した車をドキドキしながら待つこと数分。

「ハロー!〇〇ホテルまでね。よろしくね!」

と陽気なおじさんが登場。この人がとても日本好きで優しくて、色々話しているうちに不安な気持ちが和らいだ。到着したホテルは海のそば。しかもWixのオフィスの目の前だった。
※Wixはここ数年で急成長しているためビルに社員が入りきらず、色んなビルに間借りをしています。数年以内に、社員全員を収容可能な自社ビル(キャンパス)が完成予定とのこと。

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外国に来ると、いつも散歩しながら街の様子を見る。ここでも早速スマホを握りしめ、海辺を散歩してみることにした。まったく知らない土地での、イモトのWiFiの心強さは半端ない。

外は太陽がまぶしく天気はよかったのに、予想外にかなり寒かった。事前に気温は調べてきたものの、海風がこんなに強いのは想定しておらず...このまま過ごしたら間違いなく風邪引く!と思ったので、仕方なくセレクトショップで長袖を調達。物価がすごく高くて一瞬で2万円くらい飛んでしまった。でも生きるためなので仕方ない。

さて気を取り直して、テルアビブ市内の散策。至るところにイスラエルの国旗があって、「あー、私イスラエルにいるんだなー」と実感。街中に猫がいて、レストランに入ると普通に犬がいて、動物に優しい国なんだなと思った。

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外に出てすぐ思ったのは、「この街はカフェが多い」ってこと。イスラエルは紅茶よりも圧倒的にコーヒーの文化が根付いていて、どこに行ってもおいしいコーヒーが飲める。それなのに、あれですよ。緑の看板でお馴染みのスタバが、どこ見渡してもない。気になって調べたら、昔はあったのがイスラエル人のコーヒー文化に合わず撤退したらしい。

実はWix本社にも社員用のカフェがあって、毎朝バリスタが出来立てのコーヒーを作ってくれる。社員の憩いの場。私もこのオーツミルクラテがすっかり気に入ったため通いつめ、数日後には「いつものあれね」で出てくるくらいになった。

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もう一つ気づいたこと。イスラエルのレストランでは一人で食事してる人をあまり見かけない。出張だと一人で食べざるを得ないので、家族連ればかりの店内で少し気まずい思いをしながら食事をとった。というか、「気まずい」と思ってるのは自分だけで、周りは私がアジア人ってことも、一人ってことも、まったく気にしてないみたい。

ユダヤ人である彼らもマイノリティだからなのか、道を歩いていてもジロジロ見られたりしない。英語もネイティブ同士じゃないし、店員さんもフレンドリー、そして日本好きな人も多い。ちなみにテルアビブは、世界でも有数のLGBTQフレンドリーな都市だ。アジア人という理由で、かつてヨーロッパやアメリカで嫌な経験をしたことがある私にとって、イスラエルは過ごしやすいと感じた。

テルアビブでの食事

コーヒーショップの他によく見かけたのがフルーツジュースのお店。りんご、マンゴー、バナナ、ザクロといった様々な果物を使ったフルーツジュースが至るところで飲めたので、「ちょっとビタミンが足りないな」って時はよく利用した。

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そして食事。イスラエル料理として有名なのはフムスという、ひよこ豆のペースト。ふわふわのピタパンに挟んで食べる。写真には写ってないけど、ファラフェルというひよこ豆のコロッケもイスラエルならではらしい。

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それから多いのは地中海料理。ここは人に勧められて入ったレストラン。シーフードのラビオリがめちゃくちゃ美味しかった。でも値段がすごく高い。ちゃんとしたレストランの場合、一人でもチップ込みで5,000円くらいは必要。ちなみにユダヤ人は宗教的な理由で海老が食べられないそうなのだけど、レストランには海老料理を扱っている店も多かった。海老好きなので嬉しい。

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滞在中にビックリしたものといえば、異様なほど大きなカリフラワー。手が小さめな人の拳くらいある。このカリフラワーのローストは定番料理らしく、軽い気持ちでパスタの前菜に頼んでしまったことを後悔した。おいしいけど量が多すぎなんや...

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滞在中、アジア料理が恋しくなったらタイ料理や、「Fake Sushi(偽物の寿司)」と現地の人がよく言っていた寿司を出す日本食レストランなんかで食事をした。ちなみに当時、韓国料理のお店は見当たらなくて、韓国料理好きの日本人の同僚が嘆いていた。日本食があるのに韓国料理がないってパターンも珍しい気がするなぁ。

他にもオフィスでケータリングした料理とか色々あるけど、概ね満足だった。一皿の量が多いけど、それはアメリカでも同じだし。日本人が旅行に来ても食事は困らないんじゃないでしょうか。

百聞は一見にしかず

というわけで、すっかり旅行記みたいになったけど、平日は朝から晩までミーティング尽くしでしっかり働いてましたよ!(ここ強調)

短期間の滞在だったから、見えてない部分もたくさんあるのは承知の上で...それでも初めてのイスラエル。渡航前は「なんか怖そう」ってネガティブなイメージしかなかったけど、それは私が頭の中で勝手に作っていたもので。実際に行って、人と触れ合って生活してみるとイメージが一変した。

まさに百聞は一見にしかず。間接的な情報だけですべてを判断しちゃいけないなと学んだ。実はこのあとも2回出張に行ったけど、行くたびに発見があってもっと知りたくなる。こんな状況だけど、いつかまた行ける時がきたら、今後は国内巡りもしてみたい。

最後におまけの写真。
実はイスラエル生まれのSABON。本店では日本の約30-50%引きで購入できた。

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海沿いで見つけたフォトスポット。次々に人がきて一緒に撮影してたけど、私は撮れなかったよ、なぜなら一人だからね!

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テルアビブのビーチ。夏場はサーフィンしてから出社って人も多いらしい。

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なお、ここで書いた内容は世界がこんな状況になる前の出来事です。今はイスラエルの様子も少し変わっているかも。1日も早く平穏な日々が訪れることを、心より祈っています。おしまい。



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