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演劇制作とわたし

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舞台・演劇の公演で「制作」と呼ばれる仕事をしている私が日々その仕事と向き合って思ったことをまとめています。 形があるようで形がないものを作る仕事は、時としてその価値が不明確になり…
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#つぶやき系エッセイ

2020年 コロナ禍における演劇周りについての私見まとめ【随時更新 12/12update】

今、この状況で動いているものを、それに触れた時の気持ちを残しておく、ということをしている。 きっとその時の考えも含めて、後で絶対に役に立つと思ってるから、あえて残す。 ▼公演運営について▼舞台の配信について▼配布物・アンケートなど

チラシ40,000枚理論実践しようとするならどんぐらい予算かかるのか考えてみた

先日元王子小劇場のたまやまさんと飲みに行ってまして(ついでに言うなら椎名林檎のライブも一緒に行ったw)芝居の話をひたすらしてたんです。 これ、以前ツイートされてたチラシ40,000枚で効果あるとかなんですが、(個人の体感とのこと) 4万枚まくってことは1万枚のところで引っかかるひとを確実に引っ掛けるという繰り返し戦略な訳です。 ちなみに4万枚って途方も無い数字のようですが、参考までに言えば、劇団☆新感線「修羅天魔」のチラシ配布束は2.8万枚。だからと言って新感線に全投入

「ハコ」の進化 ー「体験」の提供は演劇の特権ではない時代

どうでもいい話なんですけど、昨今中身もさることながら抜本的なアップデートが難しい会場側の進歩がめざましくありませんか。 まあ個人的な最近一番のハード面の進化は何より新感線がロングラン公演中の「ステージアラウンド」かなと。 世界でこれがまだ2例目ってのもすごいんですけど、回転するってどういうことやねん、で観に行った「髑髏城の7人」は抜群に面白かった(話はシンプルなチャンバラ物なんだけど)やっぱり何より、「ウワーーーー回るーーーー映像スゲーーーー何これどういうことやねんーーーー

公演を打つのなんて簡単だ。 だからこそ、未来がない

小劇場が嫌いだ、ものすごく反吐が出るほど気持ち悪いと思う瞬間がある。 よく聞かれる。 『なぜあなたはそこまで意見を持ってるのに、どうして自分で小さい規模とかでも公演をやらないの?』と。 理由?明白にあるよ。 私には私のすべての責任でお客様に足を運んでいただき、きちんと完結させるだけの資金力と知名度がないからだ。 作品を中途半端であってもある程度形にして発表するのはもちろん大事だし、一理ある。だけど私はそれを演劇でやりたくない。 私にとって演劇は、芸術性と興行としての成功と

人は生きながらにして死んでいく、 という感覚

『常識』という言葉が嫌いだ。使わないようにしている。 使わざるを得ない状況でも、前後の言葉はものすごく選んでいる。 「常識的に考えて」と枕詞がついた場合、その発言主は私からみて「自分の意見に対して疑いを持っていない、思考停止している人間」と感じてしまう。特に、「は?常識でしょ?」なんて返されたら「あなたの常識なんて存じませんけどあなたのスタンダードについてまず説明していただけませんか?」と申し上げたいところである。 なので、モラルなどに関する場合は「良識的に考えて」や、「

当日パンフレットは何のため?誰のため?

女物のカバンって小さいじゃないですか。 でも芝居を見に行くと色々渡されたり、色々買っちゃったりするので結局サブバッグ持って行ってる、なんてことが多いんですよね。だってチラシは最悪折り畳めてもパンフはさすがに折り畳めないし物理的に、チラシだって折らずに持って帰りたいわけですよ。でも大きめのカバンで向かうって気分ではない時に、見栄えが悪いかもしれないけれどサブバッグを持って行ったりするわけです。でもまあそれでも持って行くの忘れて全部裸で持って帰ることもあるけどね!!!はずかしいな

1回目は役者の力、2回目は作品の力

はっきり言ってアホなんですけど『劇場版 文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』を観に行きました、今更ですが3回も。(初日+4DX+もう一度通常盤)自分でも自分にびっくりだよ、しかももう5月半ばだし。(出先の近くの劇場が後発だったから特典を配布していると聞いてね・・・) 私の観劇記録を見ていただければわかるのですが、取材も含め複数回足を運んだのは昨年度においてなんと1作品のみです。しかもそれ、チケット購入直後に取材の案内連絡が届くと云うタイミング悪すぎる感じだったの。せ

それでも私は演劇を選ぶ

演劇が好きだ。 でも好きだし、仕事にしているからこそ、マイナス面・ネガティブな面は直視せざるを得ない。 つくづく演劇はコストパフォーマンスが悪い。 本番が1日だけしか上演できないものも、1週間公演が続くものも、ツアーを組んで2ヶ月ほど上演するものも、同じぐらい作るのに時間がかかる。 上演日数を増やしたところで、コストはかさむばかりである。いや、回収できるポイントはあるんだろうけど。 演劇は制約が多い。 劇場で上演するにも、カフェ公演のようなカジュアルなものでも「その場

小劇場から当日精算がなぜ減らないのか

「しばいのまち」での不定期連載が公開されました。 本当、小規模単位でも導入できるプレイガイドのシステムもあるのにこりっちが完全有料化(厳密にいうと、以前も本来は有料のところを宣伝のために期間限定で無料にしており、その期間が切れたというだけ)した程度でカルテットオンラインに「こりっちはタダじゃないから!!(意味不明謎の逆ギレ)」で大量流出するぐらいですからね・・・。ていうか、「チケットプレゼントを利用すること」っていうのはチケットプレゼントの枚数分実質支払ってはいないけど団体

舞台「パタリロ!」を見に行ったら2.5次元舞台の興行としての強さに圧倒されて笑えなかった件

2.5次元系の舞台ってみなさん見に行ったりしますか? 私はもう普段は全然行かないです。1回取材で「ALL OUT!」を見たぐらい。「テニミュ」も「セラミュ」も関西出身だけど宝塚の「ベルばら」すらない。 だけどこれだけはどうしても見に行きたかったと言う舞台があって。 「パタリロ!〜スターダスト計画〜」見に行ってきました。 (※この記事書いている間に出演者の逮捕報道が出たので、タイアップとか結構ストップしてしまっているけれど、公開します。無論、性犯罪は許すべき点ではないし、警

劇団新和座の公演がストレスなく見られるいい感じに作られた小劇場の公演だった件

劇団新和座第12回本公演『デスマーチ ブラックIT撲滅スペシャル』観に行ってきました。(14日マチネ) 知り合いが出ているわけでも、知り合いが脚本もしくは演出してるわけでもない小劇場の舞台を観に行った理由は友人である脚本家のにしうりすいかがベタ褒めしていて、ちなみに本人になぜこの劇団を観にきたかと聞いたら 「デスマーチって単語がツイッターに流れてきたら反応せざるを得ないでしょ」 ですよね、ITの人だもんね。 いわく、ITのテクニカルタームを脚本演出が理解していてそれをち

演劇制作とわたし #3「わたし」の値段

このnoteを最後に書いて半年後、まさかコラムというかエッセイを頼まれるような身分になっているとは、1年少し経った私は思ってもいなかったのである。 2日で5000PVほど行ったらしい最初の記事 小劇場の制作、ここおかしくない!?制作が抱える問題たちを今語ろう〜お金の問題編〜 http://shibainomachi.com/2016/12/05/0157/ 内容としては何の変哲も無い、私の元々いた美術界隈では散々言われ尽くされてきた「タダ働き」問題。 この記事

演劇制作とわたし #2『舞台美術の理想と現実の狭間で』

大学を卒業して早5年。 言いたいことがあります。 「学校でやってることと現実に行われてる現場のことは全然違うから、学校で習ったことだけじゃ役に立たないよ!」えらく具体的な目標を立てて大学に進学したわたしですが、まあいろいろ才能の壁とかぶち当たりつつ、そしてなにより 『これ、わたしのやりたいことと最初に立てた目標ずれてないか?』という現実にあるものとの間でどうすればいいか立ち行かなくなってしまッタワケです。そもそも、わたしがやりたいと思ったのは舞台美術のデザインでした。 が

演劇制作とわたし #1『制作になったのはなりゆきです』

『なんで制作になったんですか?』大体どの現場に行っても聞かれます。最初の面接とかでも聞かれます。正直なところ 『なりゆきです』以上の回答はないのですが、身も蓋もない回答をしすぎることで関東人にはドン引きされることに定評のある私(関西出身)ですので、経緯はきちんとお話しいたします。 『役者経験は?』『ありません』 『役者になろうとは?』『思いません』 厳密に言うと、役者経験は中学校の時に部活で英語劇をやっていたのでないわけではないですし、演劇の役者はやってみたいなと思った